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【世界の建築紹介01】ユニテ・ダビタシオン 『西洋近現代』


Photo By A・Savin /CC BYーSA 4.0

1. 建築概要


・設計︰ル・コルビュジエ
・所在地︰フランス・マルセイユ
・竣工︰1952年
・構造︰RC造
・階数︰地上18階
・用途︰高層集合住宅、複合施設

Create By Alberto Contreras González/CC BYーSA 4.0

    18階建て337戸を含む全体幅約135.5m、奥行約24.5m、高さ約56mの直方体で、7本の中通路によって住戸へのアクセスを可能する中廊下式を採用している。住戸幅は約3.66mのメゾネットタイプの住戸が多用されている。

2. 建築家について

1955年来日時のコルビュジエ c朝日新聞

              ル・コルビュジエ (Le Corbusier)
              (1887年ー1965年) スイス生まれ

    伝統的な石積みが主流だった第一次世界大戦中に復興を考え、スラブ・柱・階段のみの「メゾン・ドミノ」を考案する。

    1920年代の数々の住宅建築の名作で「近代建築の五原則」を追求し、代表作サヴォア邸で完結する。

サヴォア邸
Photo By Omar Bárcena/CC BY 2.0

【近代建築の五原則】
・「ピロティ」
・「自由な平面」
・「自由な立面」
・「独立骨組みによる水平連続窓」
・「屋上庭園」

    晩年は、それまで唱えてきた住宅と都市に関する理論をユニテ・ダビタシオンにて集結。 彼の建築に対する研究の集大成とも言える。

    現在、17作品が世界遺産となっており、フランス/マルセイユにあるユニテ・ダビタシオンもその1つ。今日においても多大な影響を与え続ける20世紀の巨匠。

3. ユニテ・ダビタシオンを1文で

『ほぼ全ての生活が建物内で完結する現代集合住宅の元祖』

    都市の中に垂直の都市を作るべきという考えに基づいた、現代の集合住宅設計においても影響を与える。

4. 建築的特徴について

    主に6つの建築的特徴が挙げられる。

① 浮遊感を感じられるピロティ空間

Photo By yisris/CC BY 2.0

    1階はピロティで、丸みのある太い柱によって支えられ浮遊感のある建物となっている。また、この柱の内部は空洞となっており、様々な設備配管を収納しているため、構造体であるだけでなく設備シャフトとしても機能している。

② メゾネットタイプの住戸

断面イメージ図

    居住スペースの基本は、2つのメゾネットタイプの住戸が中廊下を中心にL字型で囲うように構成されている。

    住棟が完璧に南北軸となっているため、全ての住戸が東西方向に広く開口部を持つことを可能とし、住戸間の採光や通風の格差を無くしている。

    スラブは3層ごとに主構造を担う連続スラブとなっていて、この3フロアで1セットとし、上下に積み重ねっている。

    このプランがル・コルビュジエの真骨頂とも言える効率的で無駄を感じられない革新的な設計となっている。

③ 「モデュロール」を基にしたスケール

Create By Max Bill, Zumikon/CC BY 2.0

    身長183cmの人体を基準にしたモデュロールで内部空間や家具を設計することで、最小限のスペースで機能的かつ居心地の良い空間となっている。

※モデュロール︰「フランス語で寸法を意味するモデュール(module)と黄金比(section d' or)を組み合わせた造語で、ル・コルビュジエが第二次世界大戦中に考案した建築の基準寸法システム」

引用︰現代美術用語辞典ver2.0ーアートスケープ

④ 中層階、最上階にある公共施設

Photo By yisris/CC BY 2.0

    中層階にレストランやカフェ、商店などの商業エリアから、郵便局や不動産屋、事務所などのオフィスエリア、ホテルエリアの3つに分かれている。住民から来訪者まで幅広く利用可能である。
    最上階の一部には保育園となっており、4~6歳の子供が入園している。

⑤ 都市公園のような屋上庭園

Photo By FORES MUNDI/BB CY 2.0

    屋上は、集会室、集会などを行うステージ、スポーツジム、プール、子供の遊び場、屋上の周囲にはランニング等できるトラックなど、都市公園のような計画がされていて、住民の憩いの場となっている。

Photo By FORES MUNDI/BB CY 2.0

    また、豪華客船をモチーフとしており、建物の水平・垂直に統一されたものとは一変し、巨大な船の甲板上を想起させるとともに、曲線美のモダンな仕上がりとなっている。

⑥ 多色装飾が施されているファサード

Photo By Yuko Kiyonaga/BB CY 2.0

  各住戸のバルコニーにある袖壁に赤、青、黄、緑、茶といった原色の配色がされていて、現在は住民が白で塗り潰しているの含めて6色が施されている。
    これが建物全体のファサードに鮮やかな印象を与えている。

5. 建築模型写真

    ちなみに、私は専門学校の卒業制作にてユニテ・ダビタシオンの(S=1/100)建築模型を1人で作りました。制作期間は調査も含めておよそ3ヶ月です。

スダディ模型最終案(S=1/200)

    高さ方向にピロティから屋上まで試作として組み上げました。スタディ模型を複数作成し、建物の構造や計画内容を掘り下げ、本体模型につながる良い検討だったと思います。

本体模型(完成度約45%)

    本体の1/2のボリュームが積み上がり、ピロティから屋上までの高さも出ることで、迫力が一気に増したと思います。
    建物の断面が見えるのが、ユニテ・ダビタシオンの特徴を伝えられる良い表現になっていると感じます。

本体模型(完成度100%)

    書籍やネット上に公開されているあらゆる写真よりも、模型以外でここまで全体の立面が見られることが無かったため、達成感と同時に良い写真を残せたと思います。

断面の様子
アイレベルからの様子
中層階内部からの様子

6. 最後に

    いずれはこの地を訪れ、現在のユニテ・ダビタシオンのホテルに泊まりたいと思います。世界遺産に泊まれるなんて貴重な体験はなかなかできるものでは無いですからね。

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