サプライズ雑感。

◆今から数年前、東京03の単独公演を観に行ったときのことだ。◆全てのコントを終えて、役から下りた三人が単独公演の物販用に作られたグッズを紹介するときに、ある事件が起こった。飯塚が「(グッズの一つである)Tシャツのモデルに登場してもらいましょう」と言い出したのである。その口ぶりから、どうやら芸人仲間が今回の公演を観に来ているらしいことが窺い知れた。◆一体、誰が来ているのだろう……と思いながら舞台の様子を眺めていると、袖に引っ込んだ飯塚が連れてきたのは、なんとバナナマンの日村勇紀。想像もしていなかった人物の登場に、客席は一気に湧き上がった。◆なにせ、この日の単独公演の会場は、イオンモール岡山内にある「おかやま未来ホール」である。日村のような売れっ子が登場するなんて予想できるわけがない。日村曰く、東京03の単独公演をどうしても観たくて、なんとかスケジュールの都合がつく岡山公演のチケットを入手し、東京から新幹線に乗って、はるばるやってきたのだという。◆理由はともあれ、この思わぬサプライズに、私を含めたすべての観客は興奮し、胸を躍らせたのであった。◆テレビで見るサプライズも好きだ。最近では『脱力タイムズ』で放送された、アンタッチャブル復活の瞬間が最高のサプライズだった。様々なニセ山崎と漫才をやらされてきた柴田の目の前に、本物の山崎がやってきた瞬間のリアクションは、何度見ても笑ってしまうし、毎回しっかりと感動を覚える。◆個人的に最高のサプライズ映像だと思っているのは、2014年にリリースされた『U-1グランプリ vol.5「ジョビジョバ」』に収められている、とある映像だ。◆U-1グランプリは、マギーと福田雄一によるコントユニットである。二人の書いたコントを二人と客演メンバーで演じるシステムを採用している。本作は、そんなU-1グランプリ名義で、2002年から活動停止状態にあったジョビジョバが12年ぶりに復活したライブの模様を収録したものだ。◆そんな本作の特典映像には、マギーのトークライブでジョビジョバが復活することをサプライズで発表する様子が収録されている。これがとにかく凄まじい。あくまでもU-1グランプリの出演メンバーを発表するという体で、その予告映像が会場内に流れるのだが、メンバーが一人ずつ発表されるたびに、観客がざわつくのである。そして芸能活動から退いているはずの二人の名前が挙がったところで、その興奮は最高潮へ。そんな観客の様子を何食わぬ顔で眺めているマギー。なんとも底意地が悪い。◆でも、この映像を見るたびに、私はなんともいえない多幸感に包まれる。その理由はおそらく、予期せぬサプライズに感動している観客たちの心境に、共感を覚えるためだろう。そして、そんなサプライズが起こることもある現実に、一抹の希望を抱いてしまうためだろう。◆そのために生きる、というには、いささか頼りない引っ掛かりかもしれないけれど。◆

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