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新時代の幕開け


時代の裂け目


 中世と近現代には,大きな裂け目があります。例えば,時間について。時間通りに行動することは,私たち現代人にとって当たり前です。しかし中世人は,そもそも定刻通りに生活する習慣がありませんでした。なぜなら,労働者を時間によって管理する企業文化が存在しなかったからです。また,人権について。私たち現代人は,すべての人が平等であることを当然と考えています。しかし中世人は,そもそも基本的人権という概念がなく,不平等が当たり前の世界でした。領主と農奴に分かれ,貴族と奴隷に分かれ,固定化された身分社会が当然だったのです。いずれにせよ,中世と近現代は,全く別世界なのです。
 では,中世と近現代の間に,どんな出来事があったのでしょうか?宗教改革とルネサンスと大航海時代です。しかし,これら三つの出来事を誘発した事件こそ,グーテンベルクの印刷革命でした。
 中世において,知識は手書き写本によって伝達されていました。しかし,グーテンベルクの活版印刷により,本の筆写が自動化され,大量作成が可能になったのです。


グーテンベルクの活版印刷


すなわち,グーテンベルクの印刷革命により,知識の伝達が劇的に効率化され,新しい知識の普及が人々の価値観を変えたのです。聖書の流布がルターの宗教改革を生み,古代ギリシャ・ローマの文献がルネサンスを生み,地理学書の普及が大航海時代を生んだのです。

第二印刷革命


 私たちは今,時代の裂け目に生きています。なぜなら,すでに第二印刷革命が起こり,知識が再定義されつつあるからです。ビル・ゲイツ(マイクロソフトの創業者)が作り上げたMS-DOSとWindowsは,コンピュータを一般民衆に普及させました。


ビル・ゲイツ


パソコンの普及により,私たちの生活は劇的に効率化されました。ビル・ゲイツはまさしく,現代のグーテンベルクと言えるでしょう。
 また,スティーブ・ジョブズ(アップルの創業者)は,コンピュータを小型化し,スマートフォンとして持ち運べるようにしました。


スティーブ・ジョブズ


大企業から家庭へ,家庭からポケットへ。コンピュータはもはや,人々の生活必需品となりました。スティーブ・ジョブズはまさしく,グーテンベルクの活版印刷を改良して小型本を生み出した現代のアルドゥス・ピウス・マヌティウス(書式の発明者でもある)と言えるでしょう。

新・大航海時代


 現代の印刷革命により,知識そのものが再定義され,知識の獲得が効率化し,大きな社会的変動を起こしつつあります。第一に,大航海時代の始まりです。新天地を求めて,様々な冒険家が社会的変革に挑んでいます。スペースXの創業者であるイーロン・マスクは,火星移住計画のため,着々と準備を進めています。大風呂敷(壮大なビジョン)を広げて新大陸を目指すイーロン・マスクは,さながら現代のコロンブスのようです。


イーロン・マスク


しかし,イーロン・マスクの目指す新大陸は,未来の地球でもあります。彼はテスラ社を通して,クリーンエネルギーによる持続可能な社会を造ろうとしています。EV(電気自動車)やFSD(自動運転)は,壮大なビジョンの一里塚にすぎません。
 また,アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスもまた,ブルーオリジン社を通して宇宙飛行計画を実行しつつあります。ジェフ・ベゾス最大の功績は,アマゾンによるEコマース(電子商取引)の誕生でしょう。


ジェフ・ベゾス


Eコマースの普及により,私たちは欲しいものをいつでも手に入れることができます。より早く,より安く,より多くのものを,クリック一つで手に入れることができます。これはまさしく流通革命であり,インド航路を発見したヴァスコ・ダ・ガマの流通革命に匹敵すると,私は考えています。

現代のルネサンス


 ルネサンスと聞けば,皆さんは何を想像するでしょうか?絵画でしょうか?音楽でしょうか?人文主義でしょうか?ルネサンスの本質は,「知の革命」です。中世はキリスト教絶対主義の時代でした。つまり,異教の文物は基本的に排除されていたのです。こうした閉塞的社会に,古代ギリシャ・ローマの文献が流入しました。キリスト教は神中心の世界観ですが,ギリシャ・ローマは人間中心の世界観です。当時の中世人は驚いたことでしょう。全く異質な価値観が目の前に広がったのですから。彼らの想像力は大いに刺激され,古代(中世人にとっては未来社会)に対する無限の知識欲が爆発しました。その結果として,創造力ある天才が多く輩出したのです。
 現代も同様のことが起こりつつあります。AI革命です。人口知能の発達により,仕事も知識も再定義されるでしょう。規則的な仕事は,AIで代替可能です。従来通りの学校教育は陳腐化し,知識の伝授はAIに置き換わるはずです。このAI革命を主導している人物が,エヌヴィディアの創業者ジェンスン・ファンです。


ジェンスン・ファン


半導体設計企業であるエヌヴィディアは,人工知能に必要なハード(GPU/画像処理用の高性能半導体)とソフト(CUDA/AIアプリケーションを作動させるOS)を提供し,その上さらに,「学習と推論」を可能にしたソフトウェアを提供しています。AI革命を主導するジェンスン・ファンは,さしずめ教科書の発明により知的革命を先導したルネサンス人ヨハネス・アモス・コメニウスに比肩されます。教科書の普及により,一対一の教育が一対多の学校教育に置き換わりました。AIの普及により,模倣的教育から創造的教育に置き換わるでありましょう。

第二宗教革命


 第二印刷革命により,現代版・大航海時代とルネサンスは起こりつつあります。しかし,一番大事な宗教改革が起こっていません。ルターの宗教改革こそ,人々の根本的価値観を変革し,生き方そのものを変え,世界形成の原動力となりました(新世界を形成した国々がオランダ・イギリス・アメリカなどプロテスタント諸国であった事実は,一考の余地あり)。知識の再定義により世界観が激変しつつある今,人類は再び,宗教的意識を大転換させねばなりません。我々は今こそ,第二宗教革命に着手せねばなりません。
 ルターの宗教改革は,中途で挫折しました。この挫折が,近現代の弊害を生んだといっても過言ではありません。ルターの犯した間違いとは何か?二つあります。第一に,カトリック式の聖人崇拝を退けながら,書物(聖書)崇拝に陥ってしまったこと。聖書は本です。本は研究すべきであって,崇拝すべきではありません。書物崇拝もまた,一種の偶像崇拝といえるでしょう。第二に,カトリック教会の権威を否定しつつ,その代わりに,国家権力を後ろ盾にしました。イエスは,一切の権力を否定しました。教会権力も国家権力も同じ穴のムジナです。そして,ルターの書物崇拝と国家依存により,「他宗教・他文化の排斥」という西欧諸国の害悪が生まれたのです。
 第二宗教革命は,第一宗教革命の欠点を克服しなければなりません。文字から霊(精神)へ,国家権力から神の国(新しい共同体)へ。私たちは,ルターでもアウグスティヌスでもパウロでもなく,イエス・キリスト御自身に学び,真の福音を復興せねばなりません。そして,キリストの福音の復興は,キリスト教のような排他的一神教ではなく,すべての宗教を包含する統合的一神教として,新文明の土台となるはずです。
 

以下は参考書籍です。


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