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魂のエグみを感じる作品。

「丁寧に雑味を取り除かれ、澄んだ文章」

「魂のエグみを感じる文章」

あなたはどちらをお読みになりたい?

⎯⎯⎯この記事はもちろん、後者のお話です。


スイート・ダイアリーズ│須賀しのぶ

彼を殺して、私たちは昔よりずっと仲良くなった。

不倫相手に捨てられたアキ、DV夫に悩むモト。高校時代から親友3人組メンバーだった彼女たちは、ある日それぞれの相手を交換で殺すことを思いつく。

憂さ晴らしのおしゃべりだと思っていた話が本当に実行され、急速に仲良くなる2人。勝ち組夫と結婚し、何もしなかったユカは、徐々にその関係から取り残されていってしまう⎯⎯⎯

【R30】とも言われた闇深い作品。帯コピーマジすげえ。

長くコバルト文庫で戦ってきた作者がはじめて出した一般文芸。華やかな著作のなかでどうにも影が薄いのだけれど、私はこの話が好きで、たまに手に取ると必ず読み入ってしまいます。

タイトルはおそらく過去の甘い記憶と、発作的に甘いものを求める描写をかけたもの。お菓子のどろどろした甘さを体内に取り込みたい渇望と恍惚、モノのように扱われて自我が薄れていくマッサージ描写にぞくぞくします。

動かします、も何も言わず、丸太か何かをどかすような無造作な手つきだった。最初こそとまどったものの、次第にどうでもよくなってきた。人形のように、反応を待たれることなくただただ好きなように動かされる。慣れてくると、意外に心地よい。そのうち、心地よいという感覚すら、曖昧になっていく。
 おそろしく無防備に、時には羞恥を覚えるような体勢をとらされながら、何も感じなくなっていく。はじめのうちは、好きに動かそうとする手へ反抗するように力が入ってしまった四肢も、今はただごろごろと転がされるだけだ。
 なるほど、これが従属の本能ってやつかもしれない。全身くまなく擦られ、ひっくり返されながら、素子はひとごとのように考えていた。訊かれないから何も答える必要はない。反応もいらない。自我は邪魔なだけ。ただ無機物のように横たわっていればいい。案外、悪くはないものだ。
「てっきり、このままオーブンに運ばれるのかと思った」
「だよね。でも、それでもいいかなーって思っちゃわない?」
「うんうん。全身擦られてるうちに、自我がなくなる」
「自分が人間だってこと忘れるよね。一回死んだ気分になる」


日当たりのいい家|古池ねじ

「どんな話なんですか」

 その質問は、私という書き手がもっとも苦手とするものの一つだった。どんな話。どんな話なのかは、読めばわかる、というか、読まなくてはわからない、と思うのだ。勿論、私がわからせたいものを、それを尋ねた人が知りたいわけではないのは、わかってはいる。だから普段は、適当に答える。女の子の口から宝石が出てくる話です、とか、犬が飼い主の友人の中年男性に恋する話です、とか。

 でも相手は木崎なので、こう言う。

「知りたいのなら、読めば」

「小説家になろう」掲載作。『木崎夫婦ものがたり 旦那さんのつくる毎日ご飯とお祝いのご馳走』というタイトルで書籍化もされています。

語り手のゆすらは、有名な作家を父に持ち、自身も作家として生きている女性。父という巨大な存在が死後も彼女にのしかかり、父の弟子であった幼馴染の崇とのいびつな関係とともに、彼女を苦しめる。

日だまりのようなタイトルに反して、不安定さ不穏さが通奏低音として鳴り響く物語。

崇とは、大人になってから出会った人たちとは絶対に共有できないもので、結びついてしまっている。今更どうしようもないのだ。私たちは、家族ではない。ほとんど血がつながっているような気がしても、でも家族ではない。家族には、もうなれない。決して、なれないのだ。島田の家と、成瀬の家は、交じり合わない。おそらく崇はそれを私よりもずっと諦めきれなくて、腹立たしいのだ。近いのに、労わりあうことはできず、お互いの脆い部分は熟知しているものだから、こんなふうに傷つけあう。そして相手の傷からは、自分の血もまた、流れてしまう。

一度も揺らがず一貫して健やかな人であるゆすらの夫、木崎が一番怖いと思っています。言動はいたってほのぼのしていてそこになんの無理もないんだけど、得体がしれない。何考えてんのかわかんない。のっぺりとした存在に見え不気味に感じてしまうの、うがちすぎ? 結婚するなら崇より木崎さんだなーとは思いつつ笑、崇の方がずいぶん素直だと思う。

「書く人」であるゆすらの執筆描写や読んでいる本がつい気になってしまう。ごはんシーンが美味しそうで食べたくなります。

(同著者の『マリカのために』もまた、「詩人・作家」が主人公。謎めいた娼婦マリカと、彼女に焦がれる潔癖な青年の物語です。感じるのはエグみよりも痛々しさかなーと思って外しましたが、こちらも特別に好きです)


◆ALI PROJECT の歌詞

黙示録前戯
さあ唾を吐いて罵るがいいわ
汚された顔でさえ
微笑むこの私を
愚かだと言って嗤って欲しいの
【黒百合隠密カゲキダン】
サルより美人な女より
ヤギより優しい男より
くだらぬハッピーエンドより
愛憎悲喜劇を
【欲望
消えるよりも
憎まれ憎まれよう
綺麗な花より
腐った花を抱こう

※タイトルが歌詞リンクです

アリプロは、私の好きなアーティストです。このユニット自体が魂のエグみを体現してる感じですが、その点特にストレートに歌詞に現れてるのはこのあたりかな、と。


番外:パラソルのある風景

私の大事な媚薬を盗み
あの人に飲ませた罪は重い

こちらもアリプロ。番外。エグみとはちょっと違う気がしつつ、どうにもこの曲が頭に浮かんで離れなくなったので。

歌として耳にして初めてこの曲の真価が見えるので、できれば是非音源を聴いてみて欲しいです。のんびりポップで不穏な曲調と細くかわいらしい声のマッチングが、メトロポリタンミュージアム的な怖さ。ラストのフレーズをきくたび「探偵さん逃げて超逃げてー!」と叫んでしまう。笑 最後の1秒こわっ!

私は見つけた媚薬の獲物
お髭の探偵さん 貴方がいい


あとがき

こちらの記事はライターお茶会記事の結びに頂いたヤスタニ アリサさんのコメントから生まれたものです。

詰め込みすぎ&時間経ち過ぎ、ごめんなさい!!!

パラソル以外はピンポイントに「ペルソナ:アリサさん」のつもりで書きました。果たせていると良いのですが。1フレーズでも、お好みのものがありますように!

好きな作品をご紹介することができて嬉しかったです。アリサさん、ありがとうございました♪

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