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【技術】片手バックハンドのトップスピンにおけるラケット引き出し動作

サンプラスって元々、両手打ちだったのを片手にしてからオールラウンドプレーヤーとして花開いたわけなんです。それは良いのですが、そのせいもあって、バックハンドのフォームが不細工なわけです(※個人の感想)。でも、その割にというか、それどころか他の人以上にバックハンドの威力が高いんですよ。一体なぜなんでしょうか。

サンプラスさん

まずはサンプラスの不細工さを実感していただきましょう。これは現役時代の打ち方の切り抜きです。不細工さの出どころを探るために、お手本フォームの方々を眺めてみましょう。厚めの当たりのワウリンカと程よく厚めのフェデラーです。

ワウリンカさん
フェデラーさん

そうなんです。この状態での肘がポイントとなります。サンプラスは、この時点で肘を曲げています。そして最重要な違いとして、サンプラスはまだスイングを始めていないということです。もちろん動いていないわけではありませんが、「まだ加速を始めていない」という方が正確でしょうか。ワウリンカとフェデラーはこのポーズから振り始められませんが、サンプラスはここで止まっていられるのです。別の言い方をするなら、ワウリンカとフェデラーは既に振り始めてここに至ってます。

最終的なラケット速度としては、半径が大きく、加速距離を十分に取ったワウリンカとフェデラーの方が大きいとは思います。けれど小さなスイングでそこそこ速く振るなら、コースも隠せるし、アリなのかなと思うところです。したがって、サンプラスのバックハンドはある種、居合い抜きのような瞬間的なスイングとなっていました。

しかし、近年、このような半径の小さいスイングを行なっているトップ選手はいません。多くのプレーヤーが肩から先を一体化した大きなスイングを採用しています。これがよくわかるのはシャポバロフのバックハンドでしょうか。

ラケットとストリングの進歩によってテニス界全体のストローク力が上がったため、ネットプレーヤーが減り、それに伴ってパッシングショットの頻度がかなり下がっています。したがって、コースを隠すより、ベースライン間でも攻撃できるほどの威力がストロークに求められるようになったわけです。選手たちはそれを肩周りと背中の大きな筋肉を使って行うようになり、その結果、現代のスイングが大多数になったわけです。

今後、ボールやラケットに関する規定が変わるとかがない限り、強いストロークが要求されます。シングルハンドプレーヤーはしばらく大きなスイングをマスターしていくことになりそうです。テイクバックは後ろの方へ、肩関節からセットし、スイング開始後は早々に腕を伸ばし、最大半径でボールをヒットするスイング。これが現時点での主流というわけです。


ここからは妄想の世界。

ソフトテニス出身の硬式テニスプレーヤーが誕生しました。彼は、軟式で培ったトップ打ちのスイングと超軽量でトップヘビーなラケットを硬式テニスに持ち込み超高速高打点フラットストロークを武器にするプレイヤーです。テイクバック時、腕は身体の近くに高く突き上げるようにセットし、そこから一気に腕を畳むようにしてボールを叩き込みます。スピンのほとんどかかっていないボールはエネルギーを失うことなく相手コートを走り抜けて、ノータッチエースを量産しています。

こんな選手がアジアの片隅から生まれてくるかも知れません。


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