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『ミュージカル 生きる』


『ミュージカル 生きる』観劇しました。こちらのキャスト回。

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まず言いたいのは感染症拡大防止に努めて観劇しました、ということ。劇場内もきちんと配慮がされていて、安心して観劇できた。

このような社会情勢になって、一旦エンタメが消えて、それから初めての観劇。無事に初日を迎えて、今日もちゃんと公演があって、自分でチケットをもいで、席について。一つ一つミッションをクリアしてやっと幕が開いた時、なんかもうそれだけで感極まってしまった。私の楽しみであり、娯楽であり、心の拠り所がやっとやっと戻ってきた。

10月の日生劇場は私にとって特別で。毎年ABC座を観劇して、思い出が沢山詰まった大好きな場所。今年も来れて本当に嬉しかった。ただ超満員の劇場しか知らないから、ひとつ飛ばしに席が空いている光景が寂しかった。でもその分ここに集った観客のエネルギーをビシビシ感じた。


観劇を終えて

すごくすごく良かった!!シンプルに観に行って良かった!! 

構成、テンポ感に夢中になった。間延びせず、かつ情緒に浸れる絶妙なテンポ。観客を置いていったり、待たせたりしない。一番好きなシーン展開は勘治の容態が悪くなってから、一気に転換してお葬式のシーンになるところ。勘治の死、というストーリーの肝になるところをこんなふうに描く驚き。

この作品の中心、渡辺親子。ほんとどうしようもない親子だね!!!小説家の気持ちわかる!!勘治話せ!!!光男話聞け!!! なんでそうなるんだ…っていう最悪のパターンをひたすら進む2人にモヤモヤ… でも2人ともお互いが嫌いなわけではないんだよね。信頼してるからこそ日々の会話を怠ってしまって、結局話せなくなってしまったんだと思う。「男は黙って…」っていうイメージ通りの昭和の男たち。

光男ってさ~、仕事してるし、結婚してるし、近々お父さんになるけど、本質は甘えんぼうのお坊ちゃんなんだよな~。お父さんの愛を一心に受けて育ってきて、お父さんのこと信頼してるからこそ、突然現れた小説家ととよに愛情が向けられてるのが悔しかったんじゃないかなあ。あと2人はお父さんを変えられたのに、自分では変えられなかったり。なんでお父さんは僕を見てくれないの!!ってキャンキャン吠えるワンちゃんみたい。あと威勢はいいけど、喧嘩したことないよね。小説家に向かっていくけど、結局ビターン!!!って投げ飛ばされる弱っちい感じがとてもかわいかった。でも光男の気持ちもわかる。今以上に世間体が気になる時代だったもんね。お葬式でひたすらお役所の連中に謝りっぱなしの姿が辛かったよ…  同情したくなるような光男の根の良さが伝わるような村井さんのお芝居が大好きでした。最後、残された帽子に縋るように伸ばした手が印象的で。光男は掴めたかなあ、お父さんの手を。でも残されたその帽子はあなたが死ぬほど嫌ってた、とよとの楽しい思い出の品なんだよ。それ知ったらどう思うのかなあ。


勘治役の鹿賀さん。1幕の生気のなさ…! なんかほんと支えてあげないと立ってられないんじゃないか…ってくらい弱くてみてられない。勘治ととよが遊び歩くシーンは、年の差もそうだけど生気の対比があまりにも強すぎて、劇中にもあるように見てはいけないものを見ているよう。だからこそ一幕最後の「二度目の誕生日」は、勘治の決意がこれでもかと伝わって鳥肌が立った。そして二幕はすごくいきいきしはじめる。足取りもちゃんとするし、しぶとく生きている。そんな姿を見て本来すごくエネルギーのある人だったんだ、って納得した。
ぼそぼそしゃべってるのに何言ってるか聞こえる技術、背中で語るお芝居、レジェンドをこの目で見れたこと、すごいことだ。


そしてとよ!とよちゃんめちゃめちゃかわいくて、だけどエネルギッシュで。新しい時代を楽しく前向きに生きていく姿が眩しい。私もこうやって生きたい。年齢的にも境遇的にも近いからか、感情移入して、とよのシーンでグッとくることが多かった。ワクワクを探したり、言いたい事はきちんと伝えたり、夢は待ってないで自分で掴み取ったり。あ~今の私全然そうやって生きれてないなあって、受け身になってばかりで自分から行動しなきゃ、って思い知らされた。戦後から7年、女性がまだまだ力を持てない時代にこんなに楽しさを追い求めて自由に生きられる姿は今も眩しい。とよと近所のおばちゃんたちが公園ができることを夢は掴み取るもの!と喜ぶシーンが、全編通して一番好き。


あと次世代に繋げることの大切さ。市民課の中でけちょんけちょんに言われる渡辺に唯一協力した若き市民課のあの子にどれだけ渡辺と観客が救われたか。葬式のシーンで彼がお偉いさんたちに声を上げたことで、モヤモヤが晴れた。彼が幸せになって欲しいと願うばかり。なんかバカにされても愚直にしっかりやって死にたいよなあ。わかる人にはわかってもらって死にたい。(できればみんなに知られたいけど)


そして、ラストシーン。ああ、ここで終わるってはっきり分かる爽快感。ある種オチは読めるストーリーの中で、(観客がそうあってほしいという願望もあるけど)あんなに美しいラストシーン。心震えた。このために2時間見てたんだっていう納得感が気持ちいい。
そして勘治と光男がはじめてここで目が合うような気がする。やっと気持ちが繋がったように見えるあの瞬間がとても美しくて、完璧な終わり方だと思った。


村井さん

生で見れた~😭😭😭 村井さんの存在感と、キラッと光るお芝居と、スパーンッと響く歌声にただただ魅了された。寝顔かわいいし、「どこ行くんですか、おとうさーん!」もかわいいし😭 泣きも笑いも自由に操れる演技力に脱帽。ああ、この人好きだって改めて実感した。ファンになります。そしてカーテンコールの一連の流れがとても素敵で。そして最後深くおじぎしてから、ニコニコ幸せそうに客席を見回す姿にとっても癒されて元気をもらった。村井さんをこのタイミングで好きになって、生きるを観劇できたことに感謝。


最後に

勘治が自由に生きたいとこぼしたとき、小説家は「人生の召使じゃなくて、主人になった」と言う。自分の人生、自分で責任をもって懸命に生きていきたい。毎日ワクワクを探して、前向きにエネルギーを燃やしていきたい。ここ最近ずっと鬱々とモヤモヤとしてたけど、前に進む勇気をもらえた。私の人生の中で間違いなく転機になるような作品。

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キャストのみなさん、スタッフのみなさんが大千秋楽で無事に走りきれますように!






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