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「神宮前四丁目視聴覚室」の思い出 vol.1

コンテンツリーグが発行しているフリーペーパー『SHOW COM』で書かせていただいている旧作レビューコラム「神宮前四丁目視聴覚室」の連載が、今年の四月で四年目に突入する。無論、今年度で連載が終了してしまう可能性もあるわけだが、それでも、なんだかんだで三年間も大手企業に私の文章力の無さがバレることなく起用され続けたことは、ちょっとした誇りである。他に誇りを感じるべきところがあるような気がしないでもないが。

そこで、一度これらの連載について、振り返ってみようと思う。たかが三年、されど三年、当時の私が記事を書くときに何を思っていたのか、さらっとしれっと赤裸々に書いてしまおうというわけだ。恐らく、何の参考にもならないだろうが、ほんの僅かに存在しているかもしれない同連載の読者に楽しんで頂ければ、これ幸いである。

記念すべき第一回で取り上げた作品は、『キングオブコント2009』王者である東京03が2010年に全国ツアーを展開した単独公演を収録した、『第10回 東京03 単独公演「自分、自分、自分。」』である。この連載が決定したとき、第一回には東京03を持ってこようと早々に決めていた。当時の東京03はコントライブにおいては冗談抜きに“敵無し”であり、私自身にとっても大変に思い入れの強いユニットだったからだ。ただ、どの作品を選ぶかに関しては、些か悩むことになった。なにせ、フリーペーパー紙上とはいえ、初めて企業から連載を承ったのである。ひょっとすると、これを機会に、何処かしらかの媒体から執筆依頼が舞い込んでくる可能性もある(※当時は本当にそう思っていたのだが、2017年2月現在に至るまで、そのような話は一度も頂いていない。私の文章力の無さを思えば、致し方のないことである)。

この時、私が想定していた作品は、二つあった。一つは「自分、自分、自分。」。もう一つは「燥ぐ、驕る、暴く。」(2011年)。正直、個人的には、「燥ぐ、驕る、暴く。」に対する思い入れの方が強かった。どのコントもしっかりと面白かったし、内容も充実していた。だが、初めてナマで東京03を目にした公演だったことが、私の審美眼を狂わせているのではないかと不安になり、芸人たちの間でも話題になった「自分、自分、自分。」の方を採用した。03の単独公演の入門としては、こちらの方が相応しいだろう……とも思った。この時の選択は間違ってはいなかったと今でも思う……が、ここだけの話、後にメンバーの飯塚悟志がとあるインタビューで「これまで「燥ぐ、驕る、暴く。」のDVDが僕の中で一番好きだった」と語っているのを読んで、少しだけ後悔した。お笑いについて語る身としては、自らの考え方こそを第一にすべきなのだろうが、敬愛する芸人と思考が近いと、やっぱり嬉しいものなのである。

しかし、大変なのは、ここからだった。作品を決めたのはいいが、肝心の原稿が遅々として書き進まないのである。書いては消し、書いては消し、書いては消し……の作業を、数日間かけて何度も何度も繰り返した。なにせ初めての連載だったため、どのようなスタンスで書けばいいのか、分からなかったのである。イチ演芸評論家のように上から目線で論じるべきなのか、それともイチお笑いファンとしてひたすらに持ち上げればいいのか、或いはイチ作家と言わんがばかりに自己満足に満ちた随筆じみた文章にすればいいのか……結果、〆切ギリギリまで追い詰められた私は、海のものとも山のものとも分からない、なんともキレ味の悪い文章を担当者に押し付けることとなった。

当時のコラムが掲載されたフリーペーパーは、コンテンツリーグの公式サイトで確認することが出来る。今回、この記事を書くために、ちょっとだけ読み返してみたが……記憶していたよりもずっとヒドい。文章の始まりから既に全体の構成を見失っている。一行目から特典映像の話をするとは、どういう了見だ。それから東京03の芸風について説明するなんて、順番が完全に逆ではないか。オークラの台本を批判するのはいいとしても(彼の台本は未だに不安定なので)、末尾に「(笑)」を付けて、ちょっとだけ責任から逃れようとしているあたりも、実にみっともない。

その後、現在に至るまで、合計十七本のレビューを書かせていただいているが、後になって書き直したいと切に思ったのは、この回だけである(※無論、他の回が、軒並み優れているというだけでもない。この回が特筆するほどにヒドかっただけである)。とはいえ、ひとまず乗り掛かった船は、なんとか無事に走り出したのであった。

最後に余談だが……今回は原稿としてそれなりの分量を稼ぐことに成功しているが、それはあくまで第一回連載について書いた文章だっただめであって、今後はもっと短くなっていくかもしれないことを、どうかご了承いただきたい。

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