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「劇場版 センキョナンデス」 〜民主主義の現在地をあぶり出す。

那覇とコザを日々往復するようになって丸3年。コロナの日常と重なる日々で、車中の楽しみだったのが、YouTubeやポッドキャストのトーク番組だった。「荻上チキ・Session」「久田将義と吉田豪の噂のワイドショー」「ポリタスTV」「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」etc…。

中でも、ダース・レイダーさんがプチ鹿島さんと時事ネタを喋っているということで、聴き始めた「ヒルカラナンデス」は、特に大ヒットだった。時事芸人のプチ鹿島さんとの軽妙なやりとりの中から透けて見えてくるのは、民主主義とは何か、そして誰のものなのかということ。
コロナ禍の日々で起こるあり得ない出来事の数々、常に疑問の伴うジャッジをする政治と行政。何故か強行されてしまった東京オリンピック。多くのことは国民に対して可視化されず、置き去りにされるばかりだった。結果的に政治の大切さをこれまでにない形で実感することになった3年間だったと思う。
週に一度二人が行う言葉のキャッチボールは、コロナ禍の中、自分自身がどういう態度でいるべきなのかという視座を提供してくれたと思う。この番組に救われた人は実は少なくないのではないかと思っている。

ダースさんと最初に会ったのは2018年2月、渋谷のライブハウスだった。ジャカルタのバンドlightcraftの日本ツアーの対バンで出演してくれたのだ。THE BASSONSではなく、誰かしらのゲストでのパフォーマンスだったのだが、フリースタイルのラップがあまりに強烈で、終演後に思わず握手を求めた。この時は、左目の眼帯の理由も知らなかったし、映画を撮ることになるなんて本人も想像すらしなかったはずだ。

その後、ソウルのZandari Festaや沖縄のSakurazaka ASYLUM、Music Lane Festivalとライブの現場に居合わせて、得難い瞬間を繰り返し共有させてもらった。Trans Asia Music Meetingでは、パネルとして登壇もしてもらった。
ダースさんは、ショーケース・フェスティバルの意味を最も理解しているアーティストの一人でもある。音楽の現場でのコミュニケーション能力の高さが、政治や社会を語るときの論客としてのスキルにそのまま反映されている。私は、彼のことをミュージシャン、ラッパーとして見てきたのだが、どちらも言葉を紡ぐという点では同じなのだ。

「ヒルカラナンデス」のスピンオフ企画で製作された映画「劇場版 センキョナンデス」(ダース・レイダー / プチ鹿島 監督・主演)。
「ヒルカラナンデス」を、初回から欠かさず聴いている"ヒルマニア”の身としては、勝手に並走してきたこの3年の出来事や二人が発してきた言葉が鮮やかに甦ってくるようだった。それだけで胸熱なのだが、最後のクレジットの後に流れた映像に、さらに痺れた。(詳しくは映画を!)
映画は2021年秋の衆議院議員選挙と2022年夏の参議院議員選挙の選挙戦をベースに作られている。民主主義の根幹とも言える選挙戦を漫遊しながら、各候補者たちと直接のやりとりを記録するというのは、新たな形のジャーナルと言えるだろう。安倍元首相の銃撃事件が起きた日のなんとも言えない重苦しい気分は、いまだに生々しい。
映画化は、二人にとってはある種の副産物だったのかもしれないが、「ヒルカラナンデス」を通して知らされる映画化のプロセスそのものも、別のドキュメンタリー映画さながらの面白さだったりもする。

この作品が2月に公開されるという話は聞いていて、「桜坂劇場での舞台挨拶を」という連絡ももらっていたのだが、桜坂での公開のタイミングには間に合わなかった。
それでも、3月31日(金)ミュージックタウン音市場の初日と、4月1日(土)桜坂劇場で、2日間の舞台挨拶が開催される。ダースさんと鹿島さんんは、昨年9月の沖縄知事選の際に沖縄入りして、配信の特番も製作された。沖縄に対しても特別な想いのある2人が「劇場版 センキョナンデス」を伴ってどのような話をしてくれるのか、楽しみでならない。

◎「劇場版 センキョナンデス」舞台挨拶日程
3月31日(金)ミュージックタウン音市場(沖縄市)
18:30の回の上映終了後開催
(6時間無料駐車場有)

4月1日(土)桜坂劇場(那覇市)
15:00の回の上映終了後開催

(C)「劇場版 センキョナンデス」製作委員会

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