見出し画像

『その女アレックス』 ピエール・ルメートル

文春文庫『その女アレックス』読了。

2011年に発表された本作は、イギリス推理作家協会インターナショナル・ダガー賞を2013年に受賞する。

パリの路上で若くて美しい女性、アレックスが誘拐される。
目撃証言を受けて刑事のカミーユ・ヴェルーヴェンが現場に駆けつけるが、手がかりは一切見つからず、また、カミーユ自身にも誘拐事件にはトラウマがあった。
懸命な捜査の中、ようやく見つかった手がかりを元に真相を探っていくと、やがて、誘拐された女の秘密が紐解かれていくにつれ、恐ろしい過去が浮かび上がってくる……

あまりに面白くて一晩で一気に読んでしまいました。

正確には、夜に読み始めて、一度寝て、起きてから最後まで読みきったというペース。

文庫本で450ページ近くあるのですが、小説内の視点が誘拐されたアレックスと、彼女の行方を追う刑事カミーユ達とで交互に描かれていくので、とてもテンポが良くてスリリング。

全三部仕立てになっており、それぞれの部の終わりに衝撃展開が待ち受けているので呆れかえってしまう。

おいおい、まだこの先とんでもないことになんのかよ! と、もう寝なくてはいけないのに先が気になって寝られない、という「布団の中で読み始めてはいけない不眠本」であることは間違いない。

作中で、カミーユの描いた絵を、部下のルイが反対側から見たときに、まるで違う絵に見えた、という描写があるが、これがこの作品の本質だ。

物事を一面でしか見られなければ、この事件の本質には辿り着けない。

ところで、この作品はカミーユ・ヴェルーヴェン刑事を主人公としたシリーズ物の、第二作目である。

と、いうことは当たり前だけど第一作目があるわけで、それは『悲しみのイレーヌ』というタイトルで文春文庫から出ているが、日本で出版された順では、二作目となる。

ややこしいけど、
二作目→一作目
の順で刊行されていることになる。

で、『その女アレックス』でも冒頭から散々描かれるのだが、カミーユの奥さんであるイレーヌが、前作『悲しみのイレーヌ』の作中で殺害されてしまうのだ。

カミーユが誘拐事件に抱えているトラウマ、の正体が要するに妻を救えなかった、というもので、カミーユはこれを克服していくことにより、アレックスの事件が、見えてくるだけの一面だけではないことに気付いて真相にたどり着いていくのだ。

正直な話、これ、刊行順に読んだ方が絶対に良いと思います!

まだ第一作目『悲しみのイレーヌ』を読んでないのでなんともいえないのだけれど、イレーヌが亡くなるシーンはそれなりに驚きをもって描かれるはずなので、そこを読む前に知ってしまうのは一つ勿体無いなー、と思うのでした。

既に映画化の話もあがっており、原作のピエール・ルメートル自身が脚本にも関わるそうなので楽しみに待ちましょう。

あ、あと、感想サイトなどで、グロいグロい、と書かれていますが、いうほどキツイ描写はないと思います。

面白かったです!

#雑記 #小説レビュー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?