時は、2023年5月３日。
衝撃は、新日本プロレス　”レスリングどんたく2023”　のメインイベント終了後に起きた。
メインイベントの激闘が覚めぬうち、場内が暗点と化し、謎のVTRが流れ出す。
約2か月に亘り、ファンを煽ってきた "襲来" "破壊" "怪物" "危険" の映像。
そこに映し出された "福岡国際センター" の文字。
 
遂に、現れるのか?！
 
入場ゲートに映るシルエットのバックには、”YOTA TSUJI” と。
怪物の正体は、辻陽太。
頭に被ったフードから見える、長髪と髭。
そして、不敵な笑みを浮かべた表情が露わになった。
 
IWGP世界ヘビー初防衛を果たしたSANADAと、JUST 5 GUYSは困惑の表情。
場内の観衆も、突然の襲来に戸惑いを隠せないながらも、否応がなしに、会場のボルテージは沸点に。
そんな周囲の反応に気にも掛けずに、圧倒的な存在感でリングインしたかと思えば、一気にリングを占拠した。
倒れた王者を前に、コーナーで、太い二の腕を天に突きあげる姿は、
漫画 ”北斗の拳" のキャラクター、世紀末覇者・ラオウを彷彿させる。
クラウチングスタイルから、WWEスーパースターのローマン・レインズ張りのスピアを、フラフラになったSANADAに決めてみせた。
騒然とする場内。
辻の奇襲で、放り投げられたベルトを、王者・SANADAの体を踏みつけながら、辻が掲げてみせる。
ライブ中継の放送席も、その迫力に、
 
「体が異様に大きくなっている。圧が凄い！」
 
その後の言葉を失うほどのインパクト。
場内をゆっくり見渡した怪物は、なんと！胸を二回叩き、拳を斜め上に突き上げた。
 
「この男も制御不能ということか?！」
 
放送席が絶叫する中、威風堂々と引き上げる辻。
バックステージでは、IWGPジュニア王者の高橋ヒロムが、ジュニアとヘビーの同時戴冠の夢が破れ、力尽きながらも、コメントを絞り出している。
そこに再び辻が現れた。
 
「覚悟はいいか！次の相手は俺だ！」
 
リング上の迫力そのままに、バックステージでもオーラを放っていた。
そして、高橋ヒロムをまるで子供を抱え上げるようにして、怪物はバックステージの裏に姿を消した。
 
後日、辻陽太のIWGP世界ヘビー王座への挑戦が決まった。
その破格の凱旋試合の決定をよそに、辻は再びメキシコへ渡り、ルチャリブレの聖地で闘い続けた。
一ヶ月後の昨日６月３日、辻は、サングラスにスーツ姿で、大阪の調印式に登場した。
長髪を後ろで結んで、制御不能な佇まいと存在感で、王者・SANADAを圧倒していた。
コメントも的確に伝える。
レスラー・辻陽太を、観る者の心に植え付けていく。
ヤングライオン時代から、言葉で伝える術を発揮していた。
辻の、魂が入った言葉、佇まいに、私は引き込まれた。
何とも言えない高揚感が全身を走る。
決戦を前にした怪物に、目頭が熱くなる気持ちを抑えるこができなかった。
質疑応答では、辻のLOS INGOBERNABLES de JAPON入りか？に話題が。
その場では明言を避けたが、この後、急展開を迎える。
調印、フォトセッション、会見は終わるはずだった。
そこに、なんと、LOS INGOBERNABLES de JAPONの5人が登場。
まるで、それを待ち望んでいたように、辻は不敵な笑みを浮かべる。
 
「辻選手、いや、陽太！」
 
内藤は、辻が福岡で見せたLOS INGOBERNABLES de JAPONのポーズの真意を問う。
 
「日本を主戦場とする俺は、LOS INGOBERNABLES de JAPONの一員として闘いたい！ 」
 
さらに、
 
「内藤さん、焦った方がいいですよ。俺の気が変わらないうちに」
 
内藤に決断を迫り、覚悟を示した。
すると、BUSHIが、辻にLOS INGOBERNABLES de JAPONのＴシャツを投げた。
 
2015年５月、内藤哲也が、ラ・ソンブラから渡されたのＴシャツを着て、LOS INGOBERNABLESに加入した。
調印式で起こった光景が、2015年5月の光景と重なる。
さらに、辻陽太の、海外武者修行前の壮行試合の相手が、内藤哲也だった。
試合後に、
 
「 Hasta luego. Adios（またいつか。じゃあな）」
 
あの時の続きを、辻自身が手繰り寄せ、時を動かした。
 
LOS INGOBERNABLES は、内藤哲也が加入して、ラ・ソンブラ、ルーシュと共に本格始動した。
そして、2023年６月。
 
「覚悟が見せてくれよ！」
 
内藤と他の4人のパレハと、辻が拳を合わせた光景は、LOS　INGOBERNABLES de JAPONとして始動し、新たな景色をみせた、2016年４月の両国から全く色褪せない、絶対的な存在感を示してみせた。
 
「俺が高みへ引き上げる」
 
辻の宣言通りに、LOS INGOBERNABLES de JAPON の新時代の扉が開くのか。
 
覚悟はいいか！
 
そのゴングは、もう間もなく！
今からトランキーロじゃいられない！