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EPO1994 / 2023

沖縄でEPOさんのライブを最初に開催したのは1994年6月のことだ。会場は、現在のタワーレコード那覇店の場所にあったリウボウホール。EPOさんは、大手の事務所を辞めて、独自のスタイルで音楽活動をスタートするという時期と重なっていたと思う。アルバムで言うと「VOICE OF OOPARTS」 がリリースされたあとぐらい。

先日、EPOさんからライブの動画のリンクを送っていただいた。2023年3月11日に東京で行われた、鬼怒無月さん(ギター)と城戸夕果さん(フルート)、宮川雅彦さん(朗読)を加えた4人でのライブの映像。
まとまった時間を取るのが難しく、那覇とコザを往復する車中で(音だけなのだが...)何度かに分けて聴かせてもらった。

「音楽のような風」、「ダウンタウン」、「う、ふ、ふ、ふ、」、「土曜の夜はパラダイス」…。1980年代に、J-POPの王道を歩むところからキャリアをスタートしたEPOさんの一つの真骨頂とも言える場面を、オープニングとアンコールに持ってくるというファンにとっては嬉しい構成。
その間には、コロナ禍で書かれたという40曲余りの作品の中からいくつかの新曲が紹介された。ジャズ的なものに魅かれているということも嬉しかった。「汽車」や「DANCE」といったライブではお馴染みの曲は、より自由度を増したような印象を受けた。
今回、圧巻だったのは、宮川雅彦さんによる「光になった馬」の朗読から、EPOさんのピアノの弾き語りで歌われた「たったひとつの」への流れ。楽曲の美しさと、言葉の説得力。おそらく客席にいた多くの人は、その世界観にグッと引き込まれたのではないかと思う。鈴木蘭々さんのために書き下ろされた「キミとボク」は、「たったひとつの」からのしなやかな流れをそのままに、コンサートのクライマックスへと導いた。ある種のシアトリカルな構成が、音楽の力を引き出しているようにも感じられた。

EPOさんのボーカルと自身で弾くピアノを中心に、鬼怒無月さんのギター、城戸夕果さんのフルートというミニマルな編成にもかかわらず、それぞれの音が際立っていて、歌もとても自然な形で入ってきた。
録音(録画)とはいえ、久しぶりに聴くことができたEPOさんのライブは、本当に素晴らしかった。王道のJ-POPから、”AQUANOME”の世界観、さらに新曲まで、EPOさん自身が今表現したいと感じている音楽がきちんとアップデートされて、2時間というショーの中に凝縮されていた。それはまさに最大公約数ではなく、'最大公倍数的'なものを追い求めていく、プロフェッショナルの仕事、という印象であった。

2023年のライブを聴きながら、29年前のライブのことを思い出していた。

あの夜のリウボウホールでも同じように、その時EPOさん自身が歌いたい作品を中心に、目の前のお客さんのことも考えて構成されていたと思う。「ダウンタウン」や「土曜の夜はパラダイス」といったポップチューンもありつつ、”ヴォーカル”だけではなく、"ヴォイス”というスタイルで、のちに”AQUANOME”へとつながっていく表現も試みられていた。即興性のあるチャレンジングな音楽は、ライブ映えしたし、ユーミンの「瞳を閉じて」がさらりとカバーされたりもした。ミルトン・ナシメントの「トラヴェシア」の日本語カバーは、個人的にとても大切な作品になった。

また1日も早く、EPOさんの生の歌声を聴いてみたい。車中、そんな気分を味わえた幸せな数日間であった。


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