潤滑油プレイ

 コミュニケーション障害、所謂コミュ障とは一体何なのだろうか?自分もそのきらいがある為、これまでも人ごとではなかったのだけど、その正体が最近ようやく分かった気がする。コミュ障とは簡単に言えば〝潤滑油プレイ〟を覚えてこなかった人達、ではないだろうか?

 集団というものにはどこも似通った習慣がある。人間関係を円滑に進める為の潤滑油をローションの様に各々が全身に塗りたくり、柔肌を擦り付け合う醜さがそこにはある。例えば挨拶という習慣。これは潤滑油プレイの基本中の基本と言える。しかし、コミュ障と呼ばれる人達は、親、または学校の先生に与えられたはずの潤滑油を身体に塗りこんでこなかった人達なのだ。

 子供の頃から不思議だった。壁にわざわざ「挨拶をしよう」と張り紙をしたり、挨拶週間を作ったり、そこまでしなければいけないということはそもそも人間は挨拶をしたくない生き物なのではないか。そして挨拶を推奨する人達の言い分もいまいち判然としない。

「挨拶をすると気持ち良い」

 こう言う人が大半で、気持ちよくない?と聞かれるが、感じやすい人なんだなとしか思わなかった。そして中には挨拶をしないとキレ出す人までいる。挨拶をすると気持ちいい。けれど、それを返してくれないと怒るというのは、調子に乗って風俗嬢に本番行為を求める客に近い。しかし誰もがはじめからそうだったわけではない。彼らはそれを気持ちいいと感じる様に自身を開発してきたのだ。そしてその人達が社会のイニシアチブを握り、ヒエラルキーのトップに君臨する限り、そのプレイの強要からは逃れられない。それは挨拶という潤滑油プレイを知り尽くし、またそれによって集団をエクスタシーに導いて来た証明でもある。よく性行為の順序として使われるABCのAとはキスのことではなく、挨拶のAなのである。

「おはよう…ございますーーー!」「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」  …ビクンッビクンッ! 

 こんな調子である。だから、親や教師は挨拶をすると気持ちいいではなく、挨拶をしてイケる人間になりましょうと教える方が正しい。これまでもこちらは挨拶をしているつもりなのに、挨拶をしていないと叱られて混乱することがよくあったが、「お前の挨拶じゃイケねぇよ!」と怒鳴られた方が、納得はいかないけれどしっくりくる。こう考えれば、企業の社員教育ももっと端的で分かりやすくなるのではないだろうか。

「おはよう...ございます...」「ダメだ!ダメだ!そんなんじゃ全然気持ち良くないぞ!見てろこうだ!おはよう…ございますーーーーーーー!!!」「うわぁぁぁぁぁぁああああ!!!」ビュビュビュビュビューーーー!!!

 潤滑油プレイのデキるカッコいい大人に、是非ともなりたいものである。

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