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家を買うこと

私は29歳の時に中古の一軒家を購入した。これにはいろんな理由があって
・アパートで一緒に暮らしていた結婚相手と別れたこと
・結婚相手と同棲を始めるまで実家暮らしだったこと(元々の拠点が実家だけだった)
・実家に戻ろうとしたら物理的に私のいるスペースが既になかったこと
・猫を飼っていたこと
・アパートの契約名義は私だった故に離婚時相手を追い出し私が残るにせよ、結婚相手が浮気相手をアパートに連れ込んでいたため、私も早くアパートを離れたかったこと(そしてペット可を探す必要があった)

引っ越したいけど、実家には戻れない。なら他のアパートを探すしかないが、ペット可である必要がある。という条件があったわけです。離婚を決め、別れるための準備期間中、母から連絡があった。
「あんたが昔から気にしてた家、売りに出てるよ!」
私の実家の近所にある家で、和風の造り(前庭もね)でね、小学生の頃からずっといいなあこんなおうち……と思っていた家が売りに出ていたのだった。アパートの家賃払い続けるより、家買ってローン組んだ方いいんじゃない!?猫飼えるし!しかもあの家じゃん!!見に行こ!!(短絡的)

仕事しつつ、旦那の引越しの荷物まとめを手伝いつつ(今思えば手伝わなくてよかったわ、あーあ)、不動産屋さんに連絡し内見し、ほぼ即決。ローン組む手続きして、知人の家のリフォームを手がけた工務店と連絡をとり(実際手がけた仕事を見られたことと、アフターフォローの実際を知ることができるので、全然知らないところにお願いするより信頼感があった)忙しかったなこの時期。ストレスもあったのでこの頃3ヶ月生理止まった。わかりやすい。
この時私は29歳で、独身で(別れますので)、子供はおらず、という状況で、家を買った。周囲の人からは「決断が早すぎない?まだ若いのだし、これからいくらでも……(出会いがあるよ、と言外に)」と言われた。……出会いがあるのと、私が家を買うことは全く別問題ではないのだろうか……?いや、「男女で結婚し、お互いの意向を擦り合わせながら暮らすところを整え、一緒に暮らす」のが一般的なのはわかります。でも私はそもそも、相手が男とは限らず、法的な婚姻関係に限らず、結婚したからと言って一緒に暮らすかどうかも限らず、という考え方のため、一切同意できなかったんだよな……。実際この時は女性と養子縁組という形で「法的な家族」になっていたわけで。(事故や病気の際の決定権や、有事の際に近くにいることを社会的に許されるかどうかを軸に考えて籍を入れました。)
これから私と合う男性と出会って?結婚して?もしかしたら相手が家を持ってるかもしれないし?相手の親の土地に家を建てようとなるかもしれないし?とかそういう「全くわからない未来」を考えて、今この家を見送ることは私にはできなかった。実家が近いこともよかった。リアル「スープの冷めない距離」で、鍋持ってエプロン姿のまま歩いて実家に行くことも出来る距離。まあ特別実家を大事にしているわけではないが……程よい精神的距離があればお互い平穏に仲良くできるので、一緒にご飯食べたりするのも楽しいから……。

土地建物+リフォームで、ちょっと郊外でなら庭付き2階建の新築建てられたくらいはかかっているので周りに「なんで?」とも聞かれたが、場所と建物に対する愛着と憧れですね……。工務店の人には「この家総ヒバだよ。今、この場所にこの値段(リフォーム込みの総額)でこういう家は建てられないよ。ヴィンテージだから、大事にしてね……」と言われました。お茶の先生をしていた方が住んでらっしゃったから、お茶室もあるし茶花の植ってる中庭もあるんだよ〜。私はお茶やらんけどね。リフォームも、最初はさらっとやるつもりだったんだが、工務店の人の「水回りは前住人の履歴が見えやすいところだから替えたほうがいいよ」というコメントを受けたし、実際私も「いやまて終の住処になるんだよな…」と思って、居住空間はがっつりやった。台所!風呂!全部替えた!でも、お金かけたんだろうな〜と見てとれる和室や茶室、玄関や廊下はそのままにしました。この家のアイデンティティに思えたので。あとは台所と居間の間に空間を区切る据え置き?の棚があったんだけど、これは取って一部屋にした。が、立派な柱があって……工務店の人は「これも取ることはできるけどどうする?」と。確かにその柱はとった方が広いし、空間が使いやすい。しかし、この柱はだいたい家の真ん中にあって、この家の歴史を見て、文字通り支えてきたんだよな〜と考えたら労しくなり、そのまま残しました。結構存在感あるんだけど、たまに抱きしめている。四角い柱なので痛いが。

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右側のゴザ敷いてる部分、畳張りの廊下なの…

まあそういう理由で、元結婚相手には一切私の新居の話はしないまま裏で色々手続きしながら離婚日を迎え、相手を追い出し、新居のリフォームが終わるまではアパートに猫と暮らし、数ヶ月後に新居へ引越しました。いやあ、楽しいわ。人生初の一人暮らし!(猫はいるが)同棲するために実家を出たので、一人暮らしがそもそも初めてだった。楽しいですね。家事を強制されることもない、やってなくて不機嫌になられることもない。作ったご飯を「いらねぇわ」と言いつつコンビニ飯を食う姿を見なくてもいい!そして浮気をするパートナーももはや存在しない!留守中にそういう相手を連れ込んでるのではないかという不安を抱くこともなく夜勤もできる!サイコーー!!!
そんなかんじだった。そしてその幸せと楽さは今も引き続き実感しています。


親しい人たちとご飯食べる時も我が家が拠点になるし、誰かとの食事のために「おいしいね」と言い合えるご飯を作ることもできる。(ご飯作るのは好きだけど、日常をこなすためにする料理は作業になり、料理が嫌いになりそうなので私はほぼしない。楽しめる食事をするために、楽しく料理する、というスタンス)そして今は、帰省したモナリザがグダッと過ごしてくれもする我が家よ。ここが私のサンクチュアリだ。あの時の私の決断、今の私は褒めたい。自分が買って整えている家(自分のテリトリー)に好きな男が存在してるって最高だったわ。
モナリザ母には「モナリザが帰ってくるか、須郷が向こうに引っ越して向こうで仕事すれば?……家持ちだもんな〜」と言われたこともあるが、私は元々地元を離れる気はなかったし……まあだから早々に拠点を構えても後悔しないだろうと思っていたところはある。実際後悔はしていないし。

定住したくない人もいるでしょう。諸々の管理は面倒だからずっと賃貸でよい、という人もいるでしょう。そこは人それぞれのスタンスだ。
私は「色んな事情があり、タイミングよく出会った家を買い、早々に定住を決めた」パターンで、個人の性格や資質により満足している、という個人的な満足の話。あちこち定住せずに暮らすのも素敵だなと私は思う。ただ私は「精神的ホーム」が必要な人間で、そこに「物理的ホーム」を集約させたことで今現在は満足度の高い生活を送ることができている……という個人的レポートでした。

※ちなみに家を買う話は一切していなかった元結婚相手が「家買ったんでしょ?」と突然連絡を寄越したのはホラーでした。やめろ。どうせTwitter覗き見してたんだろうが「『視』えちゃってさ〜(スピ的な話)」と言われてげんなりしたし「じゃあそれが事実にせよ、私はもうあなたとは他人だし、私が直接あなたに開示していない情報を勝手に視たりしないでくれますか?」と返信した。「だって勝手に視えちゃうんだもん……」と言われて草。やめろ。視るな。話しかけるな。百歩譲ってTwitterはもうどれがその人のアカウントかわからんからどうしようもないにせよ、それを見て得た情報も持って私に話しかけるな!!!(それから数年経って今は平和です)

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