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中国版ロスジェネの行く先とは

こんな記事を見つけました。

2023年に中国で大学を卒業した社会人の初任給はいくらだろうか。中国の民間シンクタンクが最近発表した報告によると、2023年卒の大学学部生の平均月収は5990元(約12万円)、専門学生は4595元(約9万1241円)であり、2022年卒に比べてそれぞれ3%、2%増加した。

報告によると、学部生の60%近く、専門学生の80%以上の初任給は6000元(約12万円)未満だった。

卒業後半年で平均月収1万元(約20万円)を超えた人の割合はわずか6.9%だった。

上掲記事より

これを読者のみなさまはどう見るでしょうか。

個人的には「ずいぶん上がったけど、それ以上に生活コストが上がっているからなあ」というのが感想です。

僕が中国に来て間もない頃、日系企業に勤めていたとき、そこの会社の給料は普通の大卒事務員でいいとこ4,000元、バリバリ働いて優秀な営業部員(20代後半)でやっと8,000元とかでした。レートも今より円高だったので、日本円に直すと10万円に満たないか、ようやく10万円を超えてくるかという程度だったのです。

それが今や、大卒初任給の平均が6,000元に届こうという金額になりました。街に貼られている求人なんかを見ても、だいたいこの基準(人寄せのために、1万元以上!とおおげさな条件が書かれていることもありますが)で人を集めようとしています。

ですが、それで中国の人の暮らしが良くなったかといえば、まったくそんなことはありません。給料と同じくらいのペースで物価が上がってしまいましたし、中国での生活のキーとなる不動産の価格はそれを超えるペースで上がり続け、とても庶民に手の届くものではなくなっています。

いま家を持っている人というのは、いまから数年前(2017年くらいまでかな?)までの間、不動産価格が登り調子のときにうまく住宅を購入できた人です。以前はまだしも上昇する給料と不動産価格のバランスが取れていたし、買った不動産の値段が上がればそれをテコにさらにいいマンションを買ったりできました。しかし、これから市場に参入する若者は、頭金からして払うのも難しい状況です。

またさらに若者にとって救いがないのが、中国の企業ではよほど優秀な成績を収めるか、あるいはよほど上司なり老板(社長あるいはオーナー)に気に入られるようなことでもない限りは、なかなか給料が上がりません。入社時の給料=その後もずっと同じ給料、というケースが非常に多いです。

だから給料を上げたり待遇を良くしようとするには転職するしかないのですが、そもそも若者の失業率が20%もある中で転職というのもなかなか厳しい話です。八方塞がりです。

かくして中国の若者は、あらゆる面で元気が出ない状況に置かれています。

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若者にとってさらに元気が出ないのは、現在の中国が明らかにデフレ傾向にあるこです。

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