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ビールだらけの冷蔵庫

「うちの冷蔵庫にはビールとチーズと牛乳しかはいってない」と豪語してはばからない時期があった。

今も昔も料理は苦手。そもそも食事といえばビールとチーズさえあればいいし、それ以前に食事そのものが面倒だ。もうほんと、ビールだけあれば生きられる。そうでありたいそう願いたい。――こんな乱暴な発言をしていた時期が、独身一人暮らしとかでなく結婚してからのことだと言って、果たして信じてもらえるだろうか。

実家が米屋のくせにパン好きで、朝は必ずパンで食事をするけれど、晩御飯ともなるとお米のご飯には手を出さず、おかずとビールで食事を済ませる。そんなわたしが出会ったオットは、同じくビールを主食としているヒトだった。

約30年前、メインは瓶ビールだった。毎週末ケース買いしては、せっせと冷蔵庫に詰め込んだ。もう一本と思ったときにビールのストックがないなんて言語道断。冷えていないビールなど想像するだにおぞましい。二人そろってその点きっちり同意見だから、それはそれはせっせと詰め込んだ。

よって冷蔵庫の中心部では常に茶色の瓶が幅を利かせ、一番上の段にはプロセスチーズが居心地悪そうに鎮座し、ドアポケットには朝食用のコーヒーに注ぐための牛乳がおとなしく挟まれていた。

当時の「うちの冷蔵庫にはビールとチーズと牛乳しかはいってない」発言は、だから、あながち大げさだったわけでもないのです。

★ ★ ★

と、ここで終わろうかと思ったけどおもしろくない気がするのでもう少し。もう少し書けばおもしろくなるというわけでもないけど、わたしが楽しみたいだけです悪しからず。

瓶ビールに浸食されていたこの新婚時代の冷蔵庫は、3度の引っ越しにも耐えて、ずいぶん長持ちしてくれました。確か16~7年保ってくれていたはず。そうなると愛着もわき、子どもが生まれてからというもの容量の小ささに文句ばかりつけていたくせに、いざお別れとなると寂しくて、きれいに拭きあげてから手放したっけ。あれは「当たり」だったなあ。

家電とか自動車とかって、当たりはずれありますよね。「はずれ」のときには、高価な買い物なのに勘弁してくれって思う。しかも「はずれ」って、「当たり」よりぜったい多いと思う。

「当たり」だった冷蔵庫1号。次に買った2号の寿命は数年で尽き、今の3号もそういえばずいぶん長く働いてくれてます。そして相変わらず中央部にはビールが詰め込まれています。瓶ビールからロング缶を経て、今は普通サイズの缶ですが。ええぎっしりと。

本気でビールとチーズさえあればよかった頃のわたしは、オットが出張ともなれば、テレビの前にビールを運んではあおり、チーズを取り出してきてはほおばって、気が付くと冷蔵庫のドアが開けっぱなしになっていることもありました。そんな仕打ちにもめげず長年奮闘してくれた愛すべき冷蔵庫1号を思い出させてくれたこの企画。立ち上げて下った皆さんに感謝です。

#冷蔵庫企画


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