【須田亜香里さんの軌跡】◆M21 勝負に挑む


 須田さんは,2017年から放送が開始されたテレビ朝日のドラマ「豆腐プロレス」で,女子高校生プロレスラーの「オクトパス須田」という役を演じることになりました。アイドルとしては妙なリングネームですが,須田さんの軟体芸に引っかけたリングネームだったのでしょう。

 しかし,オクトパス須田,なかなかのレスラーでした。

 vsコマネチ湯本戦では,空中戦を演じるコマネチ湯本(AKB48・湯本亜実さん)に対して身体の柔らかさで攻撃をかわすシーンを見せました。

 また,vsパッパラー木崎(AKB48・木崎ゆりあさん)戦では,ダイヤル固め(相手を両足で挟みながらリング上を反時計回りに転がる技。豊田真奈美の得意技),河津落とし(相手と横並びになっている状態で後ろに倒れ込み、相手の背中や後頭部を打ちつける技。ジャイアント馬場の得意技),グラウンド卍固め(別名・オクトパスホールドと呼ばれる固め技。アントニオ猪木の得意技),ストンピング(相手を踏みつけるように蹴る技。長州力の得意技),そしてシャイニングウィザード(跳び膝蹴りの一種。武藤敬司の得意技)と,次々と大技を繰り出し,プロレスに詳しいファンを唸らせました。

 実は,その陰には,須田さんの「難易度の高い技をこれでもかと練習」、「技ではない動き…例えばリングを降りるという動きなどなど、どうしたらカッコいいですか?という数々の質問をプロレス指導の方にする」、といった努力があったのです。【1a】

 そして,須田さんは,2017年3月24日,48グループ初と言われる自己啓発本,「コンプレックス力~なぜ,逆境から這い上がれたのか?」を出版しました【1】。
 
 この本,アイドルを著者とする本としては異例です。カラーページが全くなく,須田さんの写真はモノクロの4枚だけ。それもステージで輝いている姿ではなく,ファンには見せないシーンを撮影したものばかり。文章の力だけで勝負する本になっています。

 この本で初めて明かされる事実がたくさんあります。松井玲奈さんや高柳明音さんを初めとするSKEメンバーとの心の交流,須田さんがある意外なタイミングで卒業を真剣に考えていたこと,そして,何度も襲いかかる試練に打ちのめされながら諦めずに一歩一歩また這い上がってきたこと・・・。

 須田さんは,SKE加入後研究生公演のセンターを務め,チームSへの昇格も比較的早かったのですが,そのことをとらえて「恵まれている」という人がいます。
 そこだけ切り取ればそのとおりです。けれども,須田さんのアイドル人生はそんな単純なものではありませんでした。少しよじ登ってはすぐにたたき落とされることの連続でした。

 それでも須田さんは,たたき落とされたところから,何度も這い上がってきました。それは,根性という精神論だけでできたことではなく,須田さんがファンやスタッフとの出会いを大切にし,その出会いから学びつづけていた成果だと思います。

 では,どのように学んできたか。
 「コンプレックス力」には,そのノウハウが余すところなく紹介されています。

 この本の発売を記念して,トークショーとサイン本のお渡し会が東京と名古屋の書店で開催されましたが,このイベントで,須田さんは,サイン本をただ渡すのではなく,ファンの名前をその場で書いて,感謝の気持ちを伝えようとしました。

 そして,「コンプレックス力」発売とほぼ同時に,須田さんは,その年,2017年の選抜総選挙への立候補を改めて宣言しました。

 握手会で須田さんと直接会話を交わしたあるファンによると,須田さんは,「5位を目指したい」とそのファンに語った後,「「去年みんなが無理してやってくれてたことは知ってる」「また無理をさせちゃうかもしれない」と涙を流しながら語ってくれました。」とのことです。

 いろいろな葛藤の中で選んだ決意。
 須田さんは,2017年も,全身全霊をかけて勝負に挑んだのです。

(「MC03 須田さんの写真集」に続く)

<ソースノート>
【1a】「豆腐プロレス」でプロレスを指導したミラノコレクションA.Tさんのツィート
https://twitter.com/milano_c_at/status/857003302545899520
【1】須田亜香里「コンプレックス力~なぜ,逆境から這い上がれたのか?」産経新聞出版

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