ライブに行く事、それに伴うリスクと責任。

私はライブが好きです。ライブ会場に向かう交通機関の中の何とも言えない空気感、会場付近の高揚感、もちろんライブ中の空気も大好きです。

そんな私が、ライブに行くことに付きまとうリスクや責任について考える事になった、とある事件の記事を書かせて頂きます。

日付は2022年9月23日。場所は静岡。
その日私は、大好きな浦島坂田船のライブに行くため、朝から電車に乗っていました。
この日の連番相手は、学生時代からのお友達のMちゃん。遅刻大魔王だけどノリが合う、大好きなお友達です。遅刻大魔王だけど。
朝一でグッズ受け取りの予約をしていたので、9時少し前に会場最寄りの愛野駅に到着。会場の下見がてら歩こうということになって歩いて会場に向かったのですが、なかなかの上り坂。お互いに服装を合わせようということになって2人とも量産っぽい(Mちゃんはどちらかというと地雷系?)服装だったのでスニーカーなど履いているはずもなく、超しんどいんだけどとか言いながら坂を上っていきました。

グッズを受け取って、一度浜松駅へ。浜松でへアセットの予約をしていたので、買ったグッズを駅のコインロッカーに入れてへアセットを受けて、プリクラを撮って時間を潰しました。(尚ヘアメは仕上がり最悪だった上に特殊な髪型だからと追加料金まで取られてブチギレそうでした)
開演1時間前くらいに電車で愛野駅に向かって、また坂を上って会場に到着。この時点で雨もぱらついていましたが、傘をさせば気にならない程度でした。
天候が急変したのは私たちが入場しようとした頃。まだCOCOAがサービス停止していなかったので、入場時はCOCOAの画面提示と検温、消毒、そこまでしてやっとチケット提示でした。
しかもCOCOAの画面提示と検温、消毒は会場前に設営されたテントの中で行われたため、テントに入る前と出る時にスマホを持ったまま傘を閉じたり開いたりしなければならず、スマホも体も雨で濡れてしまいました。仕上がりは不満でしたがセットしてもらった髪も雨で濡れてしまい、前髪(まあ巻いてもらえなかったんですけど)もリボン編み込み(まあ三つ編みを隠して頂けなかったのでとても変な仕上がりだったんですけど)も開演前どころか会場に入る前にほぼ崩れてしまいました。大事なのはライブに来たことだからと気持ちを切り替えつつも、開演までに電波の悪い会場内でスマホを触っているうちに「台風15号」という単語が目に入ってきて不安になったのも事実です。
この日のライブは16時開演で、後から知ったことですが1時間後の17時半過ぎには東海道新幹線が上下線で運転を見合わせていました。(豊橋→三河安城間で1時間の雨量が規制値の40ミリを越えた為だそうです)
ちなみに降水量の数値として使われる「○○ミリ」は、「降った雨が別の場所に流れずそのままたまる状態で、1時間に雨水が○○ミリメートルの高さまでたまる」という意味だそうです。
規制値40ミリは1時間に40ミリメートルの高さまで水がたまるという意味で、1平方メートルあたり40リットルの雨が降るということになります。
傘を開いた時の面積がだいたい1平方メートルくらいなので、1時間傘をさすと傘に牛乳パック40本分の雨が降る計算です。
(出典:気象庁作成PDFより)
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/amekaze/amekaze.pdf

つまり、開演して1時間半で参戦していたcrewは実質的にほぼ全員帰宅難民が確定していたということになります。
改めて文字に起こすとめちゃくちゃ怖いですね…
ここからはライブ後の運営の対応と、私のとった行動を分けて書いていきます。

19:00頃 ライブ終演
運営の対応:規制退場はなし 会場上空に雷雲が停滞しており危険な為30分ほど待機するようにとのアナウンス
私のとった行動:連番とツイッターのFFさんとタクシーで浜松駅に行くことを決めて19:15頃会場を出た(今思えばかなり危険だったなと思います)
通常は規制退場を行いますが、この日は状況が状況だったため規制退場はなし。雷雲が上空にいるためそのまま席でお待ち下さいとのアナウンスを繰り返し繰り返しして下さいました。
私はこの時、浜松駅に帰って新幹線で地元に帰ることしか考えていませんでした。帰れると信じて疑いませんでした。
何ならMちゃんと浜松駅の近くで焼肉アフターして帰ろうぜとか言ってました。めちゃ呑気。
開演前に会っていたツイッターのFFさんと連絡を取り、タクシーで帰ろうという話を固めて会場を出ました。会場の外はまだ雨と雷が続いており怖い気持ちもありましたが、早く帰りたい一心でタクシー乗り場に並びました。
大変だったのはここからです。タクシーは最初のうちコンスタントに来ていましたが、次第に「東京まで」「大阪まで」と自宅近くまで乗っていこうという人が出てきたようで、タクシーが帰ってこなくなってしまいました。
雨足は強まる一方。傘こそさしていましたが、1時間で40リットル(しかも運転見合わせの時点で49ミリだったのでほぼ50ミリです)もの雨が降っていたので頭から靴までびしょ濡れでした。
進まない列、強くなる雨、濡れる靴下、靴下の中で感覚を失っていく足先。
FFさんと連番さんは、途中でタクシーを求めて愛野駅に歩いていきました。もしタクシーがつかまったら、タクシーでエコパに戻ってくるという約束までして頂きました…
ちなみにこの会場には駐車場もあって車で来ている方もいましたが、帰り道は至る所が冠水していたと思うし出口も相当混雑していたので無事だったかな…と思いを馳せてしまいますね(その時はそれどころではなかった)

21:30~22:00頃
運営の対応:会場タクシー乗り場から掛川駅までの無料バスを手配
私の行動:バスに乗って掛川駅へ
この辺から時間結構曖昧です。当時のやりとりとかツイートとか時間の特定できるものを探して見ながら書いていますが、全然違う可能性あります…
相変わらずびっしょびしょになりながらタクシーを待っていたのですが、突然タクシー乗り場にタクシーではなく観光バスがやってきました。
そこまでの時点でバスを出すという情報はどこからも出ていなかったので、居合わせたcrewは突然登場した大きなバスに騒然。
どこに行くのかも分からないバスの登場に騒然としていると、運転手さんがバスから降りてきました。
「掛川駅まで行く方はいらっしゃいませんか?」そう、このバスこそ浦島坂田船運営陣が手配して下さった(と考えられる)掛川駅までの無料バスです。確かハニー観光さんといったような気がします(バスに書いてあった)
私はその時偶然LINEをしていた母から現状確認の電話がかかってきたためタクシー進まねえよとか報告の電話をしており、
「掛川までのバスが来た!」と母に言ったところ
「掛川ならエコパよりは安全だと思うから乗った方が良いよ。新幹線も止まるし」という指示を受けたのでこのバスに乗車しました。掛川に行く人が少なかったため、1回転目で乗車することができました。
とはいえ掛川駅に到着したところで、新幹線は当日分の運転を中止しているし在来線も運転見合わせ。帰れるわけもなく、半泣きで母親に電話をかけてみたものの
「迎え?行けるわけないでしょこんな雨で」まあそれはそう。その時は情緒とか半分死んでたのでマジで鬼かこの人と思いましたが、冷静になって考えれば鬼は私の方。あっちもこっちも雨で冠水してたらしいので…
とりあえず駅に併設されていた魚民が夜中1時まで営業していたので、ご飯を食べて情報収集をすることに。
通された部屋が掘りごたつの個室だったのですが、私は座った瞬間脱力。食事はいろいろ頼んだのですが、運ばれてきたら気力が死んでしまいほぼ食事できず。タクシー乗り場で待っている時頭痛に悩まされていたMちゃんが、この時には完全復活していたためご飯を食べながら私のお世話をしてtwitterで情報収集をするという器用な芸を見せてくれました。私も半分死んでた頭をどうにかこうにか動かしつつ情報収集。
そしてMちゃんが見つけてくれたのが、久保田崇掛川市長のこのツイート。
https://twitter.com/takashi_kubota/status/1573325869266788353?s=46&t=jLLD7CU3oub8jN-tRvQOWg
エコパアリーナは袋井市と掛川市の境目くらいの位置にあって、どうやら掛川の久保田市長の耳にも袋井のエコパアリーナから掛川駅にcrewが大量に来ているらしいという情報が入ったようです。
ツイートの時間によるとそう早い時間でもなかった(私たちが魚民にいたということは多分0時前後)ので、しごできな市長と近隣市町村との連携のとれた様子が羨ましくて仕方なかったです…(私が住んでいる市は市長と県知事の仲がとっても悪いので)(そしてこの災害でその仲の悪さが裏目に出て自衛隊の派遣要請が遅れてはちゃめちゃ叩かれたので)
ツイートにある美感ホールというのは、掛川駅から歩いて5分くらいのところにある小さな音楽ホール。掛川市民の生涯学習の場になっているそうです。(調べた)
私は自分でもびっくりするくらい情緒とか気力とかそういうものが死んでいて放心状態だったのですが、一緒に行ったMちゃんが「とりあえず行こう」と手を掴んで立ち上がらせてくれたのでなんとか動けました…靴も靴下もびっしょびしょで最悪だったけど…

ここのロビーを避難所として開放して下さったんです…!
調べてるときにロビーの写真見たらあの時の感情が蘇ってきました しにそう
傘さしてスマホで道を調べながら(と言っても駅前の道に面しているので迷いようがない)美感ホールに着くと、スタッフの方が迎えて下さいました。まだ情報が行き渡っていないのかcrewもまばらで、ロビーのソファと「良かったら使って」と大量の新聞を頂きました。ここでソファとスカートの間に数枚新聞を敷いて、靴を脱いで新聞を突っ込んでおいたのですが、翌朝の出発時に靴も服もしっかり乾いて大助かりでした。
隣のベンチにいたcrewさんが持ってたお菓子お裾分けしてくれて嬉しかった…!みんなバッグから当たり前の顔してお菓子でてくるのほんと面白い
天気が落ち着いたのを見計らって、美感ホールから歩いて5分くらいのところにあるファミマへ。ご飯というほどお腹空いてなかったので軽食とお裾分け用のお菓子と、入り口入ってすぐの所にあったコンビニエンスウェアシリーズの「長袖アウターTシャツ くろ」を購入しました。

買い物をして美感ホールに戻ると、寒い中ずっと外で見守って下さっていた消防隊のお兄さん(ファミマ行く時に近くのコンビニを聞きました…すぐスマホで調べてくれてありがとうお兄さん)が段ボールいっぱいの毛布を持ってきて下さいました。スカートはまだ濡れていたけど、ストッキングも靴下も脱いでファミマで買った長袖のTシャツに着替えて毛布に包まるだけで、あったかさが段違いでした。その日は毛布に包まって、床に寝転がって2時くらいに寝たと思います。

翌朝は6時頃目が覚めました。外はまぶしいくらいの快晴。昨日の天気なんだったのマジでって感じでした。
ライブは元々23日・24日の2daysで開催予定でしたが、さすがにこの天気だったので24日の公演をやるかどうかは当日10時に公式twitterでアナウンス出しますって感じでした。
先に起きてたMちゃんと、ファミマで朝ご飯を調達することに。朝ご飯っつってんのに和風パスタ食ったのは私です(しかも大きめの口内炎があった)
そして朝9時頃。ご飯も食べ終わってMちゃんと喋っていると、周りがざわつきました。
予定より1時間前倒しでしたが、24日の公演の開催有無が発表されたようです。
結果は開催中止。延期になるのか完全中止になるのかは後日改めて、というアナウンスでした。
言い方はアレですが、私は内心「良かった」と思いました。前日の雨でへアセットはぐちゃぐちゃ(まあ元から…)、メイクは落とせず、服もびしょ濡れ。こんな状態ではとてもライブなんて行っていられなかったので、日を改めてくれるというのは悪い話ではありませんでした。
とはいえ新幹線は12時頃まで運転を見合わせるというアナウンスが既に出ていたので、どの道ここから動けない。どうしましょうねーとか言いながら向かいのベンチに座っていた2人組のcrewさんとお話しているうちに、そのお2人が静岡にホテルを取っていることが判明しました。
私たちも静岡に帰る予定だったので、都合が良いということで4人で静岡に行くことを目指して動くことになりました。
とりあえず荷物をまとめて、スタッフの皆様にお礼を言って10時半頃に美感ホールを後にしました。
掛川駅のタクシー乗り場にはそこそこの列ができていましたが、4人で割れば多分多少マシだよねということで列に並びました。調べたら14000円くらいだったので、タクシーだと1人3500円くらいで帰れた計算ですね。
列に並んでいると、駅の中から駅員さんが出てきました。
「ただいま浜松駅から静岡駅行きの新幹線が速度を落として向かってきています!到着時刻や発車時刻は未定ですが、これ以降新幹線の運行はまだ目処が立っていません!」
駅員さんのアナウンスを聞いて、私たちはすぐ動きました。
「新幹線乗ろう!」全員歩きやすい靴ではありませんでしたが、全力ダッシュでホームに行きました。券売機が動いておらず新幹線のチケットが買えなかったので、掛川駅の改札で駅員さんから引換券(???)を頂いてホームへ。飲み物を買い忘れていたのでホームの自販機で買いました。
しばらく待っていると、浜松方面から確かにかなりスピードの落ちた新幹線が来ました。
浜松から乗ってきたお客さんもいたので、私とMちゃん、そして避難所で知り合った2人もそれぞれ車両最後列の特大荷物スペースに乗りました。立ち乗りだったけどまあ1駅だし余裕っすよ これで帰れるわけだし
浜松方面から法要か何かで乗ってきたらしいおばあちゃんに「どこか行ってきたの?」って聞かれたので「昨日エコパのライブに行ってて一晩掛川の避難所にいたんですー」とかお話をしました。帰り道に見た安倍川が信じられんくらい増水しててびっくりしました。
多分時間的に新幹線の車内で発車待ちながらだと思うんだけど遅延情報スクショしてたので載せときますね


1000分越えの遅延とか見たことあります?????私は人生で初めて見ました
12時前くらいに掛川駅を発車。
普段だとこだまでも15分くらいで着く距離なのですが、速度を落としていたりホームに入れないからと停止したり(増水した安倍川の上で止まったのさすがに怖かった)していたので、多分30分くらいかかったと思います(Googleマップのタイムライン機能を参照しています)
駅から自宅まで歩いてだいたい20分くらい(Mちゃんはもうちょっとかかる)なのでタクっちゃおうぜとか言ってたのですが、タクシー乗り場が長蛇の列だったので歩くことに。駅まで一緒に帰ってきたお二人の宿泊するホテルまでの道を簡単に説明して解散したあと、地下を通って帰ろうと思ったら地下が冠水していました。
仕方なく地上を通って歩いて帰っていたら、私のストッキングの足の付け根付近が突如破れました。まあ2日続けて履いてれば仕方ないですね…必要経費必要経費…(言い聞かせ)
そしてやっと帰宅したら自宅が停電していました。電波も死んでいたらしく、私が新幹線から送っていた「今掛川出たよ」とかのLINEも届いていなかったそうです。
まだ暑い時期だったので母親にうちわで仰いでもらったりしながら電気が復旧するのを待っていると、帰宅して1時間ほどで無事復旧しました…!
お湯も沸かせるようになったので、私も22日の夜ぶりにお風呂に入れました。温かかった…
私が着ていた服はおばあちゃんが洗濯してくれたのですが、洗濯機を回したときはまだ少し濁った水が出ていたようで、洗濯から上がってきたら真っ白だったブラウスがクリーム色になっていました まあそんなこともあるよね

ちなみに浜松駅に置き去りにしていたグッズはコインロッカーに入れてから3日間は延長料金かかるけど出されないタイプのロッカーだったので、25日に妹と浜松に遊びに行きながら回収してきました。ライブの2日後にグッズの入ったショッパー持ってるのなんてきっと私くらいだったと思う。

余談ですが、私は平日某損害保険会社で事故対応部署の事務員として働いています。自動車事故はもちろん、住宅の事故や店舗の事故等も多数事務処理を行いますが、台風15号が過ぎた週明けの9/26は新規の事故報告が100件を超え、基本定時退社の私が20時半過ぎまで事故報告の事務処理に追われることになりました。ちなみに私の彼氏も車を修理工場に預けていたところ工場ごと水没してしまい、愛車のMINI COOPERが無惨な姿で発見されたと報告を受けました。まだローンもあったし気に入って乗ってたのにね…可哀想に…

今回学んだこととしては、ライブに行って帰ってこられるということは当たり前ではないということ。自然災害が起これば道路や交通機関は簡単に麻痺してしまうし、その時に自分を守れるのは自分の判断だけということ。
ファンの方の中には過去にグッズで出たブランケットやレジャーシートを持ってきていた(もちろんこうなることは想定外だったとは思いますが)方もいて、グッズとして出たアイテムを防災用品にするのは非常時も心が落ち着きそうで良いなと思いました。
私はこの件を教訓にして、痛バッグの内ポケット(ファスナーが閉められる場所)に100円ショップで購入したアルミブランケットを入れるようになりました。同じ事があっては困るけれど、もしまた同じ事が起こってしまった時により良い判断とより良い行動が取れるようにできる対策から始めていきたいと思います。

今回の被害に関しては現場に行っていなかったcrewの方達が「エコパ」とか「掛川」とかでtwitter検索をかけてひっかかった情報(避難所とか災害時の身の守り方とか)(界隈の基本としては災害時とか「○○まで送ります」系が増殖するけど最悪二度と推しに会えなくなる可能性すらあるから絶対頼んじゃダメやでとか…)を引用リツイートとかで随時現場勢に共有して下さったのも本当に有難かったですね…デジタルネイティブが多い界隈はこういう状況でも強いなと思いました
私も避難所に着いてから美感ホールの情報を発信しました。あの情報も不安だった誰かの助けになれてたのかな。あの時わざわざ友達が困ってるので引リツさせてくれってDMくれたあの子元気かな。

9/24に中止になった夏ツアーファイナルですが、2023年1/28に追加公演、29に振替公演が決定しました。まさか年を跨ぐとは思いませんでしたね…
この公演も楽しく参戦してきたので、こちらも書き上がりましたら投稿させて頂きます。
皆様も自然災害にはくれぐれもお気をつけて…自然災害だと気をつけようもないのですが…

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