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売上げ前年比2倍以上? 米国で爆発した2021年の日本マンガ

海外で大人気な日本のマンガですが、ここ1、2年その勢いはさらにアクセルがかかっているようです。
昨年から2021年の日本マンガの海外売上げが、飛躍的に伸びていると話は聞こえていましたが、その一端を米国のメディアが伝えています。

 米国の「Comics Beat」というコミック情報専門サイトが2022年2月4日の「レポート:2021年のグラフィックノベル売上げ前年比65%増」で驚くべき報告しています。

書籍販売データNPDブックスキャンの数字として、北米のグラフィックノベルの2021年の売り上げが前年比65%増と大きく伸びたというものです。グラフィックノベルは日本でのコミック単行本、書籍スタイルのコミック・マンガに相当します。
記事によれば急成長を牽引したのはマンガで、その売上げ前年比2.7倍(171.1%増)。冊数では前年比1700万部増との驚異的な数字です。ここで言う“マンガ”は一部日本スタイルの現地作品なども含みますが、基本は日本作品の翻訳出版です。 

[レポート:2021年のグラフィックノベル売上げ前年比65%増]
Report: Graphic novel sales were up 65% in 2021

https://www.comicsbeat.com/report-graphic-novel-sales-were-up-65-in-2021/

にわかには信じがたい数字ですが、高い伸びを示す事実はほかにもあります。KADOKAWAは直近の決算発表資料で、マンガ・ライトノベル出版の米国現地法人YenPressの紙書籍売上高が前年比118%増(約2.2倍)であると、その好調ぶりをアピールしています。

また集英社で海外向けのマンガアプリ「MANGA Plus」を運営するジャンプ+編集部によるnoteの記事で「集英社の漫画の2021年の海外売上は、前年に比べて2倍近くに成長しそう と風の噂で 聞いています」と述べています。

https://note.com/jumpdigitallab/n/n3a2bdc95852

■北米市場は700億円超か?

これを日本の売上げと較べてみるとどうなるでしょうか? 「Comics Beat」では伸び率と冊数のみで売上高には言及していません。
しかし別のメディア「ICv2」の昨年の調査によれば、北米におけるマンガ売上は2020年で2億4000万ドル程度、つまり270億円から280億円でした。この数字を使って2021年を概算すれば、北米の日本マンガ市場は700億円超となります。

国内の雑誌を除くマンガ単行本(一般的にはコミックスと呼ばれますが、ここでは混乱を招きそうなのでグラフィックノベルに対応するマンガ単行本と記載します)の年間売上高は2000億円ぐらいです。
海外のマーケットは日本と異なる分類・統計を取ることも多いので注意は必要ですが、北米だけでマンガ単行本で日本の1/3程度のマーケットが存在することになります。

 海外マーケットは北米だけでなくヨーロッパやアジアも当然あります。そして北米に次ぐ巨大市場とされるフランスでも2021年は日本マンガが絶好調だと伝わっています。2021年は日本マンガの海外ビジネスにとって、大きな転換点となったのかもしれません。
海外で日本マンガブームと言われた2000年代半頃でさえ、実際には日本の出版社は海外ビジネスに冷ややかでした。国内数千億円の巨大な売上げに対して、北米市場でも100億円程度、海外売上はわずかと無視されがちでした。昨今は、大手出版社がにわかに「海外、海外」とビジネス強化に動きますが、こうした数字の裏付けもあってでしょう。

[2022年2月24日 20時40分追記]
The NPD Group/NPD BookScanの正式なマンガ売上げの発表数字を手にいれました。
伸び率は前年比160%増(2.6倍)で「Comics Beat」の記事より小さめです。
また売上げ金額が出ていました。前年比2億1800万ドルの増加、逆算しますと2021年の売上高は3億5400万ドル(約400億円)になります。700億円よりはだいぶ小さいです。ただこの数字は北米でなく米国のみ(カナダを除く)、またNPDのカバーしない流通が含まれていません。(NPDのカバー率は8割程度) ですが700億円に届いてない可能性も高そうです。

■アニメ配信効果に、巣籠もり需要

 ではなぜ、なぜマンガは突然、こんなにも売れ出したのでしょう。「Comics Beat」では
  ・動画配信に牽引されたアニメブーム
 ・巣篭もり需要によるマンガの大量消費
のふたつを挙げています。

 配信を通じたアニメの世界的な人気拡大で、その原作になることの多いマンガにも目が向いたと言うことです。
2020年、21年の巣籠もり需要は日本でも見られる現象です。ただコミック・マンガのデジタル展開が遅れている北米では、かなりの消費が紙出版に向かったようです。

もうひとつ「Comics Beat」では言及されませんでしたが、日米同時リリースをする「MANGA Plus」のような配信アプリの影響もありそうです。
最近の海外のグラフィックノベルのベストセラーでは、『チェンソーマン』や『怪獣8号』のような未アニメ化作品が上位ランキングするケースが増えています。もともと数が多く、作品に磨きをかけるシステムを持つ日本のマンガは面白い作品が多いですから、それを発見すれば嵌る人は少なくないのです。 

2022年もこんな驚異的な伸びになるかは分かりませんが、マンガを知ってもらう、買ってもらうことで言えば、市場の成長がさらなる成長を生み出すスパイラル効果は今後も期待出来そうです。

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