無修正を取り締まる法律(刑法175条)の基準等について法務省と警察庁に質問してみた

簡単なまとめ

  • 法務省と警察庁に、現在の刑法175条(アダルトビデオとか成人向け漫画などのモザイクの原因)の明確な基準を問い合わせた

  • モザイク無しの物が刑法175条の保護法益(その法律が守っているもの)である性的秩序を乱すという調査結果は存在するのか問い合わせた

  • 回答は「明確な基準は示せない」「調査結果は把握していない」というものだった

  • つまり、明確な基準は存在しない、刑法175条の存在意義も存在しない、ことが分かった

背景

ここ数年、いわゆるお絵描きAIがすさまじい速度で進化しています。今年の2022年8月にはStable Diffusionという、文字列を与えるだけで良質な画像を生成できるモデルが全世界に公開されました。そしてこの数ヶ月でこのモデルを改造したモデルが多数登場し、もちろん性的な画像に特化したモデルも登場しました。
それらのモデルは、いわゆる無修正画像を生成することもできます。少しコツさえ掴めば、誰でも簡単に無修正画像を生成することができるわけです。さらに、ゲーミングちんぽ華道部のような、今までに無かった新しい性的で芸術的な画像も生成することができるようになりました。せっかく作ったんですから、皆に公開して皆で楽しみたいですよね。
ここで問題になるのが日本の表現規制法律の1つ、刑法175条です。この法律を簡単に言うと、性器無修正画像やそれに近い画像(わいせつ物)を公開したら逮捕、というものです。しかし、わいせつ物に該当するかという基準は、公的なものは現在まで一切公開されていません。AI製に限ったことではありませんが、作った画像がこれに該当するかを法律に詳しくない人自身が判断するのは不可能に近いです。ゲーミングちんぽ華道部はOKでも肌色ちんぽはNGかもしれない、とか意味不明です。無修正かどうかなんて関係ない場合もあります。もし明確で合理的な基準が分かり公開されれば、その基準に従って、法律を破って逮捕されること無く安心して新しい芸術作品(性的含め)を公開し、皆で楽しむことができるようになります。というわけで、刑法175条の基準を法務省と警察庁に質問することにしました。

また、刑法175条自体は時代遅れの問題だらけの法律と言われています。詳しくは刑法175条で調べてみて下さい。Googleの検索欄に「刑法175条」と入れただけで、この法律がどう思われてるか察することができます。下記のnoteもオススメです(自演)。

刑法175条 問題点まとめ|STOP!刑法175条|note

そもそも2022年になった今でも、刑法175条は本当に必要なのか。ネットで、AIで、誰でも無修正画像を入手できるようになった今現在でもこの法律は必要なのか。必要であることを示す調査結果は存在するのか。もし必要性が明確であれば、公開してはいけない画像が分かります。明確でなかったり調査結果がない場合は、そもそも刑法175条が無意味で、必要でないことがわかります。というわけで、それらを問う質問も行いました。

質問は2022/10/27に諸派党構想・政治版を経由し法務省と警察庁に提出され、本日11/12に回答されました。

以下に、質問内容、法務省の回答、警察庁の回答、をそのまま記載し、その後私見や結局どうすべきかを述べています。

質問内容

ここ最近の急速な科学技術の発展(特にAI)に伴い、それらを利用した新しい表現物が多数生み出され、今後も次々と発表されることが期待されています。しかし、それら表現物の一部が刑法175条に該当するのか不明瞭で、せっかく生み出された新しい表現物を安心して公表出来ない状況下にあります。
そこで、法に反しないようにする、今後の科学技術の発展を考慮した刑法175条の議論に利用する、等のため、刑法175条に関する要素を改めて確認したいと存じます。以下の1から3の質問に回答をお願い致します。
(なお、質問における「現在」とは、特に令和4年10月27日時点を示します。)

1. 刑法175条における「わいせつ」の意味は、「徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」とされ(昭和28(あ)1713など)、現在まで用いられています。また、令和4年度の規制改革・行政改革ホットライン(縦割り110番)の令和4年7月20日回答より、法務省と警察庁は、この明確性に問題はないとしています。
これを踏まえ、「わいせつ」の意味について、以下1.1から1.4への回答をお願い致します。
1.1「徒らに」とは、具体的にはどのような状態、もしくは値の超過を指しますか。例えば車両の運転で、呼気1L中のアルコール量が0.15mgを超過した場合、酒気帯び運転とみなされるかと思います。どのような数値が基準値を超えた場合に「徒らに」性欲を興奮させたとみなされますか。
1.2「普通人」とは、現在は具体的には誰、もしくはどのような人ですか。精神障害(精神疾患)や性的指向、性別、国籍、人種、思想等は関係していますか。
1.3「正常な性的羞恥心」とは、現在は具体的にどのようなものを指しますか。精神障害(精神疾患)や性的指向、性別、国籍、人種、思想等は関係していますか。
1.4「善良な性的道義観念」とは、現在は具体的にどのようなものを指しますか。精神障害(精神疾患)や性的指向、性別、国籍、人種、思想等は関係していますか。

2.刑法175条の保護法益は「性的秩序を守り,最少限度の性道徳を維持すること」とされています(昭和28(あ)1713 など)。
これについて、以下2.1から2.2への回答をお願い致します。
2.1「性的秩序」とは、現在は具体的にどのようなものを指しますか。
2.2 「性道徳」とは、現在は具体的にどのようなものを指しますか。また、この「性道徳」の「最少限度」とは、具体的にはどのような量ですか。

3.四畳半襖の下張事件の控訴審判決(昭和51(う)1126)時点では、わいせつ物の頒布が性的秩序や性道徳を害することを示す調査結果は見当たらないことが示されています。これを踏まえ、以下3.1から3.2への回答をお願い致します。
3.1 現在、わいせつ物の頒布が性的秩序や性道徳を害することを示す調査結果は存在しますか。もし存在する場合、それを国民が参照することは可能ですか。参照可能な場合、どこで参照できますか。
3.2 頒布することで性的秩序や性道徳を害することが明確であると示された表現物は存在しますか。もし存在する場合、それを国民が参照することは可能ですか。参照可能な場合、どこで参照できますか。


法務省の回答

・質問1.1から1.4までについて
 お尋ねの趣旨を十分に理解できていませんが、最高裁判所の判例(最大判昭和32年3月13日刑集11巻3号997頁など)によれば、刑法第175条にいう「わいせつ」とは、「徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」ことをいい、その判断に当たっては、「一般社会において行われている良識すなわち社会通念」が基準となると解されています。
 このような判例が示した「わいせつ」の意義の諸要素について、具体例や基準などをお示しすることはできかねますが、同条の適用に当たっては、個別具体的な事案において、捜査機関が収集した証拠に基づき、特定の文書、図画その他の物が「わいせつ」であるか否かが判断されるべきものと考えています。

・質問2.1及び2.2について
 お尋ねの趣旨を十分に理解できていませんが、最高裁判所の判例(最大判昭和32年3月13日刑集11巻3号997頁)によれば、刑法第175条は、わいせつ物が「性道徳、性秩序を無視することを誘発する危険を包蔵している」ことから、「性道徳に関しても法はその最少限度を維持することを任務とする」ことに鑑み、わいせつ物の頒布販売を犯罪として禁止しているものと解されています。
 また「最少限度の道徳」について、前記の判例は「社会秩序の維持に関し重要な意義をもつ道徳」をいうと判示しています。
 このような判例が示した同条の保護法益の諸要素について、具体例や基準などをお示しすることはできかねますが、同条の適用に当たっては、このような判例を前提として、運用がなされているものと考えています。

・質問3.1及び3.2について
 お尋ねの「わいせつ物の頒布が性的秩序や性道徳を害することを示す調査結果」や「頒布することで性的秩序や性道徳を害することが明確であると示された表現物」に該当するのかは分かりませんが、刑法第175条のわいせつな文書等に当たるとの判断が示された判例として、例えば、以下のものが裁判所ウェブサイトに掲載されています。
① 最決昭和61年10月21日(最高裁判所裁判集刑事244号55頁)
いわゆる「ビニール本」と称される写真誌が、刑法第175条のわいせつな図画に当たるとの判断が示された事例
② 最判昭和44年10月15日(最高裁判所刑事判例集23巻10号1239頁)
   フランスの作家の著作物が、同条のわいせつな文書に当たるとの判断が示された事例
③ 最判令和2年7月16日(最高裁判所刑事判例集74巻4号343頁)
  女性器をスキャンした三次元形状データファイルが記録されたCD-Rが同条のわいせつな電磁的記録に当たるとの判断が示された判例


警察庁の回答

・ 質問1、2について
警察庁においては、法務省の回答以外の見解は有しない。

・ 質問3について
警察庁においては、把握していない。


私見

質問1と2の回答より、法務省及び警察庁はわいせつ物の明確な基準を示すことはできないとのことでした。法務省及び警察庁はわいせつ物の明確性に問題はないと公表していましたが、明確な基準は示せないとのことでした。何だか変ですね。
そして注目すべきは質問3の警察庁の回答、一見手抜きで何も得るものは無いように見えます。しかし、「質問3について 警察庁においては、把握していない。」という回答は、わいせつ物の頒布が性的秩序や性道徳を害することを示す調査結果は把握していない、つまり、刑法175条が存在している明確な意義はない、と言っているようなものです。
警察庁の回答3が、回答1と2と同じような「法務省の回答以外の見解は有しない」ではなく、わざわざ「把握していない」という回答しているのは、警察庁自身「刑法175条なんていらない」ということを暗示しているのではないでしょうか。
質問3に対する法務省の回答も「該当するのかは分かりませんが」としていることから、過去に刑法175条違反とされたものが本当に性道徳や性秩序を害するか疑問に思っている様に見えます。


結局どうすればいいの

現在、わいせつ物の明確な基準は存在しないことが、改めて分かりました。ですので、私たちはいつ逮捕されるか分からないという恐怖に怯えながら作品を公開するしかありません。明確な回避策はありません、基準がありませんから。
しかし同時に、刑法175条が存在している明確な意義はないことも省庁により示されました。つまり我々は、刑法175条それ自体の存在を無くすよう動けばいいのです。悪法もなくなれば、逮捕される心配はなくなります。
刑法175条を無くすには、署名する、選挙に行く、政治家に陳情する、表現の自由関係のボランティアに参加する、SNSで意見を発信する、など、色々なことができます。
今こそ行動の時です。皆でこの無意味な法律を無くし、手で書こうがAIで書こうが関係なく、性的で芸術的な作品を無修正で公開できる環境を勝ち取りましょう!

↓廃止署名はこちら↓


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