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ギターマイラヴ、何度でも。

ギターを弾く自分に憧れる人生。これまで何度もチャレンジし、何度も挫折した。それでもわたしは懲りずにまたギターを手にする。どうしても弾き語りがしたくなる。

楽譜が読めなくても。コードの意味が不明でも。

不器用すぎて指が動かなくても。限界まで切っても指先からはみ出す人差し指の爪が弦を浮かせても。

すぐに左手の指はつるし、右肩も痛むけど。

すぐに腫れる扁桃腺持ちでも。古い歌しか知らなくても。

子どもの頃からそうだった。アニメを見ても、ドラマを見ても、もちろん歌番組を見ても、「ギター(アコギです)を抱えて歌う人(単独でね)」を見つけては、「それやりたい!!」と念じてた。

日銭とストレスを過剰に抱え、浴びるように酒を飲みながら生きていたお調子者で道楽者の父は、欲しいと言えばたいていすぐに買ってくれた。

ある時ついに、というよりむしろなんとなく「ギターが弾きたい」とつぶやいたティーンのわたしを父は楽器店に連れていった。何ひとつ予習せずその場で買ってもらったギターは、赤いボディの粋なヤツだった。

鼻息荒く手に入れた粋なヤツ。ところがいくら意気揚々とつるんでも、いっさいがっさい音すら出ない。体育と音楽の成績が極端に悪いわたしにとって、「コード」は意味不明の極致だし、食い込む弦に耐えられる指の力も腕力も、ボディを抱える体力もほとんどなかった。。。

かくして即座に赤いヤツは部屋の装飾物となった。大好きなビタミンカラー(イエロー+オレンジちょこっとグリーン)で統一した部屋の片隅でそいつはなかなかな異彩を放ち、厳かに存在をアピールし続けたものだった。

★ ★ ★

赤いヤツのアピールが奏功し、かつ、簡単にキツさに負けて自主練しないまま弾けないでいるわたしの(※鍛錬しろやと言いたい)弾き語りたい欲が継続した結果、進学した高校で再び鼻息荒くして軽音部に入部し、アコギを手にすることになった。

もちろん当初は赤いヤツを装飾の棚からおろして実働させてあげるつもりだった。ところがそこはそれなのだ(なんだ)。

つまり、入学したばかりの高校の見知らぬ人だらけの軽音部に、「とっくに弾きこなしてますけど何か?」みたいな顔をせざるをえない赤いヤツを持ち込む勇気などあるはずないのだ。

結果、右へ倣えで「ギター斡旋申込書」を書き、弾ける前から2台目のギターを購入。親もよく許してくれたものです。

軽音部では、発表会の機会もあったのでそれなりに練習した。簡単なコードばかりの曲を探した。弦が切れて飛びがちなチューニングが怖すぎて毎回泣きそうだった。しかもたいてい合っておらず、「音がヘン」だと先輩から直された。家で練習するときは、響かないよう弦にスポンジを挟んだ。指は痛すぎるしどんなに切っても邪魔をする爪が恨めしかった。発表会はできる範囲で練習した成果をそれなりに発表。ほとんど評価もされないレベルを持続しやり過ごした。

赤いヤツとベーシックな子、いつまでたっても満足に弾けないわたしを囲む2台のギターを眺め、痛すぎる指を握りしめて、しょせんギター弾きは無理なのかなと高校時代のわたしは泣きそうになっていた。

★ ★ ★

高校卒業以来ほとんど触っていなかったギターは物置の奥に押しやられ、父の急逝のドタバタと共に赤いヤツの所在は不明となった。記憶の中にしかない赤いヤツ。なぜ写真の1枚もないのだろう。背中はブラウン。表面は外側から中央に向かって色が浅く変化しているタイプの、ピックガードには確か模様があった。

※トップ画像はお借りしたものだけど、一目見て似てる ! と感じました。再会できてうれしい♪

とても美しく、眺めているだけでしあわせな気持ちだった。記憶の中では愛しているのに、対象が見つからない寂しさはいかんともしがたい。

あれから永い年月を経て、現在手元にあるのは、高校時代に斡旋されたベーシックな子だ。息子が不登校になって自室に引きこもったとき、彼が興味を持ちそうなことを探して提示してみた中のひとつだ。実家の物置の奥に眠っていたギターは、高校時代には持ち運ぶのに重くて苦労したハードケースに守られて、30年以上放置されていたというのにちゃんと生きてくれていた。

息子がギターに興味を持つ事はなく、再び放置するには忍びなくて、わたしはまたギターの弾き語りにチャレンジした。教室にも通った。おかげでチューニングも弦の交換も苦手ではなくなった。30年間ギターを守ってくれた丈夫なハードケースはさすがにかび臭くやっぱり重く、ギグバッグを買って入れ替えた。ギター教室の発表会ではそれなりに弾いたし歌った。

その教室も今はなく、結果人前で弾く機会はなく聞いていただく自信もやっぱり持てず、わたしは今もただただ「ギターが弾きたい」とつぶやき続けている。相変わらず指は痛すぎるし爪が邪魔をするけれど、Fコードがある譜面もさほど苦手ではなくなった(ほとんどの曲にFあるし(^_^;))。

こんなわたしのギター遍愛歴と共に、こんなわたしの下手な弾き語りを、これを読んでくれたあなたにいつか聴いてほしい。

なんて、ちょっと思います。



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