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( この物語は98%が実話である )

賑やかな夜のネオンがぼくを通り過ぎ、ほてほてと渋谷駅へ向かって歩く。ダイヤモンド社の竹村俊助さんが主宰する10万部会議の飲み会には参加せず、体調が優れず後ろ髪を引かれながら家へ。

しかし最寄り駅で降り、家とは反対の方向へ歩を進める。ここ数年来行きつけの小汚い中華料理屋へと入った。席に着くとメニューを見ることもなく、担々麺と炒飯のセットを注文する。

料理を待っているあいだ、ほぼ日のアプリを開いて「親鸞 Shinran」という吉本隆明さんと糸井重里さんの対談を読み進める。たらり、体調が悪いのか鼻水が垂れてきてはナフキンで拭った。ちらり、右斜め前に座っている白髪交じりのおじさんと目が合った気がした。しかし、すぐにスマホに視線を戻す。

夢中になって貪り読んでいると、お待たせしました〜、湯気立つ担々麺と炒飯セットが運ばれてきた。ずずず、白シャツを気にしながら担々麺をすする。はふはふ、熱々の炒飯を頬張る。その動作を2度3度と繰り返す。ちらり、右斜め前に座っている白髪交じりのおじさんと目が合った気がした。

うん?、さすがに気になったぼくは、横目でおじさんに目を向ける。四角のテーブルに3人組で座っているのだが、どう考えても体勢が変なのだ。体がテーブルの方ではなく隣の席を向いていて、顔は通常向いているべき方向の右斜め後ろ、つまりはぼくの席を向いていた。

不思議に思いながらも、視線をご飯に戻し食べることに集中した。胃袋がすこし重たくなる感覚を感じはじめていた頃、ウィーン、自動ドアが開きおじさんたちの席に若い女性が座った。ぼくはまた何気なく彼らのテーブルに目線を送る。

4人家族だった。おじさんとその奥さん。息子さんと娘さん。( だろうと思う、きっと )なんの変哲もないよくある風景。そのだんらんが羨ましく、ズキッ、胸がちょっとだけ疼いた。ただそこには会話が少ないように感じて、「みんなで話せるときに、いっぱい話しておいたほうがいいよ」なんてお節介な思いを送っておいた。

ご飯を食べ終わり、お会計に立とうとする。すいません〜、おじさんが店員さんを呼んでいる。追加注文をしたかったのだろう。しかし、店員さんはいない。ぼくも席を立ち、レジの前で店員さんを待つ。ほんの5秒ほど後、戻ってきた店員さんに、あちらのお客さんが呼ばれてましたよ、と伝える。店員さんは急いで家族の席に向かう。しかし、いやいや、あちらのお客さんのお会計から先に、とおじさん。譲り合いになって、店員さん苦笑い。先にぼくの会計を済ませることになった。

帰り支度を整え、自動ドアに近く。ぼくは店の中に振り返り、ありがとうございました、おじさんに頭を下げた。顔をあげると、

よいお年を〜。

おじさんは、親しみを感じさせる表情でそう言った。ギャグなのか、ただの変わった人なのか、いまだにわからない。すこし肌寒い、上り坂の帰り道。俯きながら歩くぼくの目は、うっすらと潤んでいた。

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ちょっと摩訶不思議な体験。でも、悪い感じはしていなくて、不思議なあたたかさを感じました。ちなみに、2%のフィクション部分は、垂れていたのが鼻水ではなく鼻血だったということ。

今日の有料コーナーは、「10万部会議の裏側見せます」です。様々な出版社の編集者が集まり、5つの書籍企画を5分間でプレゼンする場でした。さらには、グーグルドキュメントにリアルタイムでコメントが書き込まれる。緊張感が半端ない。かったのですが、基本的にはポジティブフィードバックと、最後は一人ひとりの企画の一番よかったものに投票まで。すごく発展性のある有意義な場でした。

ということで今回は、ぼくがプレゼンした5つの企画を公開! そして、他の編集者さんからのコメントや投票数、いちばん人気の企画も公開しています。(編集者のみなさんの名前などは伏せております)

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