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観劇ログ 『BONNIE & CLYDE』@宝塚歌劇団雪組

宝塚は基本的に大劇場作品が好き!人数を生かしたお芝居、広い舞台を生かしたセットや演出が楽しめるのは大劇場作品(注)だから。
しかし、雪組生の半分しか出演しない御園座での『BONNIE & CLYDE』初日映像を見た瞬間に悟った、これは良い作品で複数回見る価値がある作品だと。速攻追チケを試みるも日程的に都合がつかず断念。涙で枕を濡らしたことは言うまでもない。
注※宝塚は基本的に大劇場作品の後、組の生徒さんを2つまたは3つに分けて宝塚所有ではない劇場での公演を行います(通称外箱)。2つに割っても、外部ミュージカルの人数多めの作品と同じくらいの人数だからすごいよね。

宝塚版『BONNIE & CLYDE』は名作でした

観終わった直後の感想は、シンプルにいい作品を観させていただいた、やはりもう1回観たい!でした。

作品自体がよいのはもちろん、宝塚が、特に雪組さんが演じたことでさらに素晴らしい作品に仕上がっていたなと思います。

個人的に作品自体が良いかどうかは、ストーリー展開の良さにつきます。テンポが良くて予習なしで観ても話がわかって楽しめる、これが基本中の基本です。さらに伏線回収があったら興奮するけどそれは好みでありオプショナルな要素です。今回の作品は伏線回収はなかったものの、大満足なストーリー展開でした。

ミュージカルの場合は楽曲が何より大切だと思っております。観劇後に思わず口ずさめる主題歌があることは絶対条件ですが、さりげなく添えられる音楽がカッコいいと作品の良さが4割は増すと思ってます(演者の気分も盛り上がって演技がよくなる効果も加味)。
今回の音楽は世界のフランク・ワイルドホーン氏。作品中で演奏される音楽がどれもカッコよくて、作品の世界観を見事に表現していたと思います。ダークヒーローが活躍する世界、でもその世界を全面肯定するわけではなくそういう生き方しか選択できない世の中の仕組みへの虚しさとかやるせなさとかの両方を表現するって何事!?(世界のワイルドホーン氏ですから)。タカラジェンヌの美しさに目を奪われ、耳はワイルドホーン氏の音楽に奪われ、終始「くぅぅ、カッコよ」と思って観劇いたしました。

今回のボニクラは舞台の使い方がオシャレだったのも印象的でした。宝塚らしくない、外部ミュージカルっぽい舞台の使い方が新鮮だったのが良かったです。大野先生、今までなんか合わないと思ってたけど、ボニクラは素晴らしかったです!宝塚らしさを排除した方がうまく表現できる先生なのかしら。なんと次回作は私のイチオシ彩海せらことあみちゃんが出る作品の演出!ぜひぜひうちのあみちゃんをよろしくお願いいたします(ただの雪組ファンです)。

今の宝塚雪組さんだからより良い作品に仕上がったと思う

雪組生にダークなスーツ役をやらせたら優勝しかしない

今の宝塚雪組さんは「反社ものをやらせたら右に出るものはない!」くらい、なぜだか反社が登場する作品をやたら上演しております。結果、雪組生さんの反社表現力が大幅に向上しており、『蒼穹の昴』では阿片窟のシーンがあるのですが、手慣れた感じでアヘンを吸う芝居ができたと聞いております(るろ剣でも変なの吸ってたしね)。
ということで、日本のどの他の媒体でやるよりも、反社の役をカッコよくできるのは雪組生さんなので、作品の世界観をこれ以上ないくらいカッコよく表現してくれていたなと思います。スーツの着こなし、表情、体の使い方、どの表現をとっても素晴らしかったです!そこに美しさを加味するという宝塚ならではの表現方法で目を楽しませていただきました。

そしてそして、今まで宝塚の全体歌唱で鳥肌がたったのは宙組(アナスタシアとネバセイ)と星組(ディミトリ)くらいだったのですが、今回のボニクラ、特に2幕の幕開きすぐの全体歌唱が鳥肌が立つくらいうまかったです。歌うまの久城あすくんが指導してくれたのかな?雪組さんの新しい魅力を見せてもらえて嬉しいです。この役をあすくんにしてくれた人に感謝申し上げます。

以下各タカラジェンヌさんへの愛垂れ流し感想を書きなぐっているのですが、書いていて気づきました。今回のボニクラを良い作品に仕上げているのは、雪組生さんの芝居だったんだなと。セリフとしては出てこない心情・感情を、表情だけで魅せるジェンヌさんが大変多く、ストーリー展開がともすれば飛ばしがちになるところを彼女たちのお芝居が丁寧に補っていたんだなあと気づけました。雪組さんは元から丁寧に役作りをする人が多い印象で、今回も遺憾無くその力を発揮し、登場人物をそれぞれとても魅力的なキャラクターに仕上げて魅せてくれておりました。壮さん時代は1作品しか見ていないのですが、ちぎさんとだいもんが培ってくれた芝居力を今の雪組生が脈々と受け継いでくれているからだなと大変嬉しい気持ちになりました。

クライド×彩風咲奈=優勝が約束されている

主役のクライド役は、宝塚随一のダークヒーロー×スーツが似合う彩風咲奈さん(ちなみに月組の鳳月杏さんも似合いますが、よりジゴロ感のある役が宝塚随一だと思っております。共に股下10メートルあるのがポイントかも)。
その彩風さんが持ち前のスタイルと、雪組の反社作品経験を活かし、磨き上げた芝居力と歌唱力で観客を作品の世界にグッと引き込んでくれました。
さきなちゃんは気づけばすごく芝居もうまくなっていて、一度出たはずのボニーが帰ってきた時、驚いて一瞬時が止まる様子の芝居ご覧になりましたか!?こちらの時が止まるくらいカッコよかったです!
下級生のころは男役声で歌うのに苦労していた気がしますが、今ではしっかりと聴ける素晴らしい歌声を身につけてくれて、そこにだいもんから受け継いだと思われる歌声に役としての感情を乗せる技術をいかんなく発揮してくれて、素晴らしいクライドを見せていただきました。

ボニー×夢白あや=ここまでの役者だったとは!鳥肌案件

個人的に夢白ちゃんの声質から、こういう役は似合うと思ってました。よく夢白ちゃんは芝居の人というのを聞いていたのですが、恋の大和路を見逃したせいで(コロナめ)、芝居力が必要な役をしている彼女を観たことがなく、お芝居どうなのかなーと思っていたところ、いい意味でその心配を払拭してくれた上に、ああ、この子は芝居ができる子なんだ!と思わせてくれるスーパーホームラン級のボニーを見せてもらいました。こういうお役を彼女以上にできる人はきっと今はいないだろうなー雪組に来てくれてありがとう!

夢白ちゃんは蒼穹の昴でのミセス・チャンの美の化身のようなメイクに思わず息をのみましたが、今回のボニーも役のイメージをとらえた全然違う種類の美女にしあげていて、メイクの旨さに脱帽です。娘1に慣れてきたらぜひ雪娘さんへメイク指導をお願いします!

また夢白ちゃんと言えば歌唱力に不安が残る娘役さんでしたが、潤花と同じで地声歌唱だったらしっかり聴ける子なのね、と一安心。高音が多少聞きづらくても無問題。歌に感情を載せて歌える役者さんが大好きなので、夢白ちゃんの今回のボニーの歌声は作品に酔いしれさせてくれる素晴らしいものでした。

和希そら×バック@雪組=豊漁が約束されている釣り師

ボニクラ原作知らないんだけど、兄貴でなくてもいいような。。。兄貴感はわかりませんでしたが、確かな芝居力と歌唱力でバックというキャラクターをとっても魅力的に仕上げていてさすがそらくん!と安定の感動を今回もいただきました。順桂と同一人物とは思えないわ。
個人的にはそらくんてヤレヤレが宝塚1似合うと思っているので、最初の美容院のシーンは魅力があふれすぎていて悶絶してしまいました。
そらくんの見せ場は何気に出所後にブランチの腕の中で抱きしめられている時の複雑な表情だと思う。ブランチの言う通り刑務所に戻って、そこから無事出所して普通の生活を送るものの、あまりにも人生の頭打ち感がすごくてそれが辛くて、そこから抜け出せるかもという希望を見せてくれるクライドについていってしまいたい、でもそんなこと1ミリも望んでいないブランチを裏切ることになる、という葛藤があそこまで雄弁に表情だけで語れるそらくんの芝居力の高さ。そしてこの表情がないとその後の演技の説得力がなくなるので、本当に素晴らしい演技だったと思います。
個人的には、フィナーレはじまりの和希そらオンステージが歌上手すぎて昇天しました。雪組って観客へのアピール弱いと思うのですが、そらくんは上手に一匹、ならぬ、観客をお一人ずつ釣り上げていて、雪組1の釣り師になっているなと思っております。これからもたくさん釣って雪組ファンを増やしてください。

書ききれぬたくさんの素晴らしい雪組生へ一言ずつ

●ブランチ:野々花ひまり
夢白ちゃんとの2人のデュオがすごく良かった。ひまりちゃんはダンスの人だと思っていたけど地声に近い歌唱だとこんなにも感情を載せて歌えるんだ、と感動。バックが好きで好きで仕方がない様がすごーく伝わりました。もう少し時間があれば、ブランチが敬虔なクリスチャンであることを捨ててバックについていった心情を見せる場面を作って欲しいくらい魅力的な役を作り上げてたなー
●テッド:咲城けい
今回一番おいしいお役はテッドだと思う。主役クライドと相対するポジションかつヒロインに想いを寄せるだなんて一人二役くらいのおいしさ!咲城くんはビジュアルの美しさと声の美しさがすごく好き。星組からの組替え生といえばあやなちゃん(綾鳳華さん)。あやなちゃんも大変美しいビジュアルで、雪Pは麗しいビジュルを星組さんからもらうって決めてるのかしら。そして星Pは雪Pの期待に答えるべく星組生さんをあんなに美しく育ててくれているのかしら。
●エマ・パーカー(ボニーのママ):杏野このみ
白峰ゆりさんと共に美形雪組上級生として舞台に華を添えてくれていたもののセリフがガッツリあるお役を見たことがなく。そのため今回は彼女がこんなに芝居上手だということに新鮮な驚きがありました。娘を思う母親の気持ちを見事に表現していて、めっちゃ泣きました。あんこちゃん、素晴らしい演技をありがとう。
●牧師:久城あす
実は咲城くんについておいしいお役だと思っている。歌の場面特化だったけど、コンサートに来てましたっけ〜と勘違いするクオリティの高さに脱帽。さすがあすくん。ちなみにラジオDJみたいなお役で、指揮者の御崎めぐみ先生の横にポッキー巡査ばりのメガネしてたのも、あすくん。。。?
●ヘンリー・バロウ、キャミー・バロウ:天月翼、沙羅アンナ
天月くんの変幻自在ぶりに今回も脱帽し、沙羅アンナちゃんもお母さん役をやる年次になったのね、とタカラジェンヌさんに想いを馳せる一方、個人的に一番お役として興味深かったのはバロウ兄弟の両親なのよね。クライドが犯罪者になって新聞に載っても、ヒーロー視することもなく、親子の縁を切るわけでもなく、ただただ愛情深い親として愛を注ぐ様子が、これはアメリカ人のDNA的にはありなの?この家族が特殊なの?と疑問でいっぱいになるくらい、愛情深い両親を見事に演じていたなと思います。亡くなったバックを前にした時の天月パパの愛情深い行為と沙羅ママの息子を見る自愛の目に、涙腺決壊いたしました。
●フランク・ハマー:桜路薫
こんなにイケオジ枠をほしいままにするジェンヌさんに育つなんて。。。「おーじくんかっこえー」とバカな感想しか出てこないくらいカッコよかったです。
100期トリオ(眞ノ宮るい、星加梨杏、希良々うみ)
正直もう少しいいお役につけて欲しかったけど役なかったのかしら。
とはいえ希良々うみちゃんは美しすぎる美容院の客としてソロ場面あったし、かりあんは超カッコいいビリーザキャットだったし(舞台写真出してください!)はいちゃんは通し役だったから良い方なのかな?でも全員もっと実力あるのを知ってるだけにムダに悔しかったです。
●ミリアム知事:愛羽あやね
今回1番驚いたのは愛羽さんかも。蒼穹の昴新人公演で素晴らしい白太太を演じ勝手にMVPをあげたのですが、今回もこんな上級生娘役いたっけ、いやいない、でも誰?を100回くらい脳内答弁繰り返すくらい衝撃的に良かったです!
あんな貫禄出せるなんて。立ち姿もあえてスラッとしてない感じとか、芸の細かさに感動です。
次の大劇場公演では絶対探そうと思います。
美容院の美人すぎる客:左 有栖妃華、中央 愛空みなみ
雪組の誇る歌姫(大劇場で流れる♪さよなら〜の雪組代表です)はソロ場面でその実力を遺憾なく発揮し、セリフももらえていて良かったなと。もっとガッツリ芝居が見てみたい筆頭ジェンヌさんです。
そして、右のともかちゃんは分かったけど真ん中の美女は誰だ〜と衝撃を受けた方は愛空みなみちゃんと判明(105期)。音彩ちゃんがこのまま雪で娘1になる時の同期支えとしていいお役もらえるようになってくのかなーくらい目立ってた気がします。この方も次の大劇場公演で探すと心に決めました。
●ディーコン(っていうのか):聖海由侑
誰よりもカッコいいダンスを踊っていてせみくんに目が釘づけでした。お顔も美しくて見応えあり。次の外箱ではセリフもっとあるお役きますように!
●ハリー(っていうのか):華世京
地味においしいお役。頭の弱すぎるクライドの仲間。頭弱いんだけど憎めないキャラで周りに愛されてる感がものすごい出てた。
言ってはいけないことをしゃべってすぐにしまった!とならずに、しばらくふふんドヤみたいな顔してて、気づいてからの自分の責め方もとにかく甘っちょろくて可愛かった。雪組御曹司、地味に小芝居うまいのぅ。
●アーチー(であってる?):紗蘭令愛
銀行でボニーにサインをもらうお役だけど、ここでしっかり笑い取れるのすごい!本公演でも目立つので、実力者別格枠として育成されてるとこなのかなー
●撃たれる銀行員(であってる?):麻斗海伶
銀行強盗のボニーとクライドに果敢に立ち向かって撃たれる銀行員であってるかな?その銀行員の撃たれた時の身体のキレ具合が感動的に素晴らしかったです!惚れた!

雪組生への愛をたくさん叫べて幸せでした。

スー

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