マジックの本を称賛するだけの文章(Secret Language Vol.1)

注意:この文章ではただ私が私の感じるままに、マジックの良書を褒めるだけの文章です。

タイトル: 『Secret Language Vol.1』
著者: Helder Guimaraes
出版年: 2019年
ジャンル: カード

『Secret Language Vol.1』は2019年に発売された書籍で、ポルトガルのHelder Guimaraes氏の作品をまとめた作品集です。

Helder Guimaraes氏はポルトガルのマジシャンで、これまでにも多くの公演やコンペティションで実績を収めており、パフォーマーとしてだけではなく映画などでのパフォーマンス指導も行うマジシャンです。

本書はHelder Guimaraes氏がショーなどで行う作品やスライト、理論をまとめた大作となっています。まず、お伝えしたいことは本書が500ページを超える本であり、彼が出し惜しみをせずに本書を書いていることが分かります。また、説明にはふんだんに写真を使っており、読者が混乱しにくいようになっています。
本書に掲載されている作品に共通する大きな特徴は、2点あると感じています。1点目は提示するストーリーに対する熱量です。すべてのマジックに彼が伝えたい物語やメッセージが含まれています。それがあるからこそ、この本は読者をHelder氏の世界に没入させ、その考えに浸かることができるようになっています。2点目は目的と手法の明確な主従関係です。常に目的を実現するために手法が選ばれていることがわかります。結果として全ての作品が個別で最適化されており、大きな手順になっているという特徴が見られます。
本書も魅力的な作品が多いため特定の作品を取り上げるというのは心苦しいのですが、この文章では特に「One Mistake」「Invisible」についてコメントしたいと思います。

「One Mistake」はOOTWに属するマジックですが、1枚だけ裏の色が異なるカードが使われていることで印象の異なるマジックになっています。これがメッセージを表現するものとしてわかりやすい事例であると感じており、OOTWに興味が無くても見ていただきたい作品となっています。
個人的にはOOTWという完成されていると同時に議論を呼ぶプロットに対して、完全性を壊しているにも関わらず美しさが増すという状況に魅せられています。これは彼の提示するメッセージと完全に合致しているわけではないのかもしれませんが、多面的なディスプレイによって、受け取り方も一位では無いのだと感じています。

「Invisible」は本書の中では珍しく即興でも行える手順となっています。他の手順と同様に高い完成度を誇っており、観客に大きなインパクトを与えるものになっています。
選ばれたカードの消失から反転したカードの出現まで、コンパクトながらも不思議が詰まっています。同時に内側も整頓されて美しい構造を誇っており、完成された数式のようなシンプルさを保有しています。
また、即興性が高いことから読者が自分で実演するという意味でも手の出しやすいものになっていると考えています。属人性の高い作品集においてはそういった作品があることで、個人に対する理解を深める機会が提供されるため、本書の分厚さに障壁を感じた人であってもこの作品だけは読んで帆いいと感じています。

最後に、本書には彼の大切にしている考え方が第三部の中で展開されてます。彼の私的な表現で綴られる、その考えは彼の作品の根底に流れるものであり、それらの理解は本書全体の理解を大きく助けるものとなっています。ポルトガルという土地柄もあり、スペインで発達した考えを彼なりに自分の中で咀嚼したもので、彼のマジックに共感を覚える全ての方に読んでいただきたい内容となっています。

まとめると、『Secret Language Vol.1』はポルトガルのHelder Guimaraes氏の作品や考えを集約したものであり、彼のマジックに深く浸かれる一冊となっています。また、単なるトリックを超えて自身の想いを表現するための献身を感じるものであるため、彼のマジックに感銘を受けた人にはお金以上の価値があるものだと思っています。

以上が『Secret Language Vol.1』について勝手に本を称賛した文章でした。この文章は決して書評ではありません。ただ褒めるだけの文章です。力不足ながらも、この本が持つ魅力の一片を伝えられれば幸いです。


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