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東京竜巻注意報

東京ドームに吹いた、一陣の風。
イギリスに吹き荒れた “竜巻" は、10年という、長い歳月をかけて、今、東京に出現した。
"TOKYO TORNADO" 。
そう名付けられた、ジュニアヘビー級の、王者対決は、観る者の想像を掻き立てる、秘められたドラマがあった。

"過去はない" AMAKUSAに対し、高橋ヒロムは、"剣舞" のマスクを持って、リングイン。
歩み寄って額を合わせる。
再び離れ、ゴングが鳴る!
だが、互いのコーナーで動こうとしない。
そして、"阿吽の呼吸" で、互いに確かめ合うように、ロックアップした。

序盤は、スピーディーな攻防から、AMAKUSAがトリッキーな動きで、ヒロムを翻弄する。
そして、今やAMAKUSAの代名詞と言ってもいい、ブエロ・デ・アギラを、場外のヒロムへ炸裂!
AMAKUSAの気迫が、爆発した。

中盤は、場外へ放ったショットガン・ドロップキックで、ヒロムがペースを握る。
しかし、AMAKUSAも三角跳びからのトルニージョへ、空かさずファイヤーバード・スプラッシュで、勝負に出た!

打撃とパワーで、圧倒するヒロム。
スピードとテクニックで、切り返すAMAKUSA。
両者引かぬ攻防の中で、終盤、ヒロムは "剣舞" のマスクを取り出した。

「立てぇー、ケンバーイ!」

叫びながら突進するヒロムを、AMAKUSAはトラースキックで迎撃。
場外へ飛ばされたマスクが、AMAKUSAの手に渡る。
手にしたマスクを見つめる、AMAKUSA。
再び突進するヒロムをかわした、次の瞬間、

「あれは、剣舞の技、厳鬼(がんき)では!」

実況席の解説は、ヒロムの "約束の人" が降臨したことを意味していた。
そして、AMAKUSAが、"想い人" の声で、ないはずの "過去" を、呼び覚ました瞬間でもあった。
ヒロムの、フィニッシュ・ホールドのTIME BOM を、一度は跳ね返したAMAKUSAだったが、最後は、TIME BOM 2の前に沈んだ。
IWGPジュニアヘビー級 "王者の"強さ" を見せたヒロムは、終始、冷静だった。
日本一のジュニアという "新たな頂" に、到達出来なかったAMAKUSAは、悔しさを露わにした。
対戦要求されてから試合終了まで、 AMAKUSAを見つめる、ヒロムの眼差しが、ずっと優しかった。
それは、自らAMAKUSAの手を取って、握手した時も変わらなかった。
いつものテンション高く、対戦相手を圧倒する高橋ヒロムではなかった。
10年前、イギリスで剣舞と戦い抜いた "トーキョー・トルネード" の高橋広夢が、そこにいた。
だが、ヒロムは "人違い" と、マスクを捨てて、リングを降りた。
それは、新たな物語の始まり。
新たな "竜巻" の発生を予感させた。

来る3月1日、22団体のジュニア戦士が参加して、ジュニアオールスターが開催される。
そこで、実現する夢のトリオ。
高橋ヒロム&AMAKUSA&フジタ"Jr"ハヤト。
新たなキャストの、ハヤトが登場し、
物語は、"みちのくの章" へ続いていく。
東京ドームに吹き荒れた "竜巻" が、次は、後楽園ホールを襲う。
東京竜巻注意報に警戒しろ!

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