無修正を取り締まる法律(刑法175条)に関する実態調査が存在するか国会図書館に調べてもらった


簡単なまとめ

  • 国会図書館に、無修正を取り締まる法律(刑法175条)に関する実態調査(わいせつ物を頒布したら悪影響があるか、性器修正に意味はあるか等の調査)が存在するか依頼して調べてもらった。

    • 私(本記事筆者)→諸派党構想・政治版→国会図書館というルートで依頼

  • 結果、関係しそうな資料が複数見つかった。詳細は依頼内容及び回答項目の画像を参照(5枚)

  • 以下私見

    • ポルノの流通量と性犯罪の検挙件数や、ポルノの使用と性的攻撃性を調べた論文では、関連性はない=ポルノ流通に悪影響はない(「(別紙) わいせつ物頒布の影響に関する資料について」より)。性的攻撃性を調べた論文は2022年と新しめ。

    • 一方、性表現等に関する意識調査について、若年層ほど性・暴力表現に悪影響は無いと思い、年齢層が上がるほど悪影響があると思う傾向にある。全体的に見ると「悪影響があると思う」と考える割合のほうが高い(「別紙 性表現等に関する意識調査について」より)。ただし、どれも古い統計であり現在どういう状況か不明。調査対象もメディア全体(テレビや雑誌を含む)の性・暴力表現と広い。

    • 肝心の、性器修正に関連する意識調査、性器修正の必要性があるかどうかを分析した実態調査は無かった(「別紙 性表現等に関する意識調査について」より)。性器修正の必要性が分かっていないのに、修正していなかったら逮捕の現状はおかしいのでは?少なくとも他犯罪との関連性を調べるべきでは?


依頼内容及び回答

国会図書館より提供された資料のうち、公開可能なものを掲示します(画像5枚)。
実際にはここに掲示した以外に、【提供資料】に記載されている資料本体も提供されましたが、文量や著作権の関係でここには直接載せません。本記事末尾の提供資料一覧から各自アクセスして下さい。

提供資料一覧

(別紙) わいせつ物頒布の影響に関する資料について

資料1. Milton Diamond and Ayako Uchiyama, “Pornography, Rape, and Sex   Crimes in Japan,” International Journal of Law and Psychiatry, Vol.22 No.1, 1999, pp.1-22. <http://www.hawaii.edu/PCSS/biblio/articles/1961to1999/1999-pornography-rape-sex-crimes-japan.html>
資料2. 園田寿・曽我部真裕編著『改正児童ポルノ禁止法を考える』日本評論社, 2014, p.71.
資料3. Christopher J. Ferguson and Richard D. Hartley, “Pornography and Sexual Aggression: C an Meta-Analysis Find a Link?,” Trauma, Violence, & Abuse, vol.23 Issue.1, January 20 22, pp.278-287. <https://journals.sagepub.com/doi/epub/10.1177/1524838020942754>
資料4. ナディーン・ストロッセン(岸田美貴訳, 松沢呉一監修)『ポルノグラフィ防衛論―アメ リカのセクハラ攻撃・ポルノ規制の危険性―』ポット出版, 2007, pp.364-385, 414-417.

別紙 性表現等に関する意識調査について

資料1 「風俗・性に関する世論調査」昭和 48(1973)年 2 月 内閣府ウェブサイト https://survey.gov-online.go.jp/s47/S48-02-47-14.html
資料2 「犯罪と処罰等に関する世論調査」昭和 50(1975)年 5 月 内閣府ウェブサイト https://survey.gov-online.go.jp/s50/S50-05-50-03.html
資料3 「犯罪と処罰等に関する世論調査」昭和 55(1980)年 6 月 内閣府ウェブサイト https://survey.gov-online.go.jp/s55/S55-06-55-05.html
資料4 「性意識に関する世論調査」昭和 60(1985)年 9 月 内閣府ウェブサイト https://survey.gov-online.go.jp/s60/S60-09-60-07.html
資料5 「男女共同参画社会に関する世論調査」平成 9(1997)年 9 月 内閣府ウェブサイト https://survey.gov-online.go.jp/h09/danjyo.html
資料6 「男女共同参画社会に関する世論調査」平成 12(2000)年 9 月 内閣府ウェブサイト https://survey.gov-online.go.jp/h12/danjo_00-09/2-4.html
資料7 「男女共同参画社会に関する世論調査」平成 21(2009)年 10 月 内閣府ウェブサイト https://survey.gov-online.go.jp/h21/h21-danjo/2-3.html
資料8 「男女共同参画社会に関する世論調査」平成 24(2012)年 10 月 内閣府ウェブサイ ト https://survey.gov-online.go.jp/h24/h24-danjo/2-3.html
資料9 「有害情報に関する特別世論調査の概要」平成 19(2007)年 10 月 内閣府ウェブサイト https://survey.gov-online.go.jp/hutai/h19/h19-yugai.pdf
資料10 「(性暴力を問う3)ゲームや漫画 あふれる情報 規制か 表現の自由か」『読売新聞』2010.4.15. 2/ 2
資料11 「性表現めぐり議論広がる 「有害図書規制」は有害か」『朝日新聞』1992.9.5.
資料12 渡辺真由子「ネット上の性情報に対する規制とメディア・リテラシー教育のあり方の 国際比較」『慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所紀要』No.61, 2011, pp.59- 73. https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php/AA1121824X-20110300-0%20059.pdf?file_id=114908
資料13 曽我部真裕「憲法 教科書のその先へ 第 16 回 表現の自由(2)―性表現」『法律 教室』No.490, 2021.7, pp.73-80.
資料14 中川律「改めて憲法を考える⑳ わいせつ表現規制 ろくでなし子さんの事件を契機に考える」『時の法令』1972 号, 2015.2.28, pp.45-50.

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