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「FLIGHT RECORDER」&ムーンライダーズ、そして「ミュージック・ステディ」研究その4。

 1984年に入る直前、1983年の12月下旬(多分20日頃)、雑誌「バラエティ 1984年2月号」(角川書店)が発売されました。

・「バラエティ 1984年2月号」(角川書店)「新春記念鈴木慶一に84のQ.Q.Q.Q. ・・・」を掲載。画像をタップするとGO→ST通信電子版の関連記事に行くことができます。

 普段は連載対談の「K1の“胸キュン”シリーズ」なんですが、鈴木慶一さんに1983年を振り返りつつ、1984年の展望を一問一答形式でという内容です。
これがまた深い内容で、1984年はムーンライダーズの活動が盛んになることが予想されました。

 1984年の年明け早々からは資生堂のCMソングの放送が始まり、新曲の発売情報でシングルが発売されることを知った私です。
もしかしたら、ムーンライダーズ売れてしまうのか?とか心配したり、ワクワクしたりした日々でした。

 2月5日には移籍第一弾シングル「M.I.J.」が発売されたのですが、英語詞でファンキーな曲調にものすごくショックを受けましたね。
滅茶苦茶カッコいいと思ったのですが、結果としては(100位以内には)チャート・インしなかった記憶があります。
ちなみにこちらは資生堂パーキージーン(この前にはメロンが担当し、「PJ」としてシングル発売されました)のCMに使われて、レコードでは「TV TV」と歌われた部分は「PJ PJ」と歌われていました。CMのモデルは(映画「フラッシュ・ダンス」でお馴染みの)ジェニファー・ビールスだったはずです。
カップリングの「GYM」は資生堂サイモンピュアのCMに使われました。歌詞が全然違ったり、編曲も全く違いましたね。
このシングル、ムーンライダーズにとっては「かつて彼らが発売したどのシングルよりも売れている」(「ミュージック・マガジン 1984年7月号」より)そうですが、チャート・アクションとしては100位以内に入ることはなかったのでした。つまり「売れてしまうのか?」という心配は現実にはならなかったというわけでした。
ちなみにコーラスは当時ポータブル・ロックの野宮真貴さんで、ピチカート・ファイヴがブレイクした時期に彼女が参加していることでこのシングルをプレミアを付けて売っていたお店がありました。

 3月21日には慶一さんプロデュースのクリスさんのセカンド・シングル「春のめざめ」が発売されています。
この曲、作詞が元サンハウスの柴山俊之さんで、作曲がPANTAさんということで好事家の間で話題にはなりましたが、こちらもまたチャート・インせずという結果でしたね。

・「アイドルPOPS 80-90」(松阪・ジャズ批評社)1980~90年までのアイドルのシングルをジャケット及び作詞、作曲、編曲者を紹介した本。

 その一月後の4月21日にはクリスさんのアルバム『プードル』が発売され、これまた好事家の間で話題になりました。ソングライティングに近田春夫さん、西岡恭蔵さん&KUROさんに高橋修さんが参加してます。
ちなみに「ミュージック・ステディ」でレビューを書いたのは鳥井賀句さんでその内容を絶賛していましたね。

・「ミュージック・ステディ 1984年5月号」(ステディ出版)Mio Fouインタビュー&鳥井賀句さんによるクリスさん『プードル』のレビュー掲載。

 ちなみにこの『プードル』はムーンライダーズのメンバー全員が殆どの演奏を担当した最後のアルバムです。
他に参加したのはサックスに矢口博康さん、ヴァイオリンに美尾洋乃さん、チェロに渡辺等さんにコーラスの野宮真貴さんという顔ぶれです。

 4月25日には『陽気な若き水族館員たち』に参加していたMio Fou単独のアルバム『Mio Fou』が発売されました。
水族館レーベル第二弾作品となったわけです。インストゥルメンタルが半分、ヴォーカル入りが半分という内容です。
最初は徳間ジャパンのWAXレーベルから再発され、2009年には25周年記念盤がハヤブサランディングスから紙ジャケット&ボーナス・トラック収録で発売されましたが、現在入手困難な模様ですね。
このアルバムを発売したことでMio Fouのバッキングをカーネーションが担当することになったり、鈴木博文さんのソロ・アルバム『石鹸』で限定的に復活した後に『Mio Fou Ⅱ』で本格的に復活したりと、その後の展開を考えると深い意味があるアルバムですね。

 この号では他にも大滝詠一さんと竹内まりやさんのMUSICIAN FILE・徹底研究や佐野元春さん、ルースターズのレポートに日本音楽全史では東京ニューウェイヴ(ここにも鳥井賀句さんが!)を取り上げています。

 5月5日には慶一さんプロデュースの鈴木さえ子さんのシングル「恋する惑星」が発売されました。
実は編集がされていたりとかアルバムとは別ヴァージョンなのですが、まだCD化されていない模様なのが残念です。ちなみにプロモーション・ビデオの監督は立花ハジメさんです。

 5月20日(前後)にはムーンライダーズのレコーディング・レポートが掲載された「ミュージック・マガジン 1984年7月号」が発売されました。

・「ムーンライダーズの30年」(ミュージック・マガジン)「ミュージック・マガジン 1984年7月号」のレコーディング・レポートを再録しています。

 このレポートは「ムーンライダーズの30年」(ミュージック・マガジン)及び『アマチュア・アカデミー 20th Aniversary Edition』のブックレットに再録されています。前者はまだ入手しやすいのではないでしょうか。
この記事でプロデューサーにDear Heartレーベルのハウス・プロデューサーである宮田茂樹さんが担当することを知りましたね。
 この時点では白井良明さんが全曲の編曲を担当するはずだったとか、色々な情報を入手できた内容で、新しいアルバムに対する期待を膨らませたのでした。

 6月1日にはかしぶち哲郎さんプロデュースの缶ワインキサラのCM曲、石川セリさん「キサラ恋人」が発売されました。演奏は慶一さん抜きのムーンライダーズで、武川さんのヴァイオリンが印象的な仕上がりです(CMヴァージョンは『MOON RIDERS CM WORKS 1977-2006』に収録されています)。
カップリングの「Martinet(雨燕)」もかしぶちさんのソロ・ライヴで取り上げたことがあるボサノバ・タッチの名曲でした。

 ・かしぶち哲郎さんが「キサラ恋人」や「Martinet(雨燕)」などを取り上げた「かしぶち哲郎 3 NIGHTS」など、ムーンライダーズ関連のチケット。画像をタップすると「かしぶち哲郎 3 NIGHTS」のセットリストと参加メンバーを書いたGO→ST通信の記事に行くことができます。

 6月25日には慶一さんプロデュースの鈴木さえ子さん『科学と神秘』が発売されました。
このアルバムのプロモーションでは日本テレビ系「11PM」(読売テレビからの中継、司会は藤本義一、アシスタントは松居一代、他のゲストはキッチュ~松尾貴史さん、翌年にかしぶちさんプロデュースでレコード・デビューしたEVEさん)にPSYCHO PERCHES(敢えてこの名前を使います)で出演し、「血を吸うカメラ」と「フィラデルフィア」を演奏しています。特に「フィラデルフィア」ではさえ子さんはマリンバから始まり、曲の途中でドラムスを叩くというライヴでのスタイルで、慶一さんはギターを弾いてました。
(PSYCHO PERCHES名義としたのは)「ミュージック・ステディ 7号」で慶一さんが「PSYCHO PERCHESのお披露目の時はリヴィング・ルーム・セッションの発展型でやろうよ(以下略)」という発言を思い起こさせたからです。
 
 『毎日がクリスマスだったら』はほぼリヴィング・ルーム・セッションと呼ばれたように2人のセッションで大部分を作り上げましたが、この『科学と神秘』はリアル・フィッシュのメンバーや(このアルバムのアート・ディレクターでもある)立花ハジメさんなどゲスト多数で完成させたのでした。「魔法の国」と「天国への螺旋階段」は福原マリさんの作品を取り上げたのはその象徴でしょう。
これは慶一さんがムーンライダーズ(つまり『アマチュア・アカデミー』のレコーディングと重なっていた時期だったことが大きいようです。
 それでも、『科学と神秘』の発売記念ライヴには慶一さんも参加し、リアル・フィッシュのメンバー全員とポータブル・ロックの中原信雄さんによるライヴになりました。

 このアルバムに影響を受けたミュージシャンは多くて有名な話としては、ピチカート・ファイヴを結成したばかりの小西康陽さんが高浪慶太郎さんと「真似しないようにしよう」と話し合ったというエピソードが伝えられています(「POP IND'S no.8」より)。
 GO→STレーベルから作品を発表した大なり><小なりのリーダー、ヨナフィさんはこのアルバムでさえ子さんと慶一さんのファンになり、さえ子さんと共演した際、ものすごく感動したとか。
(ヨナフィさんは現在、安部OHJI隆雄さん、元ZELDAの小沢亜子さんと島へ行くボートというバンドで活動し、発売されたばかりの安部さんプロデュースの作詞家あさくらせいらさんのアルバムに参加しています)

・「ミュージック・ステディ 1984年7月号」(ステディ出版)鈴木さえ子さんインタビュー掲載。画像をタップすると、1980年代の鈴木さえ子さんの活動についてのGO→ST通信電子版の記事に行くことができます。

・「POP IND'S no.8」(河出書房新社)小西康陽さんと高浪敬太郎(当時の表記)さんの「真似しないようにしよう」発言を掲載。

ちなみに「POP IND'S」~「ストレンジ・デイズ」の岩本“美少年編集長”晃市郎さんは「ミュージック・ステディ」の編集部にいたことがあるのです。

 明日はいよいよ『アマチュア・アカデミー』と石川セリさん『ファム・ファタル』について書く予定です。おそらく、次回でこの「FLIGHT RECORDER」&ムーンライダーズ、そして「ミュージック・ステディ」は完結する予定です。長かった。。

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ではまたー。 


 


 

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