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スベリ・イグザンプル

 就活中のエピソードである。
 私は某広告代理店にESが通ってしまい、順当に二次面接まで進んでしまった。
1時間半におよぶ激ロング二次面接を終え、社員が部屋を退出し、入れ替わりで採用担当者が入室してきた。
 コイツは笑顔がとても胡散臭い。「頭の切れるイケイケ会社員ですが何か?」と顔が自称している。こういう顔の人は信用するなって、じいちゃんが言ってた。
 今後の流れについて話され、適当に聞いていたら、コイツがやたら「例えたがる」ことに気がついた。

 「新入社員にはまず、一通り仕事を覚えてもらいますからね~。ほら、新入社員は小さいモーター、社員は大きいモーターって思ってもらえればわかりやすいと思うんですが、やっぱ馬力が違うわけじゃないですか~、、、(以下省略)」

いや、例えなくたってそれくらい分かるけどな、、、。まぁ、はいはい、モーターね。うんうん。
 とりあえず聞き流し、話は続く。

 「うちってやっぱりコミュニケーションの商売なので、話好きな人とか、話の上手な人って大事で~。鹿さんは相手にお話のテンポを合わせるのがお上手ですよね~。ほら、まるで曲によってメトロノームのテンポを変えるみたいな~。」

テンポをテンポで例えてどうすんねん。例えになってるのか、それは。
 とりあえず「はぁ、どうも~」と返し、話は続く。

 「ちなみに、鹿さんは今のところ、弊社への志望度はどれくらいですか?まあやっぱり就活って、企業と学生のマッチ度が大事じゃないですか。弊社を第一志望にしてくれている学生もいるのでね。」

次にどんな例えがくるのか待っている自分がいた。採用担当者は話を続ける。

「ほら、よく就活はお見合いに例えられますよね。鹿さんの重視する条件と弊社がマッチしていることが大事なので~。実際のところどうでしょう?」

私の答えはただ一つ。「会社は悪くないがこんな胡散臭い奴と働きたくない。」あと、就活をお見合いで例える人大概なんか信用できない。

「そうですね、、、。例えるならこれは消化試合でしょうか。」

面談を終了させた。

ただコイツに出会って得た学びがある。

よく頭のいい人は「抽象化」と「具体化」がうまい、と言われるが、それは頭が良さの一つのあり方であって、やたらと例えを出したら頭が良くなるということではない。そう、必要十分条件ではない。下手な例えを出してスベるくらいなら黙った方がよっぽどハッタリとして有効だろう。

今日もどこかで胡散臭い大人が、就活生相手にハッタリをかましているんだろう。就活生、ビビるな。きっと奴らは仕事でそうやってるんだ。

そう考えると、あの採用担当はハッタリが下手ということで、実はウソをつけない良い人なんじゃないかという気がしてくる。まあ生きていたら一人や二人、なんか見てて腹立つ顔ってある。別に悪い人じゃないけれど。お見合いで言うならばまさに、「スペックは悪くないが顔が生理的に無理」ってやつ。あ、これは例えでもなんでもなくただの悪口だ。

合掌。

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