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不動産を売却した場合の申告はご自身でもできますよ!

こんにちは、山梨県北杜市のまちの税理士です。
所得税の確定申告時期になると必ず問合せがくるのが、「不動産を売却した場合の譲渡所得の申告はどうすればいいのか?」です。その問合せに対するまちの税理士の回答の多くは、「税理士に申告を依頼するのではなく、ご自身で申告されてみてはどうですか?」です。
今回はどのような場合にご自身で申告するのがいいのか、思いを巡らせてみました。


(1)まずは計算方法から

① 譲渡所得金額の計算方法

算式は次のとおりです。

譲渡価額-(取得費+譲渡費用)=譲渡所得金額

(イ) 譲渡価額
不動産の売却金額のことです。
売却金額には、売却から年末までの期間に対応する固定資産税等、いわゆる「未経過固定資産税等」も含まれますのでご注意ください。

(ロ) 取得費
売った不動産を買い入れたときの購入代金(建物は減価償却費相当額を控除します。)や仲介手数料などの合計額です。

(ハ) 譲渡費用
仲介手数料、測量費など不動産を売るために直接要した費用、貸家の売却に際して支払った立退料、建物を取り壊して土地を売ったときの取壊し費用などです。

② 税額の計算方法

不動産を売ったときの譲渡所得に対する税額は、分離課税といって給与所得などの他の所得と区分して計算します。ただし、確定申告の手続は、他の所得と一緒に行うことになります。
算式は次のとおりで、税率は、「長期譲渡所得」になるか、「短期譲渡所得」になるかによって異なります。

①の譲渡所得金額×税率=譲渡所得に対する税額

(イ) 長期譲渡所得
不動産を売った年の1月1日現在で、その不動産の所有期間が5年を超える場合です。
税率は、所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=合計20.315%です。

(ロ) 短期譲渡所得
不動産を売った年の1月1日現在で、その不動産の所有期間が5年以下の場合です。
税率は、所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%=合計39.63%です。

(2)ご自身で申告することをおすすめする場合

ずばり、(1)①(ロ)の取得費を計算する際に、不動産を買い入れたときの購入代金がわからない場合です。
具体的には、その不動産が先祖代々の土地で相続等により引き継がれてきたものであったり、建物を建築した際の工事請負契約書や領収書を紛失してしまう場合などが該当します。
このような場合の(1)①(ロ)の取得費の計算は、次のとおり簡単に計算することができます。

(1)①(ロ)の取得費=譲渡価額×5%(概算取得費)

あとは税務署へ行って、譲渡所得の内訳書の記載方法さえ教えてもらえば、ご自身で申告することは十分に可能です。 

(3)税理士に申告を依頼することを検討した方がいい場合

ずばり、各種特例を受けて節税しようとする場合(税額の負担を軽減しようとする場合)です。
以下、適用の多い特例を挙げます(買換えの特例についてはふれていません)。

① (1)①(ロ)の取得費に関する特例
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

② 特別控除に関する特例
特別控除に関する特例を適用しますと、(1)①の譲渡所得金額の算式は、次のとおりになります。

譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(一定の場合)
=譲渡所得金額

マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例
被相続人の居住用財産(空き家)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例
公共事業などのために土地や建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例

(4)まとめ

いかがでしたでしょうか?
概算取得費で、かつ特例の適用がない場合は、ご自身で申告することは十分に可能です。
ただし、特例の適用を受ける場合には、事前相談も含めて、税理士に申告を依頼するのがよろしいかと考えます。

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