そんとくさんとあっけらかん(損得さんと呆気羅漢)Pt.7


それからしばらくの間、転校生ブームは続きました。

ちらほらと女の子たちが近寄って行きました。
時には2~3人、 時には5~6人、
「この鉛筆ケース 可愛ー」
「この手提げだって 刺繍入りやん」
「見て見て・・・あっちも こっちも…」
「すごいな~ いいな~」

わいわい わいわいと 休憩時間になる度に
女の子たちは寄って来ます。
転校生は 迷惑そうにわらいます。
何も言わず襲撃の遠のいて行くのを待っていました。

そんとくさんは 口をきく気にもなれず
目を合わす気にもなれず 出くわさないように と気を遣っていました。

でも そんな時に限って 何故か出くわしてしまうのです。
掃除当番一週間 同じ所を一緒に掃除するのです。
どこに何があるのか 何からどうしたらいいのか
居場所のない転校生を やっぱり そんとくさんは放っておけないのです。

「箒はここ 雑巾はこっち
 塵取りはここや・・・ まず バケツに水くみに行って・・・」

転校生は後から着いてきます。
そんとくさんを見ながら 同じように箒を動かします。

掃除が終わって 下駄箱の処で一緒になります。
「さいなら」そんとくさんは駆けて門から出て 振り向くと
その子はうつむいて門を出て うつむいたまま近づきました。

そんとくさんも とぼとぼと歩き始めました。

「あっ!! そや 今日は発売日やん!!
 一緒に買いに行こ!! まんが 買いに行かへんの?」
ちらっと顔を見てみました。
転校生はぼんやり遠くを見ていました。
「まんが ダメなの」
「まんが 見たら 怒られるの」・・・
ぼそっと答えました。

「え~−−!!」
(うそやろ うそやろ 何でやの)
信じられないことでした。
あんなに楽しくて わくわくして 待ちきれないのに
何で? 何で?)

「お母さん 怒るの?」
「うん 怒るの・・・ そんなもの 読んじゃだめって・・・」

淋しそうで つらそうで…
何か 目に見えない 大きな荷物を しょってるように見えました。

「じゃ 私 本屋さん寄ってくから」
そう言って 別れたのでした。

{続く}


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