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小説『FLY ME TO THE MOON』

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いつもの日常は突然のゾンビ大量発生で壊された!ゾンビオタクの格闘系自称最強女子高生が、生き残りをかけて全力疾走!おかしくも壮絶なサバイバル物語!
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小説『FLY ME TO THE MOON』第1話 プロローグ

ここはゼウスシティ 大きな街で多種多様な人種が住んでいる。 だが活気があるのは中心地だけで、 少し離れるとそこには大自然が広がり、雄々しさを見せる。 深い森も存在し、方々には村も存在していた。 18歳の女子で彼氏なしの高校3年生。 幼少の頃に病気して、薬の後遺症でずっと白髪。 そのせいだと思いたいのですがモテません。 彼女は如月(キサラギ) しかしモテない理由だと分かっているけど言わない事があった。 それは大のオカルトマニアだと言う事。 心霊・UMAや巨大生物はもちろ

小説『FLY ME TO THE MOON』第2話 始まりの詩

放課後の如月は部活へ参加する。 これも身体を考えてテコンドー部を選んだ。 もともと格闘技は好きだったので迷いはなかったと言う。 好きこそものの・・・とはよく言ったもので、帯色は『黒』つまり黒帯と言う実力者。身体を丈夫にしたいから・・・が、いつしか強くなりたいから・・・に変わっていた。派手な蹴り技が目立つテコンドーだが、如月の好きな技はわき腹を蹴る【ミドルキック】嘔吐しながら悶える相手の姿を見てから好きになったと言う。顔に似合わずドSな思想の持主が厄介な技に惚れたものである。2

小説『FLY ME TO THE MOON』第3話 誤算

明らかにいつもの日常じゃなくなったのに 如月は冷静だった、それもかなり。 同じ学校に通う仲間をも盾にしようと考える程に。もちろんそれは如月にとっても最終手段であって、共に戦ってくれるなら話は別だ。 全ては生き残るため。 校舎3階の技術室を出て薄暗い廊下には 誰もいないのが確認できた。 『よし!』小さく呟いた。 如月は階下へ向かうことに。 一番近い階段でもざっと20mほどの距離、 走っても良いのだが如月はやはり冷静である。映画では飛びかかる瞬間のゾンビの動きは意外と早い

小説『FLY ME TO THE MOON』第4話 籠城

理科室に辿り着いた如月とパイロン。 パイロンは背中を如月が蹴ったか否か、 答えを貰えずにモヤモヤしたままウロウロしていた。 如月はその姿を見て 『モヤモヤかウロウロかどっちかにして!どっちも同時になんてわがままよ。あ、でもさ、モヤモヤがゲラゲラだったらいいかも!ねぇねぇ、ウロウロしながらゲラゲラしてみてよ』 凄まじいキラートスをパイロンに上げた。 パイロンは少しムッとしつつも、 ウロウロしながらゲラゲラと笑って見せた。 『うん、いいねその元気、 パイロンは笑ってなく

小説『FLY ME TO THE MOON』第5話 羽鐘

羽鐘がその長い手足を利用してゆっくりと移動する。 右手を窓から離した瞬間、まさに今手を置いていた場所に、 恵美ゾンキーが噛み付きバキン!と音を立てた。 『あっぶねぇ~』 と言いながら恵美を見ると、口からダラダラと血を流して こちらに手を伸ばしている。その口にはもう歯がなかった、 今ので全部折れたのだろう。 羽鐘は上のパイプに手をかけてグッと握り、 右足で恵美の顔面を思い切り蹴った。 『ざまぁみろ』 そう言い放つと、次はゾンビ化した涼が顔を出した。 わざわざ体勢を立て

小説『FLY ME TO THE MOON』第6話 危機

羽鐘が瞼の向こう側に光を感じて目を開けた。 『朝?・・・みたいね・・・』 ふと横を見ると、パイロンがバールを構えてしゃがんでいた。 焦った羽鐘は慌てて 『ゾ・・ゾンなんとかじゃないから!ね!ね!しゃべりませんよね?ゾンなんとかはしゃべりませんよね?』 『そうみたいで申し訳ございません』 パイロンはバールを下ろして如月の肩をトントンと叩き、 『朝だよ』と優しく起こした。 『あー・・・目覚めの曲がないじゃないもうー』 と、2人には意味不明な事を呟きながら大きく伸びをした。

小説『FLY ME TO THE MOON』第7話 友達

何分経過しただろう・・・ もしかしたら何日も経過しているのかも… 『ゴホッ・・・・』 自分の咳で気が付いた如月。 隠れた棚のドアがボロボロになっており、 何とか動く身体をよじり、 右手で触れただけで崩れ落ちた。 音を立てないようにゆっくり体を動かし、 四つん這いのまま這い出て、顔を上げてみると、 真っ黒に焼け焦げて 口から煙を黙々を吐き出しているゾンキーが ゴロゴロと横たわっていた。 中には血液が煮えたぎっているように、 喉の奥でゴボゴボ言っているゾンキーもいた。 そ

小説『FLY ME TO THE MOON』第8話 死を呼ぶ声

『スティールってナニ部?』 返事がないのでもう一度聞いた如月。 ゾンキーの集団は2人に向かって集まってきた、答えないと答えるまで何千回でも聞きそうなので… 『合唱部です・・・』と答えた。 『へー!歌手目指してるとか?』と笑顔で質問を続けてきた、 この状況で。 少し恥ずかしかったけど、初めてできた友達だし、夢かたってもいいよね!と思った羽鐘は、 『メタルバンドのてっぺん目指してます!合唱部ではハイトーンボイスを売りにしてるけれど、本当はその・・・・デスボイスが得意

小説『FLY ME TO THE MOON』第9話 準備

『じゃぁ少し休もう、大変だけど念のため1時間置きに見張りを交代、パイロンからでお願い。パイロン、私、スティールの順で回す、いい?いいよね』 『それで大丈夫です、私よりあなたたちは30人くらい多く倒してますからね・・・私は一人をゾンキーになる前に殺し、はらわたを引っ張り出して、鍵を開けただけで申し訳ございません。』 『いあいあいあいあいあいあ・・・・』(意外に卑屈・・・)と ちょっと感じた羽鐘が必死にフォローした。 フォローはしたものの、大した言葉も出ず、羽鐘は気まずさ

小説『FLY ME TO THE MOON』第10話 脱出

3人が同時に靴紐を結ぶ。 飛び出した紐の先を縫うように靴紐に入れ込む。当然のことながら靴紐がほどけて転ぶとか、そんなイージーミスは防ぎたいからだ。 如月はパイプレンチを器用に使い、体育館に使用されている補強用の空洞の無い鉄の棒を取り外した。 『うひー!手が痛いよー』 そんな如月に対しパイロンはいつものように冷静に、冷酷に、冷血に、 『か弱く見えなくて申し訳ございません』と突っ込んだ。 『如月さん、それを武器にするんすか?』 『ええ、棒術もテコンドーで学んだのよ、

小説『FLY ME TO THE MOON』第11話 空を見上げて

まず向かうのはアルテミス。 羽鐘の家だ。 ブロックで表現すると、現在地からは約5ブロック先。 大体1ブロックを200mほどと換算して、1kmはある。 平均的なジョギングスピードだと6分程度。 さほど遠くはないが、今の状況だと無駄に時間がかかるので、 1kmの移動はかなり遠いと言える。 フォーメーションを崩し、マンションの陰に身を隠した3人。 『ここからが本番よ、いあ、むしろ応用編と言っていいわね、つまり、本番よ本番、いい?角もたくさんあるって事は死角もたくさんある。出会

小説『FLY ME TO THE MOON』第12話 家族

それは、車庫が痺れるほどの振動だった。 空気が揺れているかのような感覚で、車庫の小窓はビリビリと音をたて、屋根から細かい埃がバラバラと舞い散る。 床の小石も踊っているかのように細かく何度も跳ね上がった。 『チャーハンみたい・・・』 ボソッとつぶやいた如月の素直な表現に緊迫した場の空気が和んだ。小さな小窓をそっと覗くと、ゆっくりとゾンキーの群れが車へと向かって移動している。 『作戦通りだね、やるねパイロン!』 『パイロンさん流石っす!』 ガチャ! 『わっぷっ!』

小説『FLY ME TO THE MOON』第13話 ミントチョコ

2人は公園に辿り着いた。 周りを確認し、注意しながら園内に入っていった。 この公園は住宅街から離れた場所にあり、 春には桜が咲き乱れ、秋には紅葉を楽しめると言う、 自然を生かしたピクニックの目的地としても好まれる場所。 当然ながら遠足にも使われる、言わば市民の憩いの場所だった。 公園に足を踏み入れると如月は、パイロンが言っていた 幼少の頃のおにぎり事件をうっすら思い出してきた気がした。 それでも負けず嫌いの彼女は『わかんない』と言い、歩を進めた。 憩いの場だ

小説『FLY ME TO THE MOON』第14話 All I Want

『安全な場所を探さなければ』 『羽鐘ガールのトーキング通りだな、この車庫は逃げ場がないからノットランナウェイ』 『そうね、外のファッキンベイベーも少なくなったし』 如月、パイロンと別れた羽鐘親子は車庫で決意を固めていた。 『いい、パピー、マーム、奴らの名前はゾンキーと言うらしいの、そのゾンキーは頭を破壊すると動きは止まる、逆に言うと頭を壊さない限りバラバラにしても噛みつくのをやめないの、絶対に油断したらだめっすよ』 『ワオ!ファンキーなヒッピーだな、最高にパンクだぜ