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スミレ、ビオラ、パンジー前編 花の名は。Vol.8(1/2)

ガーデニング材料としてもっとも人気があり、多く栽培されている植物といえば。草花の範疇に絞ればパンジーとビオラでしょう。秋・冬・春の3シーズン、半年以上の期間、花壇を彩る花としてお馴染みです。

パンジーとビオラの違い、よく聞かれます。パンジーとビオラはスミレの仲間です。スミレは日本に自生しています。「日本のスミレ」という図鑑が何冊も出版されていますから、それなりの種類があります。パンジーとスミレの関係は? 少々、混乱していますので整理してみましょう。

スミレ科スミレ属は大きなグループで世界に約500種もあります。花の形が左右対称で放射対象にならいのは共通の特徴です。パンジーも、日本産のスミレも、全部その中に含まれています。スミレ属、ラテン語ではViola、ビオラです。なので総称・広義では全部ひっくるめてビオラなのです。狭義で理解していく必要があります。

ヨーロッパの山地に自生する5種のビオラをもとにして、長い時間をかけ観賞用に改良されたグループがパンジーです。パンジーの語源はフランス語のパンセ(思索)。丸い花の中心にブロッチ(黒あるいは濃い色の目)をもつ花が人の顔に見えることからです。野生のビオラにブロッチはなく、19世紀にイギリスで生み出されたとされています。イギリスを起点にヨーロッパ各国で改良されるうちに、パンジーの花は野生のビオラからかけ離れるほど巨大になりました。最大では花の直径が10㎝を超えています。

ファッションと同様、園芸植物でも一方向に行き着くと揺り戻しがあります。野生のビオラから改めて仕切り直しする形で、花が大きすぎず派手過ぎず、ただし姿は整いたくさんの花が咲く園芸品種が生まれます。ヨーロッパではタフテッドパンジーと呼ばれる一群です。なお、花が大きくてかつ、花壇で育てるのに向いた一群は、ガーデンパンジーと呼ばれています。

タフテッドパンジーの系統が日本ではなぜか、ビオラになりました。狭義のビオラです。現在では便宜上、花の直径が約4cm以下の小輪品種をビオラと呼び、4〜5cmを超える輪をもつ品種がパンジーとされています。実際のところ交配品種が増えていて、境目は曖昧です。

ここまでのまとめ。スミレ科スミレ属約500種のうちヨーロッパ原産5種をもとにして華やかに改良された園芸品種がパンジー。大輪のガーデンパンジーと小輪のタフテッドパンジーに大別、日本での呼び名は大輪=パンジー、小輪=ビオラで、境界線は曖昧ながら花の直径4~5㎝。

園芸植物として栽培されてきたビオラにはパンジーの他にニオイスミレがあります。ヨーロッパから西アジアが原産。スイートバイオレットまたは単にバイオレットと呼ばれます。香水の原料として栽培され、いくつかの品種があり、日本でも時々見かけます。パンジーとは少し縁が遠いらしく交配ができません。

次回に続きます。日本のスミレと、パンジーの別名など。

パンジー


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