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谷間の世代と誰が決めた?

見下されたら黙ってはいられない。実力でもって見返してやる。


出来損ない、谷間の世代。
高校時代、私たちの学年の新体操部は顧問にずっとそう呼ばれてきた。
その言葉を聞くたびに私は酷く傷ついた。
確かに先輩方に比べると覚えが悪かったり、いたずら好きが多かったりするのかもしれない。それは普段の練習や休み時間の遊び方からもなんとなく察していた。
しかし、それを面と向かって怒鳴られると流石に気分が悪くなった。練習が上手くないのは顧問の指導がよくないせいもあるし、素行の悪さは私には関係がないからだ。

そんな居心地の悪い思いをいつまで続けなければならないのか。こんな思いをしてまで続ける必要があるのか。
そう思い、私は友人に相談した。
友人の答えは簡潔だった。その顧問の鼻を明かしてやればいい、と。
他の人間のことは私にはどうにもできない。ならば、わたしだけでも新体操の技量を上げて、顧問には見る目がなかったのだ、とわらってやるのだ。
それからは動画を参考にひたすら真似をして学んだ。
次第に同学年の中でも私の演技は目立って上達していき、半年が経つ頃にはハッキリと学年を問わず上位に位置するようになった。
不思議なもので、私が真剣に部活に取り組むにつれて、同学年の仲間も真摯に練習に取り組むようになった。時に教えあい、時に励まし合い、顧問を見返すと目的のために力を尽くした。

結果として、年末の公開演技において、私たちは我ながら見事な結果を修めることになった。その時には、もう先輩も練習に不真面目だった同学年も一緒になって抱き合って涙を流した。こんな結果を残せるなんて嬉しい。一緒に演技ができて楽しい。これがこのメンバーで最後になるなんて悲しい。涙の理由はそれぞれだったが、それだけ気持ちのこもった演技ができたということだ。
この学年は今年の大会のために存在する。
顧問は私たちの様子を見て、弛んでいると怒鳴った。
その頃には顧問の言うことが絶対だと思っている人は居なくなっていた。
しかし、怒鳴られると思わず身がすくむものだ。
そこで私はみんなを代表して、一歩、前にでた。
そして思いっきり舌を出して笑ってやったのだ。
「ザマアミロ!」
顧問の顔は瞬時に赤くなり、私たちはおおいに笑った。

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