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同じ過ちを繰り返さないために

私たちが在籍しているソフトウェア開発業というのは、実は他の業界に比べて圧倒的に失敗率が高いことで有名です。

製造業でも、飲食業でも、建築業でも、その「半数が失敗です」なんて話はまず聞きません。というかそんなことになってたら遠からず破産していると思います。

ですが、ソフトウェア開発業ではこれが往々にしてまかり通ります。

そして、この事実に対して経営者は「どーすんだ」「なんとかしろ」というだけで結局、問題の本質を改善することなく何年も何十年もずっと繰り返されてきました(そうでなければ今頃多くの失敗は撲滅しているはずです)。

それでも倒産している風に見えないのは、やはりプロジェクト単位で実施される活動にも大小さまざまあり、それなりに収益を上げているプロジェクトも存在しているから…ということなのでしょう。


そもそも、プロジェクト活動において失敗する原因はというと

と、色々な企業やシンクタンクみたいなところでも発表されていますが、こうして見てみると何年も何年も変わらずに失敗の要因が偏り続けていることがわかります。多少の変動はあれど上位層はほとんど似通ったようなものです。そしてこうした要因の傾向は、少なくとも私が業界に入った1996年から何一つ変わっていません。

ざっくり言ってしまうと

 半分は要件定義(や基本設計)
 残りの半分はマネジメント

です(基本設計でも機能要件を確定するために多くの調整やレビュー等を行っているはず)。ここでいうマネジメントはプロジェクトマネージャーの力量という話ではなく「どうやってプロジェクトを進めることが正しいのか」が明確でないがために、組織的活動になり切れていないことの方がメインではないかと個人的には思っています。

さらに抽象化してみると、そのほとんどは『コミュニケーション』のとり方に問題があることがわかります。

これまでもお伝えしてきたように、コミュニケーションを「話す」「聞く」「書く」「読む」といったただの手段のことを指すものではなく

 ・情報が齟齬なく伝達すること(伝えるではなく伝わる)
 ・伝達された情報を相互に共有すること
 ・共有された情報が相互に必要な期間維持されること

と定義した場合、それが要件定義上の話であっても、マネジメント上の話であっても本質に変わりはありません。大抵の場合は情報の整合性を確認しないで、その場にいる人たちの主観的な考えや発想を優先しているから起きているにすぎないのです。

そして、これらの失敗要因についてですが、実はビックリすることにランキング上位に位置する失敗要因の大半は20年近く前から何一つ変わっていないというのです。

これがどういうことを意味するか分かりますか?

これ、要するにこの業界って、

 20年間延々と同じ失敗を繰り返し続けてきた
 成長する気が無いバカの集まり

ということです。まぁ私もそんな業界に25年以上居続けているわけなんですが。

もちろん個々人を見れば「そんなことない」という人は多いと思います。私自身がそうですけど、一度起こした失敗を二度も三度も繰り返そうと思いませんし実際繰り返していません。普通はそうです。

ですが、個人レベルプロジェクトレベルではどんどん改善しているはずなのに、組織レベル企業レベル業界レベルではいまだに変化していないというのが実情です。

驚きですよね。

なぜそんなことになるか?
理由は簡単です。

個人で振り返ろうとしても

 組織で振り返ろうとしないから

です。「組織で振り返る」…つまりは、

  • 個人知にせず組織知にする

ということです。個人知のままにしておくと、個人としては成長するかもしれません。しかし組織の中に共有する文化が無い場合、そこに所属する個人も「自分さえよければいい」という発想になりやすく、当然「個人たちに」何とかさせようと思っても誰も協力的になってはくれません。

だからこそ、組織に根付かないわけです。

もし、組織知にして再発防止するにしても組織としての取り組みにしてさえいれば、組織で再発させない施策を講じた時に賛同を得やすい/推進しやすくなっていたかもしれません。少なくとも一人ひとりが個人主義に走ることも無かったのではないでしょうか。


「そうする必要がある」と頭では理解できているはずなのに、管理職になった途端、経営者になった途端、そうした重要な取り組みから目を逸らそうとし、ただただ目先の売上や利益ばかりを追おうとします。

残念なことに、それをひたすら何十年も繰り返してきたのです。

別に売上や利益を軽視していいという話ではありません。それと同じくらい「失敗を振り返って、再発させない取り組みを組織的活動として力を入れるべきだ」と言っているにすぎないのです。

一人ひとりの個人レベルではできるわけですから、個人の集合体である組織や企業ができないわけがありません。


もし、IT企業のなかで「トラブル」や「失敗」を繰り返して、多くの損失を出す実情を本気で何とかしたいと思っているところがあれば、コミュニケーションを属人化させない取り組みに注力してみてください。

そう「プロセス」や「仕組み」として定型化するのです。

たとえば全ての会話、すべての成果物、成果物にあるすべての情報の整合性をきちんと確立してみてください。それだけで多くの失敗は撲滅されるはずです。

  • 楽だからと言って、なんでもかんでも口頭で済まそうとしない。

  • 口頭でやり取りするにしても一切の思い付きや気分は用いず、すべて情報の整合性を意識する(それができない会話はしない)。

そう徹底する組織になれば、そう徹底しない人をどんどん除外していく組織にすれば、嫌でも組織知が徹底されて「失敗」を再発させない文化が醸成されていくのではないでしょうか。

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