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「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~パート2」 - 復讐でありながら極まるエンタメ

★★★★+

めちゃめちゃに気になるところで終わったパート1からの後編(シーズン2というより後半8話という感じですね)。結論から言えば消化不良なしの勧善懲悪エンド(復讐自体のアリナシは置いておいて)といった形で、最後まで観てこそなドラマになっていると思います。前半こそ作家キム・ウンスクの新境地として観ていましたが、後半にかけて感じたのはやはりエンタメを知り尽くした人なのだということ。観終わって残るのは重々しい課題感ではなく爽快な「やってやった」感でした。

ドンウン(ソン・ヘギョ)の部屋に侵入したヨンジン(イム・ジヨン)。なぜかやってきた夫のドヨン(チョン・ソンイル)に「死ぬほど人をいじめたことがあるか」と尋ねられ、悪態をついて部屋を後にします。しかしドンウンが自分の家の目の前に住み、自分のことを調べ尽くしていると知ったことでヨンジンはドンウンの明確な復讐心を把握し、反撃を考えます。

自分としては何度も与えているチャンスを踏みにじってくるヨンジンに、ドンウンもまた徹底的に復讐を果たす誓いを新たに。一方でヨジョン(イ・ドヒョン)は母親のサンイム(キム・ジョンヨン)に、好きな人の復讐を手伝いたい気持ちを伝えます。そしてサンイムはそんな息子を認めてあげるのです。

ヨンジンは反撃のカードとなるドンウンの母・ミヒ(パク・チア)に近づきます。当然のように娘より金を選ぶミヒは、ドンウンの働く学校で保護者を巻き込む騒動を起こし…ドンウンの怒りは次第に頂点へと達していくことに。

いじめ側の人間は本当にみんなブレずに自己中心的で、同じサイドにいようと平気で切り捨て合うので、ドンウンの攻撃を喰らう姿は観ていて非常に痛快です。一方でドンウンに味方する存在が一定数いることがこのドラマを観ていて得られる癒し。ヨジョンはもちろん、ドヨンは正常な人間の感情を持ち合わせているので、自分が選んだ妻との間で葛藤はあれど、ドンウンに寄り添う気持ちを見せてくれます。

この作品で面白いのは、子に対する親の姿勢にも様々な色合いを見せてくれるところ。それこそが本当のテーマなのかなと感じました。ドンウンの母であるミヒは毒親なんかの比じゃない普通にヤバい親です。娘を道具としか見ておらず、それでいて母親として大事にすることを要求してくる救いようのない存在。それと比べたとき、いじめ側にいたはずのジェジュンは自分の娘に対しては損得抜きにとことん父性を発揮していて、ちょっと良い人なのかと錯覚するほど。ジェジュンと対立不可避となるドヨンは、血の繋がりがあろうとなかろうとただただ娘を慈しめる人。子供を守ろうとする親は強い、と感じさせられます。ドヨンと娘のイェソル(実際はジェジュンの娘)のシーンで、思わず涙したりもしました。

ヨンジンも娘を大事にはしているのですが、自分の幸せ(に見える生活)がどうしても先に来てしまうのでしょう。最後の彼女は逆に娘への愛情くらいしか残っていないような、そんなところまで堕ちていきます。ヨンジン自身も見栄がすべての母親に振り回され生きてきたので、母親も同様に大きなツケを払うことになりますが。

ドンウンの協力者カン・ヒョンナム(ヨム・ヘラン)は娘を守ることが人生のすべてになっている人。そのために夫のDVから逃れたいのです。ですが、ヒョンナムの良さは何より明るい性格で、娘もまたどんな場面でも笑顔を忘れず前向き。この親子は本当に見ていて気持ちがよかったです。

もっとも深い愛で子を見守っているのはヨジョンの母・サンイムかもしれません。息子の心を理解し、応援できる母。そして息子の窮地となればドンウンを必死で探しもする。暗い過去を経てのことなのですが、理想的な母として存在しています。

極端な例が多いですが、このあらゆる対比の中で、親子というものをたくさん考えさせられるドラマでした。ドンウンとヨジョンのロマンスももちろんあるので(後日イ・ドヒョンとイム・ジヨンの熱愛が報じられたのには驚きましたが)、全体通して見るとやっぱり社会派というよりエンタメとしての要素がこれでもかと詰め込まれた贅沢な作品。私はそれが好きでした。

ソン・ヘギョにとっては間違いなく新境地なのだと思います。どこまで行っても美しい人ではありますが、それでも人生の苦難をすべて吸収したような凄み、疲れや年齢をあえて滲み出す雰囲気、異性に対して女性としてのアプローチをまったくしない役柄を最後まで貫き、彼女のこれからのキャリアがまた楽しみになった気がします。


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