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変わったこと

「何も変わらないのだから」という言い訳めいたプレゼンをして始まったこの関係だったけど、最近になって「前とは違うのでは?」と感じることが、度々ある。それは私が変えた・変わったこと以外にも。

22年間、友人として付き合ってきたこの人と、私の彼氏になってくれてから1年半経ったこの人と、違う。相変わらず土星に暮らしてはいるけれど(連絡のつきにくさについての比喩)、なんだかとても、丁寧に扱われていると感じている。どうでもいい揶揄いによる嘘や、聞いてないそぶりといったところは変わらないのに、以前には感じなかった丁寧さに気付いた。思ったより、この人は私を見ているし、私を理解しているし、私の話を聞いている。

私は普段、とてもうるさいタイプの人間なので、静かに黙っていることというのはあまりない。だからよく「うるさい」と言われている。何も喋っていなくても。行動とか、視線がうるさいのだそう。かといって、静かな時間が長く続くと「どうしたの、眠い?どこか具合、悪い?」と顔を覗き込んでくるのは……本当にずるい。彼の言を信じるなら、私は彼にとって初めての彼女なんだけど(見ている限りおそらく本当)、この1年半で、私にそういうことをするようになった。どこで覚えてきたんだよ!と度々思う。

付き合うまでは、私が抱きついても棒立ちだったこの人が、今では腕を回してくれるようになった。ぐったりしてると「なんか……おつかれ」と言いながら頭に手を乗せてくれるようになった。付き合うまでは私の隣でファラオのように横になっていたのに、自ら私の頭の下に来る位置に腕を敷いてくれるようになった。些細なことなのかもしれないけど、私にとってはその全てがとても嬉しい。どこで覚えてきた?あとお風呂上がりに「ボディミルク塗ろうか?」と聞くと「お願いします」と言いながら背中見せてくるのもとても好ましいし、そっとパンツ下げて言外に「おしりも塗って」とアピールしてくるとかね。前まではなかったね。(かわいいね)

去年の7月、付き合って丁度1年というタイミングで私はモナリザに会いに行ったんだけど。彼はそんなこと、気に留めてないだろうと思いつつ、私は「1年彼が私の圧に耐えてくれたこと」が嬉しくて、ケーキを買ってから合流した。サンシャインマスカットがたんまり乗った、生クリームの小さなホールケーキ。切り分けている時に「お祝いには丁度いいんじゃないの」と言われて「まさかそんな」と思った。そんな、付き合った日なんて覚えているようなタイプの人だなんて思ってなかった。バレないと思って買ったのに、ひょっとして喜んでいる私の意図がバレていたの?と考えるととても恥ずかしかった。ケーキを切り分ける前、彼のパソコンの上に気になるものを見つけていた。彼が自分では到底買わなそうなバスミルクのセットの箱。つい「どしたのこれw貰い物?」と聞いたら「ああ、そうだった、忘れてた。……あげる」と手渡されて「……???よくわからないけど、ありがとう」と貰っていた。その時は、何がなんだかわかっていなかったけど、ケーキのタイミングではたと「そういう意味で用意してくれていたのだ」と気づいて、どうにかなるかと思った。

私が換気扇の下でたばこを吸っていると、たまに近づいてきて一口だけもらっていくときの仕草とか、その後「ピースの香りがする」と自分の指を香ったりしている仕草とか、重めの瞬きがとても綺麗なこととか、日々新たな美しさを見せてくれる。好きな人の存在とは、如何なる時も美しいものだな。


そういえば「なんで今回は(交際を)了承してくれたの?」と最初の頃に聞いてみた。そうしたら「コロナで生活様式(勤務形態含)が変わったことにより俺の気持ちに余裕ができたから」との返答をもらった。……「自分以外に気持ちを割く余裕がない」と言っていたのは、テイのいい断り文句とか、常套句ではなく、本当だったの!!?と、驚いた。「須郷のこと好きになったからだよ」とか、いつかは言われたいね〜。

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