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4月1週 鉄鋼産業CN(脱炭素)ニュース

レポートが遅れまして申し訳ありません。

今週の記事では、スウェーデンのSSABのルレオの「高炉休止、電炉化」が興味を引く。
スウェーデンの製鉄の脱炭素化は世界のトップを行くものでないか?
・SSAB
・H2GreenSteel
・OVACO など
考えてみれば、18世紀初頭はスウェーデンが世界最大の鉄鋼生産国で全世界の約1/3の鉄を生産(年6万トン)し、イギリスをはじめヨーロッパに輸出していた。背景には高品位の鉄鉱石(低P、高Mn)を産し、豊富な森林資源および水力による動力(水車)があった。当時は木炭高炉。
以降、イギリスは石炭(コークス)を使った高炉へと移行し、鉄の大量生産に成功するが、その後でも19世紀にイギリス人のベッセマーが発明した転炉(1856)を、高品位鉄鉱石-木炭高炉-転炉により工業的に成功(1857)したのはスウェーデンであり世界の鉄鋼技術をリードしていた。
結局スウェーデンは高炉の拡大には向かわなかった。 当時より高品位鉄鉱石、森林、湖といった環境を保ちながら、最新科学に基ずく資源の有効活用を図り、風土の美しさを保持する持続可能な特殊鋼を主体とする鉄鋼業へと進んだ。
それから100年以上経過し、再びスウェーデンは高品位鉄鉱石、風力発電による電気および水素製造によるグリーン製鉄で世界の鉄鋼業をリードする立場になったのは当然と考えられる。

*歴史といえば、中国は宋の時代はコークス製鉄により年15万トンの鉄を生産する世界一の鉄生産国であった。現在中国が世界最大の鉄生産国であるのも歴史が繰り返しているのか。


●<国内、設備>大同特殊鋼CO2削減大型電気炉(300tクラス)を開発進める

*(2024/4/3 日経新聞)大同特殊鋼、CO2削減する大型電気炉 鉄鋼も脱炭素

大同特殊鋼は鉄鋼業界の脱炭素に寄与する電炉を開発する。2030年をめどに鉄スクラップなどの原料の溶解量が300トン級の大型の電気炉を開発して外販する。電炉は高炉に比べて二酸化炭素(CO2)排出量が少なく、脱炭素への対応を急ぐ鉄鋼メーカーの間で切り替えの検討が進んでいる。高炉メーカーの需要を取り込む。
このほど300トン級のスクラップを溶解できる大型電炉の開発に着手した。同社の既存の電炉の溶解能力...

日本経済新聞

→300トン級の電気炉を必要とするのは、高炉のある製鉄所向けの転炉代替だろう。 日本製鉄かJFEスチール。
高炉品種を作るので、原料はDRI(還元鉄)の比率が高く、低N、P化精錬の必要がある。さらに大容量、高効率も求められる。
それには、連続装入、EBT(炉底出鋼)といった形式の電炉になる。

一方、国内の大型電気炉は、
・東京製鐵/田原工場 420トン(300トンEBT)DC2本電極 Consteel Danieli製(2010)を始め
・中部鋼板 200トン ECOARCFIT スチールプランテック製 2024/10稼働予定
・大同特殊鋼/知多 150トン STARQ 大同特殊鋼製(2013)
 といったところで、新設は
・日本製鉄 広畑 100トン? Consteel Tenova製   2022年稼働
・大阪製鐵堺 DC150トン ECOARC-light スチールプランテック製 2025年下期稼働予定
・JFE千葉 ステンレス用AC70トン STARQ 大同特殊鋼製 2025年下期稼働予定

大同特殊鋼の電気炉国内シェアNo.1(1/3)もかかわらず、新規受注ではこのところスチールプランテックや外国勢に差をつけられている。
何とか実績を作りたいのだろう。 あるいは照会があったか?

先の高炉2社のうち、JFEは脱炭素の技術資料に、この形になるかどうかは確定でないが

JFE資料より
JFE資料より

冷鉄源連続予熱装入、2本電極DC電炉、炉底攪拌とスチールプランテックの電炉タイプである。
*スチールプランテックは旧NKKの重工部門が他数社の製鉄機械部門と合併したものである。

それに加え、炉頂着熱バーナー(フラックスインジェクションも?)、還元鉄誘導予熱もある。

日本製鉄は、具体的に示していないが、水平装入、AC炉、EBTであることは読み取れる。(広畑タイプ?)

日本製鉄資料より

●<国内、原料>脱炭素とスクラップ

*(2024/4/2 日経新聞)鉄鋼業界「脱炭素」で鉄スクラップ不足に 相場高の足音

鉄スクラップの安定確保に向けて東京製鉄は大都市部に受け入れ施設を新設した(名古屋市)
鉄鋼業界の脱炭素の動きを受け、製鋼原料の鉄スクラップが国内で不足するとの観測が出始めた。鉄鉱石と石炭を原料とする高炉の製鉄に比べ、鉄スクラップを使う電炉の製鉄は二酸化炭素(CO2)排出量を4分の1に低減でき、日本製鉄などが導入を進める。鉄スクラップを確保するための囲い込みが増え、相場上昇を促しつつある。
自動車部品などの高強度鋼材を電炉で作る山陽特殊製鋼は2月、鉄スクラップの流通・販売を手がける山陽(兵庫県姫路市)に出資した。「カーボンニュートラルに向けた電炉の拡大で将来的な鉄スクラップの需給逼迫は避けられない。調達先との関係強化が急務だ」(山陽特殊製鋼)という。
鉄スクラップは、老朽化した建物や使用済み自動車・産業機械の解体に伴って発生するものと、工場での金属加工時の切りくずなどを集めた新断(しんだち)品がある。鉄スクラップの国内流通量は2021年度で3379万トン。国内消費が8割程度で、輸出は2割だ。基本的には供給が多く電炉各社もあまり調達に困らなかったが、状況は変わりつつある。
背景にあるのは高炉の鉄鋼メーカーの「電炉シフト」だ。日本製鉄は30年までに北九州市にある製鉄所の高炉を休止する一方、北九州市と姫路市に大型電炉を新設する。JFEスチールも岡山県倉敷市の高炉1基を27年までに電炉に転換する。
高炉大手は50年のカーボンニュートラル達成を目標に掲げ、電炉シフトはその一手だ。電炉会社の多くが鉄筋用棒鋼など建設用資材を中心に製造し、日鉄など高炉大手が自動車向け鋼板などを主に製造するが、高炉製品の一部が電炉式の生産に移っていくもようだ。現在日本では粗鋼生産量に占める電炉の比率は2割台だが、50年度には4割を超える見通しだ。高炉を使った製鋼工程でもCO2排出低減の観点から鉄スクラップの配合を増やす方向にある。
脱炭素の流れは高炉の電炉シフトのほか、既存の電炉の鉄鋼メーカーの商機も広げる。東京製鉄は粗鋼生産量を30年までに21年度の約2倍の600万トンにする計画。50年には1000万トンに引き上げる。「資材調達などサプライチェーンのCO2排出削減につながる電炉の薄鋼板は自動車産業などの需要も高まると期待している」(東鉄の津田聡一朗経営管理本部長)と、高炉が得意としてきた分野の拡大もにらむ。
東鉄は22年6月に名古屋市内に鉄スクラップの受け入れ拠点となるヤードを新設。24年6月にも兵庫県尼崎市に同様の拠点を置いて安定調達を目指す。

日本経済新聞

→ この記事はどうだろう。国内のスクラップは現在年間700万トン位が輸出されている。 (1990年代半ばにスクラップ輸出国に)
国内スクラップ需要が多くなると、輸出がまず減るのでは?
高炉の電炉シフトでも、必要とされるのは新断屑(製品加工屑なので、自社品をリターンさせやすい)や還元鉄である。市中回収屑の優先順位は低いだろう。
現に、2022年稼働した日鉄/広畑の高級薄板向け電炉でも市中回収屑の使用はゼロと考えられる。(自社内および製品加工先での加工屑、ダスト・スラッジなどからの鉄分再生鉄源など)
鉄鋼メーカーがスクラップに力を入れるのは、1)良質屑の確保 2)近隣各国(韓中ベトナムなど)の日本産スクラップへの調達指向(=外資参入)への対策 などだろう。
 

 

●<海外、原料・設備>ザルツギッター/スクラップ処理シュレッダー導入

*(2024/4/4 Salzgitter AG)ザルツギッターに大規模シュレッダー工場を新設
Building block of the circular economy – new construction of a large scale shredder plant in Salzgitter

約3,000万ユーロを投資し、低CO2の鉄鋼生産に高品質で大量のスクラップ供給にコミット
2026年半ばに新工場の試運転を予定
SALCOSプロジェクト第1期開始に向けた調整
ザルツギッター。ザルツギッターAGは、金属スクラップ用の新しいシュレッダー工場の建設を委託しました。現在建設中のSALCOS工場に隣接するザルツギッターの製鉄所一貫敷地内に建設する施設は、総工費で約3,000万ユーロを投じ、高品質なスクラップグレードの処理が可能となります。この新施設は、SALCOS - Salzgitter Low CO2製鋼の一部として「グリーンスチール」を生産するためのさらなる構成要素となります。
新しいシュレッダーの建設に関与するパートナーは、デュッセルドルフを拠点とする機械およびプラントメーカーのLindemann GmbHとベルギーの会社Lyboverです。

Saltzgitter

●<海外、技術開発>USSゲーリーでCCU

*(2024/4/4 鉄鋼新聞)USスチール/ゲーリー製鉄所でCCUプロジェクト/CO2を炭酸カルシウムに変換

米国鉄鋼大手のUSスチールは3日、ゲーリー製鉄所(インディアナ州)で高炉から生じるCO2を回収し炭酸カルシウムに変換するCCUプロジェクトに乗り出すと発表した。2026年にも年間5万トンを回収するプラント操業を開始し、数年後にはさらに増える可能性があるという。 USSは昨年3月に「スカイサイクル」の特許技術を持つカーボンフリー・ケミカルズ・...

鉄鋼新聞

*(2024/4/3 USS)USSゲーリー製鉄所にて高炉からのCO2回収プロジェクト開始=年間5万トンのCO2をCaCO3に
U. S. Steel and CarbonFree Sign Definitive Agreement to Capture Carbon Dioxide Emissions at One of the Largest North American Integrated Steel Mills

2024年夏に着工し、2026年に操業を開始

The agreement sets in motion a project to capture emissions from U. S. Steel’s blast furnaces
CarbonFree’s SkyCycle™ technology will capture and mineralize up to 50,000 metric tons of carbon dioxide annually at U. S. Steel’s facility in Gary, Indiana, to convert emissions into specialty-grade, carbon-neutral calcium carbonate
The project will be the first commercial-scale carbon capture utilization plant at a steel plant in North America

USSteel

●<海外、技術開発>SSAB/ルレオの高炉閉鎖 電炉化

*(2024/4/2 SSAB)SSABは、スウェーデンのルレオに化石燃料を使わないミニ工場で変革継続
SSAB continues the transformation with a fossil-free mini-mill in Luleå, Sweden

SSABの取締役会は本日、SSABへの移行の次のステップとして、スウェーデンのルレオに化石燃料を使わない最先端のミニミルを建設することを決定しました。完成後、SSABは現在の高炉ベースの生産システムを閉鎖します。これにより、スウェーデンのCO2排出量は、オクセロスン工場の転換による3%に加えて、7%削減されます。
新しいルレオ工場の生産能力は2.5トン/年で、2つの電気炉、高度な二次冶金、SSABの特殊製品を生産する直接ストリップ圧延機、およびより幅広いプレミアム製品でモビリティセグメントにサービスを提供する冷間圧延複合施設で構成されています。新工場には、イェリヴァーレのHybrit実証工場で産出される化石燃料を含まないスポンジ鉄とリサイクルスクラップの混合物が供給されます。
「ルレオの変革は、化石燃料を使わない鉄鋼生産への道のりにおける大きな一歩です。スウェーデンの二酸化炭素排出量の7%を削減し、競争力を強化し、ヨーロッパで最も費用対効果が高く持続可能なストリップ生産で雇用を守ります」とSSABの社長兼CEOであるマーティン・リンドクヴィストは述べています。
ミニ工場の総投資額は、不測の事態を含めて45億ユーロと見積もられている。新技術への投資により、SSABは今後10年間で既存の工場や設備に20億ユーロの投資が必要となるのを回避しています。この計画は、自身のキャッシュフローとSSABの財務目標の範囲内で投資に資金を提供することです。
この投資は、大きな価値創造につながります。現行のシステムと比較すると、現在のコモディティ予測では、年間EBITDAの改善は50億スウェーデンクローナ以上/年と推定される。新しいミニミルは、固定費の削減、効率の向上、リードタイムの短縮、COの排除により、より良いコストポジションを持つことになります2コスト。工場の設計には、0.5 mton/年の生産量の増加、特殊鋼種とプレミアム鋼種の1 mton/年の増加による混合の改善が含まれます。
新工場の操業開始は2028年末を予定しており、1年後にフル稼働する予定。環境許可は2024年末に予定されています。この投資は、エミッションフリーの特殊鋼およびプレミアム鋼で主導的な地位を確立するというSSABの戦略における重要なステップです。現在までに、SSABは化石燃料を使わない鉄鋼やゼロ鋼について、主要顧客と55のパートナーシップを結んでいます。
SSABは2023年にオクセロスンドの製鉄所を化石燃料を使わない生産に転換することを決定し、プロジェクトは計画通りに進んでいます。第2段階としてLuleåを進める理由は、財務上の考慮事項と、Raahe工場がより良い状態でより高度な設備を持っているという事実によって推進されています。第3のステップとして、フィンランドのラーヘの変革が計画されています。プロジェクトのタイミングは、SSABの資金調達と実行能力、およびLuleåプロジェクトから学んだことによって異なります。
「パートナーのLKABとともに、CO2をなくすことを約束します。バリューチェーンからの排出量を削減し、化石燃料に頼らない未来に向けた新しいベンチマーク技術を確立します。その過程で、今後数十年にわたって北欧の産業競争力を守り、当社のバリューチェーンから高品質の鉄鋼に依存している何千もの顧客をサポートしています」とマーティン・リンドクヴィストは締めくくりました。

SSAB

●<海外、会議>Climate Group Asia Action Summit 2024(Seoul 2024/5/21)

*(2024/4/3 Climate Group)Unlocking green growth: Asia’s opportunity to be a clean steel leader

“Asia will be the furnace in which a new era is forged”, argued McKinsey in a report last year.
The region increasingly represents the world’s majority for everything from product manufacturing to innovation and the number of new patents granted.
Such a leading role in crucial parts of the global economy provides Asian countries and their companies with an opportunity to shape the future economy like never before, in sectors ranging from automotive to shipping, electronics to renewable energy.
And any future needs to be a sustainable, green one. When it comes to decarbonising the global steel industry, Asia’s leading role stands out once more. The numbers really speak for themselves.

Climate Group

→会議の案内
*(Climate Group)Climate Group Asia Action Summit 2024(21 May 2024, Seoul)

From the organisers of Climate Week NYC, ​the Climate Group Asia Action Summit returns ​on Tuesday, 21 May 2024. ​
With a focus on two of the region’s biggest decarbonisation opportunities, the industrial and clean energy transitions, we’re bringing our convening power and unique networks of leaders to the fastest growing economic region on earth to ask: how will Asia power green growth?

Climate Group

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