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スミレ、ビオラ、パンジー後編 花の名は。Vol.7(2/2)

前回はパンジー、ビオラ(狭義)など、ヨーロッパ原産種についてでした。日本のスミレに目を向けてみましょう。

スミレ科スミレ属、50を超える日本原産種があります。種のレベルです。亜種、変種、雑種を数えていくと150を超えます。「日本のスミレ」図鑑は過去、何冊も出版されていて、研究が進み概ね網羅されています。実際に識別するとなると慣れなければ困難ですし、150ないし50を覚えるのも大変です。

和名で単にスミレ、という種があります。学名は、ビオラ マンジュリカ、Viola mandshurica。お饅頭みたいで覚えやすいかも。丈夫なのか市街地、横浜市内の住宅地や繁華街の路傍でも、見かけます。葉の形が「へら形」で、花は典型的なスミレ色のスミレ。似ている他種が少ないので区別がつきやすいです。

路傍で見かけるナンバーワンは、タチツボスミレ。ハート形の葉、花の色は幅がありますが、薄い青紫が多く、大きめの花がたくさん咲くと野の花としては美しい部類になります。大げさに言うと、スミレとタチツボスミレを識別できれば、街中のスミレ(日本産)は9割方、大丈夫です。

日本産のスミレ属、まず、パンジーの原種やニオイスミレなど、ヨーロッパ原産種と交配することはできません。園芸的に栽培されることはあり、花が美しい個体の選抜品種や、日本あるいは東アジア原産の近縁種同士で交配した品種もあります。ただ、あまり多く出回っておらず、パンジーのように花壇の草花として大量消費される気配はありません。花が特別に大きくなることも、秋から春までずっと咲き続ける性質もありません。

個人的には街中で、家庭で栽培するなら改良が進んだパンジー、ビオラ(狭義)がよいし、やはり野に置けは蓮華草、と同様に菫草も野に咲いて美しいものと思います。逆に、スミレの仲間がたくさん自生していそうな低山を歩いていてパンジーの花壇が整備されていたりするとズッコケます。

残る問題は、パンジーの和名と、品種名です。三色菫と書いてサンシキスミレ。いまでも時々、使われることがあります。もともとは改良される前に渡来したヨーロッパ産原種、ビオラ トリコロルの和名でした。トリコロル=3色ですから正しい翻訳です。2000年代に日本で育成、発表されたパンジーの品種に「虹色スミレ」「よく咲くスミレ」があります。サンシキスミレの三色に対して、より多彩な色の表現としての「虹色」。たくさんの花を咲かせ続ける性質を語呂よく表現した「よく咲く」。いずれも花の直径、4~5㎝の中小輪パンジーです。商業的にはよいネーミングではないのですが・・・。

単に「虹色スミレ」「よく咲くスミレ」という名札が立っていたとして。「この花はスミレなんだ」と混同または誤認識が発生してしまうことがあります。その人の頭の中で「スミレ」と「パンジー」が別物と認識されているとすると。よろしくないですね。

スミレ

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