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お前はひっぱりうどんを食べて真の男として生き延びろ

よく来たな。おれはストーム叉焼だ。おれは時たま文章を書くが、誰にも読ませるつもりはない。
マスクも、トイレットペーパーも、スピリタスさえも消え失せたきけんな街の一室で身を隠しながらこれを書いている。

今の日本はメキシコの砂漠よりもかこくな環境だ。
デマに踊らされたこしぬけ共は使いもしないトイレットペーパーとティシューの山に埋もれて干からび、
マスクを通貨と勘違いした転売ヤァ共は在庫をかかえてコロナビールのせんを開ける事も出来ずしぬ。
タルサ・ドゥームが手を下すまでもなく、こしぬけは勝手にサボテンに刺さり、そのへんで死ぬ。それがジャーパンのナウだ。

これを読んでいるおまえはバンデラスでありたいと願う男だろうからパルプに潰されて死ぬ事はないだろうが、気がくるったこしぬけ共が何もかもを買いしめてしまうかもしれない。お前の愛してやまないドリトスは店から姿を消すかもしれないし、ベイブと溺れる為の酒もアールコル消毒に使えるというデマで飲み尽くされてしまうかもしれない。
男を殺すのにGUNはいらない。覚えておけ。

だが、おれは違う。おれは真の男として生き延び、そしておまえを導く事が出来る。

おれと同じように真の男であるおまえを救う為、おれは保存食でつくる「ひっぱりうどん」という山形のきょうど料理をおまえに教える。

当記事はコラムニストの逆噴射聡一郎先生の文体を模倣した#逆噴射構文によって執筆された記事です。

何故ひっぱりうどんはメキシコの地に産まれたのか

先にいっておく。必要なのはなっとう、さばかん、たまご、ねぎ、めんつゆ、そして乾麺のうどんだ。だがすべてを用意するひつようもない。

まず、なぜひっぱりうどんが生き延びる為の料理なのかをおしえる。これは「茹でたお湯ごと器に盛り付けて、器からうどんをひっぱり出してつゆにつけて食べる」料理であり、なんか四国のほうで有名な「釜揚げうどん」の乾麺バージョンだ。だが由来はまったく関係なく、吹き荒れる熱砂のようにかこくな山形の冬、サボテンも風に流され転がるへんなくさ(タンブルウィードという)も生えない山で、炭焼きにこもった真の男たちが生き残る為に持ち込んだ保存食が元になっている。その地域では冬に備え乾麺を保存食とし、またどの家庭でも納豆を作っていた。男たちは山でうどんを茹で、鍋から直接うどんをひっぱり出して納豆を絡めて食べていたのだ。つまり、ひっぱりうどんはくさ一本生えない、うかつに外を歩けばぶざまな死骸を晒すメキシコの荒野で生き延びる為の食事だ。

「エッ!おかしい!今の話にはさば缶が出てこないじゃないか!」と気づいたおまえはかしこい。
元々ひっぱりうどんにサバかんは使われていなかった。1960年ころにやまがたにくだもののかんづめを作る為の工場が出来、それをきっかけにその会社のサバ缶が普及し、ひっぱりうどんにも定着する事になった。
「じゃあサバカンは伝統的じゃない!なんとか県は歴史をまもれ!」
そう思ったおまえはおろかだ。新入りに因縁をつけるのはダニー・トレホですらないマフィアのしたっぱの仕事だ。こしぬけになってしまったおまえはシングル・アクション・アーミーの弾丸で眉間を撃ち抜かれ、流れ者の主人公が真の男である事を証明するために死ぬ事になる。
確かにサバ缶はよそものだが、相性がいいから手をくみ、名をのこした。コロナビールの瓶にライムを押し込むのと同じだ。

真の男が生き延びる為のレシピ

ごたくはこのへんにし、レシピのはなしに戻ろう。
繰り返しになるが必要なのは納豆、鯖缶、ねぎ、たまご、めんつゆ、そして乾麺のうどん。うどん以外のぶっしつはタレを作る為のたべものだ。
乾麺のうどんは好きなもので構わないが、太めのものを用意しろ。なぜならひっぱりうどんはお湯につけたまま食べるので、凄まじい勢いで麺が伸びるからだ。細麺だと伸びるスピードも早く、ゆだんするとでろでろに伸びたこしぬけ麺を啜り、悲しみのあまり酒とベイブに溺れる羽目になる。ちなみに山形ではひっぱりうどん専用うどんが手に入るが無理する必要はない。セイユーで売ってる5わで198円くらいのものでも十分にうまい。
サバ缶や卵は後の世で足されたものと思われるが、このレシピの食べ物がどれもそこそこ日持ちする事から、真の男が生き残る為のめしである事がわかるだろう。

これを見て
「おれはもうだめだ。なっとうなど食えない。メキシコでガンマンとして生き、死ぬ」
「サバは無理だ。おれはコナン・ザ・グレートになれない。どれいとして死ぬしかない」
「おれはほんとうにメキシコにすんでいるから生卵を食うとサルモネラで死ぬ」
「ワンワンワン!(いぬはネギを食うとしぬ)」
となげいたおまえ達は一度落ち着いて欲しい。まだシャワーでなみだを流し、眠るには早い。

これらのパーツはどれもが相性がいい選りすぐりのエリート達だが、決して「なければ成り立たない」というものでもない。ひっぱりうどんは「茹でた乾麺をタレにつけて食う」ものなのだから、極論うどんとめんつゆさえあれば成立する食事だ。こいつらは戦隊ヒーローのように一人抜けただけで必殺わざがうてなくなるような牙をぬかれた男ではなく、プリッキュアやかめんライダーの映画のようにいればいるだけ強くなるオールスターだと思って貰えばいい。おまえが納豆や魚が苦手なら無理に入れる必要はないし、おまえが犬ならば食ったらしぬ物を入れる必要もない。生卵も無理に入れる必要はないし、おんせん卵に交換しても構わない。

余談だが、北のメキシコたる山形のスーパーでは、「ラジウム玉子」なるおんせん卵が売られているのをよく見た。
詳細はふめいだが、名前の響きからしておそらくガッズィーラのパワーを含んだものだろう。
こうして幼少よりゴジラのたまごを食べ続けたおれはチョー強い。おまえは強く、真の男ではあるがおれには勝てない。覚えておけ。

なお、レシピの中にはめんつゆではなく醤油を使うものがあり、この料理の由来からすればこちらが起源の筈だが、醤油で麺を啜るのはお前がバーフバリ程の男でもない限りおすすめしない。GUNは老若男女誰が握っても強い。めんつゆは文明が産んだGUNだ。うぬぼれる事なく文明に頼れ。


ともかく、うどんとめんつゆを確保したらあとはおまえが選ぶベストメンバーを用意しろ。
おれは薬味もなしにそうめんを4人前くう程麺類が好きな男なので、たまにうどんとめんつゆのみで真の男のけっとうに挑む事がある。(これは決闘と血糖をかけたジョークであり、スマッホンの変換予測により偶然気がついたものでは断じてない)おまえがこの領域にたどり着けるというのなら好きにしろ。

真の男のひっぱりうどんの作り方、そして食べ方

材料が揃ったら麺を茹でる前にタレをつくれ。
別にうどんを茹でている途中に作ればいいが、記事の時系列のかんけい上こう書く。つゆにかまけてうどんが吹きこぼれ、ガスレンジの火がきえてベイブにあざ笑われるのを恐れるのならば、おとなしく従え。

まず鯖缶の蓋をあけろ。汁は捨てても捨てなくてもいい。おまえが鯖缶の汁まで愛せるのなら、汁ごと使うと味わいが深くなる。味わいとはつまり出汁の多様性だ。おまえが多量のえんぶんに負けないと信じ、おれはこれをおすすめする。
鯖の身をあらくほぐし、つけ汁用の器に好きなだけいれろ。大きな骨は外したほうがいい。おれは真の男になるため(あるいはただめんどくさいので)外した骨は口の中に捨てる。

次は納豆だ。これも好きなだけ用意しろ。1パック用意してもいいし、給食や朝食バイキングに出る小さなカップでもいい。粒は小粒が絡みやすい。ひき割りも悪くはないだろう。それを軽くかき混ぜ、器に入れろ。
どうせめんつゆに沈むのでタレは入れなくてもいい。辛子はあまり相性がよくない。とっておいてシウマイとかにつけろ。

そしてそこにめんつゆを注げ。納豆をほぐすようにかき混ぜろ。
めんつゆの濃さはおまえのこのみで構わないが、そうめんをくう時よりは濃くしたほうがいい。
また、つゆをどれくらい入れるかも重要だ。
ひっぱりうどんのつゆの汁気は個人の好みや家庭によって結構異なり、殆ど汁気がなく納豆を絡めるように食べる人もいれば、そうめんつゆに薬味を入れる感覚でシャバシャバの汁を作る人もいる。おれはどちらかといえばシャバシャバ寄りだが、これはおまえの思うままに調整しろ。
メキシコでは己のりゅうぎを持たないものはのたれ死ぬ。だが他人の流儀を否定するやつもだれかに打たれ死ぬ。自分をしんじろ。そして他人のやりかたをけなすな。これがゆいいつのルールだ。
どちらにせよ味は濃い目に作ったほうがいい。なぜならつけ汁は薄めるのはかんたんだが濃くするにはめんつゆを足すしかないからだ。食べてるとちゅうで薄くなる事も考慮しておけ。

そうしたらたまごとねぎを好きなだけとうにゅうし、つゆの完成だ。おれはたまごが乗っている料理は食べてる途中で黄身を崩し、のうこうなあじを楽しめないと絶望し人知れず干からびて死ぬので白身をほぐすていどに留めるが、お前がそうしたいなら均一になるまでかき混ぜてもいい。それはそれで違った味わいになる。

そうしてつゆが出来たら、いよいようどんを茹でろ。
うどんはたっぷりのお湯で茹でろ。なぜならひっぱりうどんは茹でたまま茹で汁ごと食卓に出す。つまり水で〆たりしないので茹で汁にぬめりが出すぎるととたんにまずくなる。やたらしょっぱいどろどろした小麦粉溶液を飲むのがすきというなら止めはしない。だがそれは真の男とかではなくちょっとどうかしているやつだと思う。

うどんは少し固めにゆでろ。おまえはペペロンチーニを啜りながらベイブを口説くイタリアーノではなく、メキシコのバーでテキーラを飲み干す真の男なのでアルデンテのように芯を残す必要はない。だが、たべてる途中でそこそこ柔らかくなるのでそれを見越しておけ。

茹で上がったら器に盛れ。鍋の中からうどんをたぐり、うどんがひたひたになるくらいに茹で汁を注げ。たいねつ性は多少あったほうがいいのでガラスの器に盛るのはやめておけ。
おまえの食卓が許すのなら、茹でた鍋ごとテーブルに乗せてもいい。おれの実家では土鍋でうどんを茹で、そのまま食卓に乗せていた。おまえのプライドが許すなら真似をしても構わない。

さぁ、おまえの前には茹で上がったうどんと、おまえがカスタマイズしたGUNであるつけ汁がある。
これはデュエルだ。おまえは真の男を証明するために荒野に立ち、腰には弾をこめたリボルバーけん銃。目の前には風に流され転がるへんなくさ(タンブルウィードという)。やる事は一つだ。

うどんをすすれ。器からうどんを引きずり出し、タレに絡ませてただすすれ。
一心不乱にすすれ。茹で汁に浸かったうどんはまたたく間に伸びる。おまえがごろつきの命乞いを気にもとめないように、うどんも立ち止まる事なく伸び続ける。お湯の量がすくないとぶよぶよに膨れ上がってかたまり、脳みそみたいになる。おまえはハンニバルか?違うならすすれ。

そうしておまえがすべてのうどんをすすりきった時、おまえは腹の中の温かいまんぷく感と共に、真の男に一歩近づいている。わかったか?これがひっぱりうどんだ。

ひっぱりうどんが真の男の料理である3つのりゆう

実際に腹がふくれたおまえならなぜひっぱりうどんが真の男の料理か理解しただろうが、ここまで読んでもまだ実行していない腰抜けは「けっきょくこの料理は何がすごいの?」とふぬけた事をいうだろう。
が、おれはおまえを真の男にする義務がある。このひっぱりうどんが今なぜ真の男を生き延びさせる料理か教えてやる。

一つめ。この料理の素材はとても日持ちがするので外がコロナでメキシコと化しても生き延びられる。
たまごや納豆、ネギといった比較的賞味期限の短いものでも一週間程は持つし、供給も安定している。今後スパーへの流通が滞ってもこれらがいっぺんになくなる事は考えにくい。
乾麺やさば缶に至ってはそれをはるかに凌駕する賞味期限だ。半年は余裕で持つのでこれを買いだめしておけば一歩も家から出ずともそれなりに生き延びられる。
仮にコロナのやろうが殲滅され、日本がメキシコでなくなったとしても、ゆっくりと消費する余裕もある。うどんとサバ缶のツートップさえ確保すればひっぱりうどんはいつでも食べられる。
(編集部注・これは「買い占め」を勧める文章ではなく、あくまで「買い溜め」の話であり、自分で消費出来る以上の買い込みは控えなくてはならない)

2つ目、これが「温かくて汁気のある食べ物」である事だ。
おまえはスーパーから食品がきえ、街の灯りが消えたふるさとをみた事があるか。おれはある。3.11のあの日、おれは山形にいた。
あの震災でまなんだ事はいくらでもあるが、今ここで言うべき事は「温度と汁気はいのちを実感させる」事だ。
人はおにぎりや菓子パン、最悪乾パンを食べていれば死ぬ事はない。だが腹の奥に溜まり、身体の内側から温まる感覚や、喉を通る潤いは「食事」の醍醐味であり、ドリトスですら味わえないものだ。ひっぱりうどんは温かく、みずみずしい。これを満たす料理の最小単位がひっぱりうどんだ。
もし日本がさらなるメキシコと化し、コンビニやスーパーですらまともに食料品がなくなったとしても、ライフラインが生きてさえいればいつでもこころを満たす事が出来るのはとても大切なことだ。おまえが真の男として生きていくならいずれ思い知るだろう。知ってほしくはないが覚えておけ。

3つめ、最後は「なんか栄養がありそうに感じる」事だ。
おまえが自炊するなら、そうめんやうどんなどの「麺をゆでただけの食事」にざいあく感を覚える事があるだろう。
小麦粉と塩だけで構成されためん類は貧弱で、それをめんつゆにくぐらすだけの食事はコナンが奴隷の頃をほうふつとさせる。
だがひっぱりうどんのつゆは違う。なっとうはとても身体にいいことで有名で、サバもなんか頭にいいことが知られている。こいつらはおまえをつよい男に育ててくれるだろう。
もちろん、じっさいの栄養バランスはそこまで優れていないのは明らかで、よく考えなくとも野菜が全く足りていない。
だが大切なのは「栄養があるっぽい」ことだ。滋養がありそうという免罪符がおまえの食事の時間を豊かにする。うまいものはこころおきなく喰え。それが真の男の生き様だ。

むろん、ちゃんと野菜を取りたいというおまえも腰抜けなどではない。かりそめの健康に惑わされず、しんじつを見抜ける男だ。
だったら一緒に野菜を食べればいい。マリアッチでも力不足ならカンパとキーノを呼ぶまでだ。真の男はクレイバーに戦う。
ひっぱりうどんは和食だから浅漬けやおひたしを食べるのでもいい。
だがこいつにはパンチのある味が合うので、ごま油の効いたナムルやピリ辛のほっともやし、中華ふうに味付けしたキャベツや小松菜などの葉物野菜炒めもおすすめだ。
ともかくおまえがうどんを啜るざいあく感を打ち消すだけのなにかをよういしろ。なんなら野菜ジュースでもいい。
「野菜ジュースは糖度が高い。ローカーボじゃないね」とかぬかすやつはおいておけ。おまえのような軟弱者はメキシコでは身ぐるみを剥がされて死ぬ。そもそも糖質を気にするならうどんをくうな。トーフとか食っておけ。

おれがおまえにおしえる事は以上だ。おまえはひっぱりうどんという銃を、真の男として生き延びる術を手に入れた。おまえは太陽のぎらつくメキシコの荒野を進む事ができる。「ウィルスとは関係ないね」とコロナビールを飲み干す事もできる。また会おう。生きて、このメキシコの地で。

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