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「蜜蜂と遠雷」を観た

恩田睦美氏の原作は出た時にすぐ購入して読んでいたので、これの実写化を観るのをためらったまま月日が流れてしまった。
興味あるのは、4人のピアニストたちの演奏を担当するピアニスト。調べたら素晴らしい人たちなので「時間を見つけてどこかで観よう」とは思っていた。
あ、でもこれから述べるのは、この映画のあれこれとは違うので、すみません。
 
今年4月末に私の主催するピアノ発表会があった。
子供は小学生5、6年生、中学生が一人ずつ。
あとの10人ちょっとが大学生以上の成人の編成である。
今回はクラシックでは無いプロのミュージシャンも混ざった。

小学生は一番の子からよく弾く。コンクール全国大会に進むのもいて、会場全体はコンサートムード。
4番からの大学生たちは、幼少期から継続している生徒。それ以外の大人も幼少期に教え、いったん離れて就職し、また戻って来てレッスン生など。
大人になって初めてピアノを始めたレッスン生もすでに10年以上継続し音楽性豊かなステキな演奏をしてくれた。
発表会で集まる面々はお互い知ったもの同士で、連帯感もあり、よく聞き合っている。
 
さて。
音楽ものの映画やドラマは多く、「蜜蜂と遠雷」のようなコンクールものは人気が高い。
スポーツものと同じく、日々の鍛錬、恩師やライバルとの人間関係、葛藤、ステージ上での緊張など、見どころ満載であり、卓越した技術や音楽性に触れるとそれだけでも感動する。
幼い頃から素晴らしい環境で一流の教師から英才教育を受けてきたピアニスト、あるいは生まれながらに煌めく感性を持つ天才ピアニスト、仕事をしながら血の滲むような練習をして上り詰めてきたピアニスト、幼い時天才少女と騒がれながら弾けなくなり、どうしても諦めきれず再挑戦のピアニスト。
どの人もドラマになり、蜜蜂と遠雷では、それぞれが一つの映画の中で高めあい、葛藤しつつの内容になっていて引き込まれる。コンクールで賞を獲ることで将来が約束されるんだろうな、落ちるのは辛いな、と感情移入しつつ観る。

演奏家として生きて行くためというより、自分試しでコンクール出て、自分の今後を決めて行く人もいると思うが、そういうのはちょっと置いておく。出る人ほとんどみんな必死だから、自分試しってなんだよと思っちゃう。

ドラマでコンクールものを見るとレッスン生はモチベーションが上がり、やりたい気持ちが盛り上がるので良いのだが、そうは言っても私のレッスンする大人たちは誰もコンクールを受けないし、小学生もコンクールには出てもピアノを仕事にする意思はなさそうだ。
そもそも音楽は人と競い合うものではないし、ほとんどのうちに来るレッスン生は人と比べることなんか考えてないと思う。自分が弾きたい曲とひたすら向き合って練習している。

とはいえ、何も目的がないと、なんとなくずるずるレッスンに来なくなると思うし、1年にいっぺんくらいはスタインウェイのフルコンで、響くホールで弾かせたいではないか!
どうせ弾くなら最高の演奏ができたら嬉しいし、

ここで、蜜蜂と遠雷。
ストーリーはもちろん優れている。
映画を見てドキドキするシーンは沢山あるけど、
特にそうそう、と思うのは、舞台袖からステージ上のピアノまでの距離感。
舞台袖から光輝く舞台に進み客席を右に見ながら静かにピアノに歩む寄る瞬間は。
よく知っているし、何度も何度も悪夢に出るあれだ。
舞台袖で、私は震えている。
だって何を弾いたらいいか分からず、弾ける曲がない。客席は満席だ。
ドレス姿の私の横に亡き恩師が近づいて来る。
怒った顔だ。耳元で言う、
「弾くのよ何でもいいから!ブルグミュラーでいいから弾きなさい!」
ブルグミュラーって先生!と思うが言い返せず
私は覚悟を決めて、明るい舞台を歩いて……
大抵ここで目は覚める。
はー、よかった夢だった
安堵感でもう一度寝そうになる。
そんな夢を思い出しながら、映画を観た。

映画の中の女性ピアニストの葛藤は心に響いてきたし、うんうん、そうだよねと協調する。

でも〜
でもね
心をグイッと掴まれるのはそこじゃなくて、プロコフィエフのコンチェルト!

泣きました!かっこよくて。
ああ、プロコってなんてカッコいいんだろう!

そう、ストーリーと関係なく泣けるんだ。
ずるいな音楽って、と思う。私はシナリオの勉強もしているから、掴み所、状況設定やキャラクター、セリフの重要性など、色々とぐちゃぐちゃと考えるんだけど、音楽のドラマ映画ってある意味、よくあるストーリー、なんちゃってキャラでも泣いちゃうことがよくあって(一般論です。この映画はちゃんと素晴らしかった!俳優陣も良かった)
、それは音楽が直接来ちゃうからなんです。音楽がよければ。

一音で世界を変えちゃうんだよね。
などと思うのでした。

よーし音楽ドラマ作ろ!
その前にピアノ練習しないと。
伴奏合わせは近い。録音するって言われたんだ。
それをドラマにしちゃおうか。







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