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司法試験受験生や修習生が「進路」に悩んだときに勧める3ステップ思考法

2020年になりましたね。スガイです。

皆さま、今年もよろしくお願いいたします。


挨拶もそこそこに、今回はいきなり目次からはじめます。親切設計ですね!(自画自賛)


0. はじめに

2019年末に書いたこちらの記事は多くの方に見ていただいているようで、大変ありがたいです。

ここで僕は2回大きな決断をしています。それが、

・2018年末に4回目の司法試験を受ける決意をしたとき
弁護士へのキャリアを一度止めてHolmesに就職すると決めたとき

です。


現在、司法試験合格を目指して勉強に励んでおられる方や、現に司法修習に行かれている方は、そのほとんどが法曹三者を目指していることと思います。

ただ、特に弁護士の場合は、制度改革以降どんどん仕事の幅が広がっています。そのため、「自分は将来どんな弁護士になりたいのか?」「弁護士としてどんな仕事がしたいのか?」など、自分の進路や働き方に悩みを抱えている方が多いと予想します。

そこで今回は、僕が上記の決断をするときに重要視していたマインドセットや思考法を共有し、特に弁護士を目指す皆さんの進路選択に少しでも役立つものを提供できればという視点で記事を書いてみます。

(過去の自分の経験に照らし合わせて書いている部分が非常に多いため、自分のコトは完全に棚に上げて書きます。ご了承ください。)


では、Step1からいきましょう。


1. 考える前に捨てるべき3つのバイアス

自分の進路で悩む前に、まず捨てるべき「バイアス」を3つ紹介します。

そもそもバイアスとは、考え方や意見に偏りを生じさせるものの事を言います。

バイアスがかかった状態で判断をすると、あとになって「なんでこんあ選択をしたんだ?!」となること請け合いですので、ここで紹介するバイアスは何も考えず投げ捨ててください。


 ①「弁護士として何ができるか」という前提は捨てる

3つの中でこれが一番大事です!!!


弁護士を目指して司法試験を受けている人にとってはある意味当たり前のことなのですが、自分のキャリアを考える際に「弁護士として」の枕詞をつけて考えがちです。

これを止めてください。

「そんなこといっても、ずっと弁護士を目指して試験勉強を何年も頑張ってきたのに……」とお思いの方も多いでしょう。わかります。僕なんて最初に勉強を始めてから司法試験に合格するまで9年もかけてますからね。

もはやアイデンティティの一部と言っても過言ではないでしょう。


でも、弁護士は、あくまでビジネスパーソンとして活躍するためのツールの一つにしか過ぎません。

弁護士バッジは法律関係のスペシャリストとして顧客の問題を解決するスキルを持っていることの標章です。

しかし、必ずしも法律関係に縛られる必要はないのです。


司法試験に受かっている時点で、法律という領域について問題解決できる能力が一定以上あることは証明されており、ここでいう「問題解決能力」は他分野にも転用可能なものです。

弁護士バッジは法律事務(弁護士法72条)をするためには必須ですが、逆に言えばそれに縛られる必要はないのですね。


ここに「弁護士として」という枕詞があると、本来あったかもしれない選択肢が消え失せてしまう可能性があります。


結果的に「弁護士として」事を成すという選択になるのは大変結構なのですが、最初からそこに拘る必要はないということは、繰り返し強調したいと思います。


 ②「自分がその就職先で活躍できるか?」なんて、わかりっこない

よく、「○○○事務所に行って自分が活躍できるかわからない」という話を聞きます。

はっきり言っておきますが、そんなものは誰にもわかりません

あなた自身がわからないものを、他人が判断できる道理がないでしょう、と。単純ですね。


面接官にだって、そんなのはわからないんですよ。当たり前ですけど。

実際に働き始めてみないと、活躍できるかなんてのは判断つかないのです。


そもそも、そこに入ったからには活躍しなければ意味がないわけですから、そのための努力を惜しまずにやりましょう、というだけの話なんです。


なので、「活躍できるか」と不安がるのは意味が無いだけでなく不健康なので、止めましょう。


 ③「好きを仕事に」は必ずしも正しくない

最近の流行りで、「好きを仕事に」という考え方が蔓延っています。

それ自体は別にいいのですが、これに縛られすぎるのは良くないよ、という話をします。

大きく分けてポイントは2つです。


1つ目は、「本当に好きなことができるのかはわからないということ。

例えば、自分は著作権に関する事件を扱いたいと思って、知財案件の多い事務所に就職したとしましょう。

でも、蓋を開けて見れば特許案件の数が圧倒的多数で、著作権の事件は全然担当できない、なんてことは普通にあります。

これはまだ良い方で、実は一般民事が大多数でした、家事交通ばっかりです、なんて話もあります。


2つ目は、「自分の「好き」が一生変わらず続くのかはわからないということ。

もちろん、いまの自分が好きなことを軸に選ぶのは良いかもしれません。

しかし、その「好き」が5年後も変わっていない、という保証はどこにもないのです。


したがって、「好き」を軸に仕事を選ぶと、意外とアンマッチが起こる可能性があるので、そこにこだわる必要はないのでは?ということです。


2. 自分の幸せを定義する

バイアスを捨てたら、自分の幸せを定義しましょう。


誰しもが、仕事をするために人生を生きているのではなく、自分の人生を活きるために仕事をするはずです。(俺は人生と書いてシゴトと読むんだ!という人は例外)

自分の人生における幸せを定義することで、仕事を選ぶときの様々な軸を定めることができます。

話が抽象的でアレなのですが、ここは超大事なのでしっかりやりましょう。


幸せが定義できれば、自分にとって重要なものとそうでないものが峻別できるようになります。

例えば、お金はそんなに要らないけれど時間が必要だとか、自分の仕事が誰かの幸せに直結していないと嫌だな、みたいな感じです。


 ○よくある間違い

自分の幸せを定義するときに、よくある間違いが「カネを手に入れること」という設定です。

お金はどこまで行っても手段でしかありません

お金を手に入れることでどうなりたいのか、というところまで必ず考えるようにしてください。


それによっては、意外と稼ぐ必要がないかもしれないし、逆に普通に仕事をしているだけでは到底稼ぐことのできないカネが必要になるかもしれません。

ここまで想像することで初めて意味があるんですね。


3. 選択に大事な3つの指標

さて、次は、進路の選択をする際に大事な3つの指標の話です。

キーワードは「熱中」「成長」「素晴らしい同僚」です。


 ①「あなたは、その仕事に熱中できますか?」

1つ目は「熱中できるか」です。

ここでいう熱中とは、極端に言うとその仕事に没頭してしまうとか、我を忘れて打ち込んでしまうとか、そういうものです。

「そんなこと言ったって、まだやってもいないのに熱中できるかわからないよ!」という話になっちゃうので、見分けるための指標も考えてみました。


僕としては、「自分で仕事をやっている感(≒裁量の幅)」と「刺激の多さ」だと思っています。


・仕事の裁量

裁量の幅がない仕事では、自分で考えて実行してみるという機会がなかなか巡ってきません。

無思考でいいので楽といえばそうなのですが、その状態は熱中とは程遠いでしょう。


「別にお金が稼げれば仕事は熱中できなくてもいいよ」という人はそれで良いのですが、今後の人生の大半を占めるであろう仕事の時間を、そんな無気力状態で過ごしていいの?というところは一度しっかり考えてみたほうが良いのではと思います。


・刺激の多さ

これもある意味当たり前のことなのですが、無刺激では飽きてしまいます。

熱中するためには、継続的に新しい刺激があるという状態がマストです。


ちなみに、刺激には大きく分けて2種類あって、社外からと社内からの刺激です。

例えば、社外からの刺激は、弁護士事務所で言うと案件のバラエティや複雑さ、社内からの刺激は同僚がどんな人か、が挙げられます。


これら2つの要素がないと、

熱中できない→仕事に対する喜びが感じられない→幸福度が下がる

の負のスパイラルに落ちます。


 ②「あなたは、その仕事で成長できますか?」

2つ目は「成長できるか」です。

人は仕事をすれば、何かしらの成長を得られることがほとんどだと思います。

なので、ここでいう成長は、自分のキャリアプランやパーソナルビジョンとの関係で考えるべきです。


例えば、自分が将来エンタメ系分野で活躍したいと思っているのに、相続事件ばっかりやっていてもしょうがないわけです。

社会にインパクトを与えたいというのであれば、弁護士として案件を処理していくのではなくて、プロダクトを作って提供するべきかもしれません。


この辺は、2.でしっかり幸せが定義できているかと密接に関係してきます。

それができていないと、自分にとっての成長も見えてきません。


ちなみに、僕はここを徹底的に深掘るために、『メモの魔力』の巻末に乗っている「自己分析1000問」をひたすら解いていきました

(今ならAmazon Kindle Unlimitedでも読めます)


ここでもう一つ重要なのは達成感です。

仕事をしても達成感がないのでは、成長に結びつきません。

達成と成長は、密接に結びついているんです。


なので、達成感を得やすくするため、自分の得意なことで勝負できる環境を選ぶというのは一つの戦略として有用です。

得意なことであれば、それだけ活躍できるチャンスも頼られる機会も増えるからですね。


そして、そこから自分の枠をどこまで広げていけるのか。

この広がった"枠"が成長です。


 ③「あなたと働く同僚は素晴らしい人ですか?」

3つ目は同僚の存在です。

これは極シンプルで、職場の人達を尊敬できるか、の一点に尽きます。

これがあるのと無いのとでは、仕事に対するモチベーションが違いますし、成長機会を捉えることもできなくなってしまいます。

ここに不満を持ちながらも、ずっと同じ仕事をして現状を良しと思っている人に出会ったことがありません。


もちろん、個人的な好き嫌いはあるでしょう。が、そういうときは視点を変えて、「尊敬できる部分はないかな」と考えてみてください。

自分の尊敬できる同僚が多いのであれば、仕事も楽しくできるのは間違いありません。


特に、直属の上司となりそうな人には、できるだけ対面で合う機会をセッティングしてもらったほうが良いと思います。

それが無理なら、その職場が求める人物像を聞いてみるのも手です。

求める人物像≒その職場にいる人なので、想像して自分と合わないと思ったら止めたほうが良いということになります。


弁護士事務所の面接では、小規模な事務所であれば全員と面接、ということもザラなので、自分と相性が合うかよく観察するのが大事です。


4. 司法試験の勉強をしている人に伝えたい2つのこと

最後に、Tips的な形で、主に司法試験の勉強を今まさにしている皆さんに伝えたいことを2つほど。


 ①インターンは行く前の見極めが大事

よく、サマークラークなどで弁護士事務所にインターン(場合によってはエクスターン)をする人がいます。

このとき、インターンが実質一次選考になっている、という場合は別ですが、そうでないなら「事前の見極め」が超大事ということをお伝えしておきます。


インターンは、聞こえは良いですが、名ばかりの職場体験で、場合によってはただの労働力として使い捨てられたりするケースがあります。

そういうインターンに行くくらいなら、ベンチャー企業のインターンや珍しそうなバイトに応募して、そこでの経験を得たほうが間違いなく有意義です。


そういったインターンの内情は先輩が持っていることがほとんどですので、自分が行きたいインターン先の事務所の情報を持っている人を探して聞き出しましょう。


 ②ときには息抜きも必要。外の世界で色々な経験を積むべし。

勉強ばっかりでは精神が持ちません。ときには息抜きも必要です。

息抜きをする際は、できるだけ外の世界に触れる経験をしてみてください。


僕の場合は(おそらく大多数の司法試験受験生はやらないであろう)経験を色々と積む機会に恵まれました。

そのおかげで、今まさにこの瞬間の人生を全力で楽しめています。


「Connecting the Dots」に共感する人はここを良く分かってくれると思うのですが、そのときに重要なのは「何事にも全力で臨む」という姿勢です。


僕は、「Connecting the Dots」の実像は、単なる点と線ではなく、同心円状に拡がるインクのシミの重なりや繋がりだと思っています。

色々なことを中途半端にしかやらないのでは、広い紙面のあちこちに点が点在するだけで、それらを結びつける線はなかなか見えてきません。

一方、何事も全力でやっていれば、一つひとつの点は同心円状に拡がっていき面積を持った円となり、いつしかそれぞれが重なったり、円同士の繋がりが見えてきたりします。


そんな時間ないよ!!!という人は、僕が以前書いたnoteも参考にしてみてください。

最大効率で勉強することで時間を捻出するための方法論が、たくさん詰め込まれています。

無料部分だけでも大分違ってくると思うので、ぜひご一読ください。


5. さいごに

僕はおそらく異端な進路を選択しているので、弁護士プロパーの細かい進路選択や仕事の選び方は正直なところわかりません。

ですが、今回紹介した3ステップを踏めば、少なくとも今の自分にとって最良の選択はできるはずです。

あ、そうそう、考えるときは紙に書くことをオススメします!そのほうが思考も整理され、客観視できるので。


それでは、また次の記事で!


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