見つけないでください

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österreichのライブ

新代田feverのösterreichのライブが開演する前に書いている。 ライブに行く気力が無かった。 普通に今日のライブは諦めようと思った。 持病がかなり悪化していて、最近はただベットの上で天井が90度回転したらどうなるだろうということだけを考えてた。本気で。お風呂に入ること、顔を洗うこと、生活が出来なくなっていた。 天井の照明を囲むように木の棒が四角く囲っている。それらを時計の針のように頭の中で動かす。特に意味はないし、すぐにでも自分の首を絞めてしまいたいという気持ち

    • 死者

      運命が、君の長いまつ毛の上に腰掛けた。 楽園が、君の白い指先にぶら下がった。 君は立ち上がり、再び歩み出した。 祝祭が始まる。 君は何度も死者になった。 大切に育てた蛹。君の分身。孵化する直前に、何度も握り潰されて、透明な粉々の死骸と一緒に棺に入って灼かれた。 悪意も愛も等しく濾過した水。君の届かなかった祈り。知らない誰かの罪の為に、死刑台に登った。 そして、もう、誰にも殺されないように、君は自らの手で魂を塗り潰した。四肢をちぎった。心臓の鮮血を浴びた。呼吸をするだけの死者

      • シャンプー

        真っ暗な部屋で横たわる私は、髪から漂うシャンプーの匂いで深呼吸をしている。どこにでも売ってるシャンプーの香りは、安っぽいのに安心できるような心地にさせてくる。簡単に安心を手に入れられるようになったら、死んだようなもの。 カーテンの隙間から漏れ出す夜、夜、夜。初恋のことを思い出す。初恋はいつだって夜だった。もう顔も思い出せないあの人は、夜がとても似合う人だった。嘘つき、そんな人は存在しない。 夜が似合う人はリアリティがないな。 夜に愛された人を愛したいという祈り。 もう寝る

        • 夏の孤独

          真夏なのにマフラーを編んでいる君の横顔からは、暖炉がパチパチと燃える音とホットミルクの匂いがした。 これが初恋だと思って、カルピスを沢山飲んだ夏だった。君が消えた夏だった。 蝉が鳴いているのは、本当は泣いているのかもしれない。生きることにゆるやかに絶望するのに、人間も蝉も関係はない。暑さで少しずつ君との思い出が溶けてゆくのを感じる。あったはずの記憶と、あるはずだったら記憶が溶け合って、手がベタベタになってしまった。アイスクリームが溶ける早さを追い越すように君の声が消えてゆく

        österreichのライブ

          恋の葬式

          鈍い星屑が目の奥で点滅する。 君の名前を思い出せない1日が、もう何度も訪れて、恋も死ぬのだと思った。 失恋の時に泣かなかったから、恋のお葬式ができなかったのかと少し寂しくなる。 花を供えることも出来ず、偲ぶことも出来ず、怒ることも出来ず、ただ風化してゆく恋は果たして恋だったのだろうかと思う。 ガラスに反射した顔はただの湖だった。私は何者でも無いことにひどく安心する。恋がわからないことが少し許された気になって、キツく握りしめた太陽に手を振った。 恋をしたいと思う時、その先に私

          恋の葬式

          見つけないで欲しいけど、見つけて欲しいし、好きだよと伝えて欲しいし、名前も知らないあなたの為に書きたいのです

          見つけないで欲しいけど、見つけて欲しいし、好きだよと伝えて欲しいし、名前も知らないあなたの為に書きたいのです

          寝顔

          夜は、白くて揺ら揺らしてるふわふわした時間が本物で、真っ黒な時間は偽物だと思わないと越せない夜があった。 朝は藍色で水平線越しのグラデーションの中に閉じ込められているのが本物で、光が差し込むカーテンが揺れている部屋は偽物だと思わないと迎えられない朝があった。 夜に祈って朝に呪う。

          寝顔

          春の骸

          「ねぇ、私の写真を撮って」 貴方が春を見つめている瞳が、カメラのレンズで屈折することなく、一つの埃も被らず、誰かの裸眼に光のまま届いた時、心で失明する人。世界は薄桃色で染め上げられて、ただ静かなシャッター音が滲んでいく。 貴方のことを春だと思い、四季を指折り数えるように残像を追いかけ続ける人達が忘れてしまったのは、夕暮れと夜の繋ぎ目、覚えているのは貴方だけ。美しいものだけを覚えていて。 コンビニの電子音が、どこか寂しげに聞こえるのは、春だからです。貴方が鼻歌を口ずさみなが

          春の骸

          プロローグ

          エタノールの匂い 電光掲示板に表示される3桁の数字たちの行進 顔のない人達が座っている真っ白なソファー 一面の向日葵畑に降る雪。偽りの記憶。 その先にあるのは? 私はお手軽に記憶喪失になることが出来る。 嘘です、出来る、といいなと思っている。 何故、私の心臓を突き刺した言葉から溢れ出る鮮血を、私をただ静かに抱きしめてくれた言葉と同じ量で覆えないのか、分からなくて、悔しくて、手洗いうがいをきちんとしています。 だからなのか、風邪を引いたのはいつが最後か忘れてしまっています。

          プロローグ

          夏?

          溶けないアイスクリームの体温、半透明な線香花火からはちょっと高いシャンプーの匂い、自分の愛が正しいと思ってる人達が怖いと泣いている小学校のプール、自由研究で酸化したダイヤモンド、信号が赤く点滅している深夜高速、棘のない薔薇からする朝顔の匂い、大量のスマホが水槽に不法投棄された偽物の新宿、ヨーヨーに閉じ込められた花火大会、水平線が向日葵で覆われている白夜。 無いけれど確実に存在する夏の記憶達。 寂しさだけが満ち欠けをする箱庭の中の夜。 永遠になれなかった真夏の夜の夢。 星で満

          カモメ

          人の横顔が好き。私のことを見ていない、他の景色を見ている顔を、私は眼差す、関係の断絶、座標が交わることは無く、数学の宿題をサボった日の夕暮れが今も教室の隅で空回っている。 君の寝顔が好き。無防備だからこそ、絶対に誰も立ち入らせない聖域としての寝顔。私の夢を見てくれたことが一度でもあるでしょうか?貴方は、もういない彼女の夢を繰り返し見ている。彼女のお墓は海の近くにあることも知らずに。 誰も知らない私というものが存在せず、誰かに見つめられることでしか私は存在出来ないとしたら?

          カモメ

          日記(高橋國光さんのnoteを読んだ翌日)

          どこまでいっても私は高橋國光の中にある日本語以外に美しいものは見つけられない。 それが私を、パンを焼いているのを待つ間、冷え切った部屋を電気ストーブで温める間、瞼に着せるアイシャドウと唇に咲かせる花の色を考えている間、どこまでも絶望させ、どこまでも安心させる。消費する側で居ても良いという赦しは、現代の神の福音で、天使は大量生産大量消費の掌で潰されたらしい。 怠惰には生きたいけど、惰性では生きたくないと思ってた。愚かで可愛らしい夢。緩慢な日々でゆるやかに毒殺される人達の解毒剤は

          日記(高橋國光さんのnoteを読んだ翌日)

          季節外れ

          春が舞台でスポットライトを浴びる 漣のように空気が震える 観客達の目が、舞台に引き寄せられる。 何もない舞台 真っ黒な舞台 白いスポットライトの中、ただ立っている どこも見ていない目 言葉を発したことのない唇 マネキンのような細い腕 土を踏みしめたことのない足 全てが幻のような、私たちの春が立っている。 静寂 恐怖に似た静寂が幕を上げる。 もう手遅れなことを知る。 始まりだと思っていたスポットライトの中、誰も立っていないことに気づく。 春は、君たちの知らないうちに始まる

          季節外れ

          夢うつつ

          眠気に、抗わない方が良いこと、睡眠は大事だってこと、知ってるよ。それでもベットに深く沈み込みながら、無意識に眠気に抗う。 それは、夜へのささやかな抵抗。 夜だけが、世界と私の視線が分断される。 朝、昼、夕方、私は私の世界を見つめられていたのに、眠る、私は夢の中にいる、夜だけがじっと私を見つめている。 不公平だ、と思う。 私が知らない間に、夜は私の寝顔を見て、聖母のように微笑んでいるのか、嘲笑うようにケタケタと笑っているのか、濁ったビー玉のような目でただじっと見つめているのか

          夢うつつ

          無罪

          愛について考えろといった 愛について考えてない人間なんていないと言われた。 愛については、経験から知るんだよ、と言われた。 私だけが、愛について考えていると思っていた。 愛についてが何か分からないまま、人々は愛を歌っているのだと、ぺらぺらの白紙の回答用紙を答え合わせする気持ちで眺めていた。 全て間違えていた。 月だと思って毎日祈っていたものは、太陽の抜け殻だった。 私だけがアルファベットを読めると思っていたのに、他の子達はとっくにフランス語を読んでいるような恥ずかしさが私

          無罪

          毛虫

          彩度を下げて生きている。 けれども、春の交差点、駅のホーム、飛行機の窓の外、ビビットな色彩が目に飛び込んでくる。 それは、君が嫌いだよという告解のようで、 私はきつく目を瞑る。 モノクロ映画の世界が羨ましい。 全ての色が奪われてなお、命には色があるのが、 世界からは色が匂い立つのが、気持ち悪くて、美しくて、私は赤信号で足踏みをした。 世界がビビットになるのと反比例するように、 私の命は色褪せて行く。 褪色した心臓を石鹸で洗いながら、 心臓が白くなるのを願って眠る。 泡が頬に

          毛虫