数土 直志(すど・ただし)

ジャーナリスト。アニメーションを中心にエンタテイメント産業について、見て、聴いて、そし…

数土 直志(すど・ただし)

ジャーナリスト。アニメーションを中心にエンタテイメント産業について、見て、聴いて、そして伝えています!

最近の記事

「ゴジラ −1.0」米国快進撃はラッキーでない ヒット生み出した東宝の国際戦略

■『ゴジラ −1.0』、北米で日本映画の新記録達成 12月1日に北米公開した『ゴジラ −1.0』が記録破りのスタートを切っています。12月3日までの興行収入は1103万1954万ドル(約16億円)、北米週末興行3位にランキングされました。 これは『「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』の1011万ドルを超え、2023年に北米公開された外国映画で最高です。   アニメ映画では大ヒットも珍しくなくなった近年の米国映画興行ですが、日本の実写映画では変わらず大きな壁があります。

    • 「アニメーションの定義についての覚書」 実写映画とは何か違うのか

      ■「アニメーションの定義とは?」 先日、ある方と話していて出た話題。 「アニメーションの定義とは?」 アニメーションは何を持ってアニメーションとするのかという話です。 「アニメーション」と「アニメ」の違いとかでなく、もっと広い“アニメーション”全体の話になります。 僕は日頃、アニメーションについていろいろ書いているのですが、そもそも“アニメーション”が何であるか自身のなかで定義づけしてなければ、そうした言葉も空虚と批判されても仕方ありません。 そこで「アニメーションは何を

      • アニメDVD・ブルーレイ前年比4割減、300億円を割った市場の行方

        ■配信市場の1/6、年間269億円の日本アニメのDVD/BDマーケット NetflixやU-NEXT、Amazonプライムビデオなど、映像配信プラットフォームのサービスはアニメファンにとってはもはや不可欠になっています。コアファンに向けたヤングアダルト層のアニメ作品は、深夜帯に放送されることから「深夜アニメ」と呼ばれますが、いまでも深夜遅くこれらの番組を観るファンは稀で、テレビ録画も減っています。その多くは配信によって視聴されているはずです。 それでも「〇月〇日放送開始!」

        • 中国マネーの新潮流、ネットイース「ANICI」の日本アニメ投資の意味

          ■AnimeJapan 2023に登場した謎のブース「ANICI」  コロナ禍を切りぬけて、日本アニメが再び成長軌道に乗っています。日本動画協会が集計する「アニメ産業レポート2022」によれば、2021年の国内アニメ市場は過去最大の1兆4288億円に達しました。  またこの3月には総合アニメイベント「AnimeJapan 2023」が開催され、約110社の出展と10万人以上の動員となりました。「AnimeJapan」は2022年も開催されましたが、コロナ禍でリアルの参加者や

        「ゴジラ −1.0」米国快進撃はラッキーでない ヒット生み出した東宝の国際戦略

          開催第1回目、新潟国際アニメーション映画祭を識者はどうみたのか?

           2023年3月17日から22日まで、新潟市において「第1回国際アニメーション映画祭」が開催されました。国内と海外のアニメーション作品と情報を、新潟から広く発信するのが映画祭の目的です。  この映画祭、実は私はプログラム・ディレクターとして関わっており、映画祭がどう受け止められ、評価されたかとても気になっていました。 そしてありがたいことに、予想よりかなり多くのかたが新潟に訪れ、メディアやネットに記事や感想を発信されています。自身の備忘録として、そして映画祭の雰囲気を伝えたい

          開催第1回目、新潟国際アニメーション映画祭を識者はどうみたのか?

          「アニメ」はソニーグループの何を変えるのか?後編 -クランチロール買収で生み出されたもの-

          [クランチロール買収で生み出された海外におけるメディアミックス展開] さらにいま注目されているのが、このより広いアニメビジネスの海外への拡張である。2021年にソニーグループがAT&Tからワーナーメディア傘下のクランチロールを買収した際には、世界規模での配信プラットフォーム獲得ばかりが話題になった。 しかしそれはクランチロール買収のひとつの側面に過ぎない。もうひとつ重要なのはクランチロールが日本で発達したアニメのメディアミックスを海外に広げるハブになることだ。 筆者も取材

          「アニメ」はソニーグループの何を変えるのか?後編 -クランチロール買収で生み出されたもの-

          「アニメ」はソニーグループの何を変えるのか?前編 -アニメビジネスの特殊性とソニーの優位性- 

          [映像でなく、音楽に含まれるアニメ事業] ソニーグループのアニメ事業が好調だ。2021年に劇場映画が空前の大ヒットとなったアニメ『鬼滅の刃』は、ソニーグループのアニメ事業会社アニプレックスが手がけている。本作の製作の中心となり、マネジメントやプロモーションを担当する。またアニメやスマホアプリゲームで大ヒットを続ける「Fate/Grand Order」もアニプレックスが製作する作品だ。ソニーグループはいま成長著しい日本アニメのメインプレイヤーのひとつなのである。 国内だけで

          「アニメ」はソニーグループの何を変えるのか?前編 -アニメビジネスの特殊性とソニーの優位性- 

          山田尚子監督の新たな飛躍へ、新作短編、仏映画祭でフォーカス

          6月13日から18日までフランスで開催するアヌシー国際アニメーション映画祭が、期間中の上映作品を次々に発表しています。世界で最も歴史が古く、規模が大きなことで知られるアニメーション映画祭ですが、日本からも長編・短編両コンペティションなどでいくつもの公式ノミネートが決まっています。 そのなかで今回、「おっ!」と目を惹いた作品がありました。コンペティションでなく、「ワーク・イン・プログレス(Work in Progress)」という部門で取上げられる山田尚子の監督による『Gard

          山田尚子監督の新たな飛躍へ、新作短編、仏映画祭でフォーカス

          「鬼滅」と「ウマ娘」で大反転、アニメDVD・ブルーレイ販売が4年ぶり増加

          ■「日本アニメ (一般向け)」の個人向け販売が前年比61%の増加  昨今は日本アニメの市場の大きな成長が話題になります。その市場は (一社)日本動画協会のレポートによれば、2010年から2019年まで10年連続で増加。市場は10年間で2倍近くにもなりました。 2020年は特殊な経済状況もあり前年比3.5%マイナスとなったものの、大きなトレンドは成長方向といってよさそうです。  市場の拡大を牽引してきたのは、「動画配信」や「映画」、「海外」、「アニソンライブ」、「展示会」な

          「鬼滅」と「ウマ娘」で大反転、アニメDVD・ブルーレイ販売が4年ぶり増加

          売上げ前年比2倍以上? 米国で爆発した2021年の日本マンガ

          海外で大人気な日本のマンガですが、ここ1、2年その勢いはさらにアクセルがかかっているようです。 昨年から2021年の日本マンガの海外売上げが、飛躍的に伸びていると話は聞こえていましたが、その一端を米国のメディアが伝えています。  米国の「Comics Beat」というコミック情報専門サイトが2022年2月4日の「レポート:2021年のグラフィックノベル売上げ前年比65%増」で驚くべき報告しています。 書籍販売データNPDブックスキャンの数字として、北米のグラフィックノベル

          売上げ前年比2倍以上? 米国で爆発した2021年の日本マンガ

          「ジャパニメーション」とは何だったのか? その起源と終焉

          ■ジャパニメーション(Japanimation)は存在したのか?  米国で日本アニメを指す言葉に「ジャパニメーション(Japanimation)」があることを知っているかたは少なくないと思います。 しかし「“ジャパニメーション”なんて米国で全く使われていないよ」、という指摘もまた多いのです。日本アニメをジャンルとして区別する場合は、単純に「ANIME=アニメ」と呼ぶことが大半だと。 実際に僕自身の米国での経験からも、これは同意です。アニメイベントや小売店、メディアなど皆無と

          「ジャパニメーション」とは何だったのか? その起源と終焉

          2021年私的アニメベスト5 「シン・エヴァ」から「テニプリ」まで

          世の中は依然、落ち着きませんが、2021年のアニメシーンは例年にも増して豊作だった気がします。特に劇場映画は2020年予定で先送りされていたタイトルが次々に公開されたこともあり、ハイレベルな作品が続出しました。 いっぽうでシリーズアニメでも配信主導のタイトルの増加から作品のバリエーションが広がっています。一部では製作費の高予算化もあり、『鬼滅の刃 遊郭編』のような超絶な作品も登場しています。  そんななかで、僕が個人的に「これはやられた!」「何かすごいことが起こっている!」

          2021年私的アニメベスト5 「シン・エヴァ」から「テニプリ」まで

          「ディズニープラス」は日本アニメを変えるのか、自社IP以外の正否

          「Disney+」は日本アニメを変えるのか? 同じ言葉が、最近までは「Netflix」で言われていた。「Netflixは日本アニメを変えるか」である。 実際にNetflixのインパクトは大きかった。日本アニメの配信権購入だけでなく、独占配信=Netflixオリジナルアニメとすることで、アニメ製作予算のほとんどをカバーすることを実現した。Netflixがなければ企画が実現しなかった作品も少なくない。 2017年にスタートしたオリジナルアニメの本数は、2021年におよそ40本に

          「ディズニープラス」は日本アニメを変えるのか、自社IP以外の正否

          アニメ制作会社と映像メーカーが一体化、サンライズとバンダイビジュアルの選択

          ■5社を2社に集約、バンダイナムコグループのアニメ事業新戦略2021年10月19日に、バンダイナムコグループがIPプロデュースユニットの事業再編を発表しました。IPプロデュースと言うと判りにくいですが、つまりはアニメを中心にキャラクターやライセンスを含めたビジネス部門です。 この主要企業である『ガンダム』でお馴染みのサンライズ、DVD・ブルーレイ・アニメ音楽のバンダイナムコアーツ、それに配信のバンダイナムコライツマーケティング、イベントのバンダイナムコライブクリエイティブ、さ

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          「竜とそばかすの姫」は?米アカデミー賞長編アニメーション部門一番早い予想

          ■ノミネート4枠は固まっていそう、最後の1枠が焦点「映画賞シーズンがやってきた!」とばかり、2021年度の米国アカデミー賞長編アニメーション部門のノミネート予想をしてみました。 「アワードシーズン? まだ1年の2/3も過ぎていないよ!」との声も聞こえてきそうですが、今年のアカデミーは何が起きるか分からない状態で大注目なのです。早めに状況を理解しておくと、きっとアカデミー賞長編アニメーション部門も2、3倍楽しめるはず。 そして細田守監督の『竜とそばかすの姫』の活躍も期待できるの

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          クランチロールがソニー傘下でも主要企業10社以上 北米アニメ配信最新状況

          【ソニーのクランチロール買収で独占は強まったか】 ソニーグループがユーザー数世界最大のアニメ専門配信サービス「クランチロール(Crunchyroll)」の買収完了を2021年8月9日に発表しました。買収総額は約1300億円、長年ニッチと思われてきた「ANIME」の海外ビジネスとしては破格の金額です。  今回の買収は2020年12月に既に発表されており、買収完了まで約8ヵ月もかかりました。時間がかかったのは、米国司法省による独占禁止法の審査に時間がかかったとも言われています。

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