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言いたいことなんてないよ。

ぼくは「いい子」として、生きてきた。(と思っている)ウルトラマンとバルタン星人だったら、ウルトラマンの人形を選んで買ってもらった。一方、弟はバルタン星人を好んだ。いい具合にバランスがとれていた。(と思っている)また、ぼくがドラッカーを読んでいるとき、弟はロックやパンクを聴いていた。その流れで弟は、矢沢永吉さんの「成りあがり」を学生時代から読んでいたのを憶えている。

それから10年以上の月日が経ったいま、ぼくは初めて「成りあがり」を手に取った。なめている。乱暴だ。いまよりもさらに「いい子ちゃん」だったぼくが読んでいたら、1ページ目で本を閉じていたことだろう。しかし、

成りあがり
大好きだね この言葉
快感で鳥肌が立つよ


何がほしいんだ。
何が言いたいんだ。
それを、いつもはっきりさせたいんだ。

いま読むと、熱い。文字が煮えたぎっている。エネルギーがほとばしっている。ぼくが読んだ、どんな本にもなかった文体。乱暴でぶっきらぼうな語り口調。でも、いやだからこそ、自分の体温があがり、ハートが汗をかき、本気になる。

全編ほぼノンストップで読み切ってしまった。ページをめくる手が止まらなかった。矢沢永吉さんの圧倒的なすごみ。これを感じざるを得なかった。と同時に、ライターとして携わった糸井重里さんのすごみをぼくは感じた。そんな流れで、糸井さんとのツイッターのやり取りが。

感じていたことをそのまま書くと、糸井さんがこんなつぶやきを。

このやり取りを通して、救われた。じぶん自身を肯定された気がしたのだ。その理由が、これ。

いまというときは、主張がないといけない時代だ。(と僕は思っていた)だから、言いたいことがはっきりとある人がうらやましい。自信満々に堂々と意見を言っている人たちを見ると、密かに嫉妬心がわく。だから、主張がないことを恥ずかしく思って、隠し続けてきた。もしくはあるふうを装ってきた。バレないように、バレないように。

しかし、じぶんの心の奥底に隠れていた本音を、糸井重里さんに代弁してもらえた気がした。元気が出た。「あ、いいんだ」って。なんだったら、「そうだよね、そういう生き方だってアリだよね!」と。(誰かに言ってもらって、そうだそうだと言っているあたりが、「受け身」の人間の「受け身」人間たる所以だ)

でも、受け身の人に「言いたいこと」、「やりたいこと」がないかというとそんなこともない気がする。この人や本はおもしろいなぁ、いいなぁというのはその人なりに感じているはずだ。それをもっと、堂々と話し始めても、書き始めてもいいじゃないかと思う。だからこその味があるし、誰かの役に立つかもしれないんだから。

こんな話を彼女に話をしたら、「それやりなよー」と言われた。「なにを?」と聞き返すと、「この人のココがすごい!」という企画だと言う。続けて、「だって最近、糸井さんはこう言っているとか、村上春樹さんはこうだとかばっかり話してるよ」と。これまでも言われていたのかもしれないけど、否定していたんだと思う。なんか受け売りばっかりな感じでカッコわるいと思っていたからだ。

でも、受け身の糸井重里さんの存在があったからこその「成りあがり」。凸があれば、凹もある。どっちもあって、どっちもいい。

何がほしいんだ。
何が言いたいんだ。

そんなのないよ、永ちゃん。
でも、それも悪くないだろ。

今日もコンテンツ会議を読んでくださり、ありがとうございました。
ということで、超即席&超ラフな音声を収録してみました。内容は、「受け身的な発信のいいところ」です。さいしょに笑っちゃっていますが、ご愛嬌ということでご容赦くださいねー。

ツイッターも熱心に楽しんでいます。
https://twitter.com/hiroomisueyoshi

【音声】「受け身的な発信のいいところ」
http://lifeworkshinbun.com/wp-content/uploads/2017/03/ukemi-1.wav

追伸、、、
糸井さんのあとがきが、またいい。

「成りあがれ!」とシャウトしているのだ。ロックンローラーになりなさい、とは言っていない。スターになれとも言っていない。
「オレみたいにやってきて、成功した例は、何十万にひとつだろうな」あとに続く気があれば、どうぞ、と彼は言う。
しかし、道は、たったひとつではない。自分に合った道を見つけて、そこで「成りあがれ!」
可能性は、山ほどあるはずだ。黄金の山も、いまは隠れていて見えないかもしれないが、現代の「ゴールドラッシュ」は、もう始まっている。矢沢永吉は、重いスコップで掘りまくっている。自分の腕で、汗を流して。
「自分が、まず、やんなよ。色々と、ノーガキをたれる前に」自分のスコップを持って、ひとりで街に出て行く。それしかない。疲れて帰る。また出て行く。


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