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寝屋川新婚夫婦殺人事件の話

なんというタイトルだ。

と、いうのもですね、今読んでるミステリ小説があるんですけど、そこで冒頭に起こる殺人事件の描写を読みながら、あれ、俺これ知ってるぞ、となって、なんでだっけ、と考えたところ、タイトルの事件を思い出したのでした。

大阪寝屋川新婚夫婦殺人事件は、昭和五十年に寝屋川で新婚夫婦が殺害された事件です。
当たり前だ。高槻で老夫婦が誘拐されてたらこんな呼び名にはならない。

事件の詳細は、なかなかに惨たらしいもので読みたくない人もいらっしゃるでしょうし省きます。
ネットで検索すれば出てきますし、一昨年アンビリバボーでも特集されて放送されたらしいので、比較的詳しい情報を手に入れることが出来ますよ。

で、現在読んでいる小説のど頭に描写されている事件が、色々と細かい違いはあれども、殆ど実際の事件の通りで、まあ、要するにモデルにしているわけですが、果たしてなぜ俺はこの事件のことをそんなに詳細を知っていたのか。

アンビリバボーを見たから?
それが見てないのです。

で、なんだっけなあ、どこで知ったんだっけなあ、と、数日悩んでたんですけど、先ほどようやく思い出しました。

大学一年くらいの頃に、本で読んだんでした。

大谷昭宏著の、『事件記者』というノンフィクションシリーズがあって、幻冬社から文庫で三冊出ており、俺はそれを読んでいたのだった。

大阪の新聞記者時代の大谷昭宏が自分の担当した血生臭い事件を、当時の刑事とのやりとりなんかを細かく交えていきながら骨太に描くこのシリーズ。

それの一巻に、寝屋川新婚夫婦殺人事件が収録されていたのでした。

で現実の凄惨な殺人事件の恐ろしいところは、それを行ったのは、紛れもなく実在した人間である、ということで、この事件だってなんの罪のない新婚夫婦が、とある一人の男の身勝手な動機で若くして地獄を見せられて死んでいったのです。
所謂推理小説の犯人とは違う。

鮮やかなトリックも何もなく、実につまらないところから足取りを掴まれ、逮捕されていく。

そんなつまらなく情けない犯人像も、当時は、リアルに見えて震えました。

余談ですが、それまでは探偵が活躍する推理小説ばかり読んでたのに、この本をきっかけにして、刑事小説というジャンルのものも好んで読むようになりました。

で、この犯人(既に死刑執行済み)が情けなくて腹立たしい身勝手な最低野郎なのは間違いないのですが、この『事件記者』を読んで、俺が一番恐ろしかったのは、犯行前にこいつ、犯行現場近くで野糞をしてるんです。

犯人もまだわからない段階の捜査描写の中で、現場近くに犯人のものと思われる人糞があった、という記述。

気味が悪すぎて眩暈がしました。

それで余計にこの事件のことを覚えていたのですね。

後に捜査が進むにつれ、空き巣などは昔、家に入る前に度胸をつける前に、わざと脱糞をする習慣がある、と説明されて、へえ、そんなこともあるんだ、野良犬みてえだな、とは思ったんですが、それを聞いて全て納得! とは思えませんでしたね。
自殺前に度胸をつけるためにしこたま酒を飲む、とかはまだ理解できますが。

そういう、全てが腑に落ちる行動をするわけではないのが人間(犯人)の底の深さでもあり浅さでもあるな、と強く心に刻まれた事件だったんです。

で、この『事件記者』シリーズ、巻を重ねるごとに、嘘っぽい描写が増えてくるので、ノンフィクションとしては甚だ真実性には疑問が残ります。一つの事件を時間をかけてじっくり取材して、被害者や殺人者の内面に光を当てていく、というタイプの本でもないので仕方ないのかな、とも思いますが。

ということで、今読んでる小説の冒頭の事件から、寝屋川新婚夫婦殺人事件を思い出した、という話でした。

なんていうタイトルの小説なのかは、ネタバレになるかも知れないので、読み終わるまで伏せておきます。

#雑記

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