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  はっきり見えているかな?

”見る力に課題にある子ども達への支援”

    〜近視、遠視、乱視…などの有無は?〜

 久し振りのnoteです! 
猛暑だったこの夏、今年も見え方に関する研修会に声をかけていただきました。その中で、相談支援センター様からお話しいただいた上記の表題の研修会、12年目になります。ここ3年ほどコロナの関係で資料をお送りして、地域の保育所、幼稚園、福祉機関、保健センター、小・中・特別支援学校学校等へ配布していただいています。今年も対面ではなくて、資料を配布していただきました。 長い間、見えかたに関する情報や新しいことも含めつつ、私達が大切にしたいと考えている関わりかたなど伝え続けていますが、現在もそれを続けられていますのは、相談支援センター様の研修会に背中を押していただいているからと思っています。
 今回のnoteは、その配布資料の中から一部を掲載したいと思います。今までの記事は、肢体不自由の障害を合わせ有している子ども達についての視覚活用についてでした。今回は障害の有無に関わらず「はっきり見えているかどうか」の入り口でもあります、近視、遠視、乱視などについて、簡単ですが子ども達と関わる際にこんなことに注意したほうが良いと思われることについて掲載しました。

 <配布資料前書き>
私たちは、盲学校の教員時代25年近く、主に幼稚部の早期教育担当と特別支援コーディネーターとして、超早期から学齢期までの教育相談を他の担当の教諭と共に行ってきました。そして退職した現在も、医療機関での非常勤相談員と、医療的ケアも必要とされる子ども達の事業所職員として、視力の弱い子ども達や見え方に困り感を持つ子ども達と関わりは続いています。

 現職時から幼稚園や保育園、小中学校に在籍し医療機関などで発達障害、グレーゾーン領域と診断をされ、学習や生活する中で、物や人を見続けたり文字の書き写しなどが難しいなど、見え方に困り感を持つ子ども達への支援も行ってきました。その中で特に幼児期から学童期にかけては、座っている姿勢が崩れやすい、すぐ疲れてしまうなどちょっと困っている状況等を、子ども達との関わりの中から保護者にお伝えしてきました。 併せて見る力に課題がある子ども達の多くが、苦手としているスムーズな体の動かし方の習得に向けて、作業療法士の先生方の書かれた日常生活から学童期に必要な動きに視点をあてて、具体的な活動や育ちの土台を説明されたわかりやすく、取り組みやすい書籍を参考にしながら育ちの筋道を通して動きの改善に努めました。

 多くのケースの場合、個々の実態に合わせた動作の習得と眼球運動や眼と手の協応動作を楽しく経験できる机上の見る力を育てていく取り組みは、出来るようになっていくにつれ子ども達の表情や言動に変容をもたらし、子ども達の自信につながり、コミュニケーション能力の向上にもつながっていっているように思います。

 学習場面だけでなく、日常生活の中でも遊びや日常動作の中で必要とされる動きや、体幹の保持が出来るようになると、言葉がけを理解しながら動きを育てる活動を通して、左右の認識や眼と手の活動がスムーズにおこなえるようになっていくケースが多く見られました。

 色々な活動を通して確認出来たことは、有する障害や困り感はひとりひとりの違いはありますが、視覚認知の面から考えると視機能の実態把握を行う中で、「視る力」を育てていく視点と様々な対象児に役立つ情報を持って支援に取り組むことです。子ども達の手指の動きを育てていき、日常生活の整えを環境の整えと捉え、個々の実態から具体的に課題として考えられる体験を様々な場面を活用し、積み重ねていく大切さです。

1 子ども達の日常の様子から考えられる見る・見続けることに関する困り感の背景と支援方法

(1)まずは、はっきり見えているかどうかを確かめましょう!

    屈折異常(近視・遠視・乱視)の有無は?

<近視の場合>
 
板書をノートに書き写すのに、時間がかかる子ども達がいます。実は近視だったということもありました。児童生徒の視力検査結果を、まずは確認することが大切です。ぼやけて見えるかどうか子どもからの聞き取りが必要です。その際、見える文字とぼやける文字があることも想定して、どの位の大きさの文字が見えにくいか聞くと、見えにくい文字や色はあるか等具体的に聞き取りを行うと状況がつかみやすいです。

② <視力の左右差が考えられる場合>
 
視力検査の評価が、CやDの児童生徒はもちろんですが、視力の左右差も、問題になることが多いです。私たちは、左右の目のそれぞれから得た情報を脳で一つにまとめ合わせて立体的に捉える処理をしています。左右の視力差があると、はっきりした像とぼやけた像を同時に処理しなければなりません。これは疲れる原因になります。体もそうですが机上を斜めに使用している場合、見方に注意が必要です。効き目で見ていることも考えられます。椅子の座り方が少し違うと感じた場合、子ども達の困り感に気づいたかかわり手が、色々支援方法を考えていくことが大切です。

<遠視の場合>
 
同じように、遠視の場合、遠方より目に入る光が、網膜より遠くで焦点を合わせてしまうため、机上学習を行う時にも課題に焦点を合わせるために必要以上にエネルギーを使います。その結果疲れてしまい根気がないと言われたりもします。また遠視の眼鏡は、必要以上のエネルギーを使わずに見る経験を積む為に処方されており、近視用の眼鏡のように遠くがぼやけて見えていたものがはっきり見えるようになるのと違うことを伝えることが大切です。

☆遠視用の矯正眼鏡に関してよくある質問の中に、「眼鏡をかけてもあまり見え方が変わらない」「かけても見え方が変わらないのであれば、効果がないのではないか?家庭ではあまりかけていない」等の声を聞きます。

 学校でも活動に取り組んでいく中で「眼鏡をつけることで、いっぱいぐっとパワーを出さなくても良くなるよ。見続けても疲れなくなるなんてすごいね!」など使用していることを誉めて応援することが、とても大事です。「眼鏡をかけた時すぐは、ぼやけるから嫌だ」という子ども達もいます。「かけてすぐはちょっとぼやけるけど、慣れたらすぐに元に戻るからね 」など子ども達の不安を少なくする言葉がけが有効です。繰り返しメガネをかける意味を伝えていただけたらと思います。

④<乱視の場合>
 乱視の子どもの場合、縦方向、横方向によりものの見え方が変わったりします。視力検査中にランドルト環の左右、上下どちらの方向かを聞かれるなかで、数値の変動があるかもしれません。見え方によって、ひらがなやカタカナ、漢字の画の方向で見えやすさが変わることを考えた場合、見えにくさを生じる中で、正しく認識するのもやはり必要以上にエネルギーを使うことが考えられます。

<ゲームやスマホを見過ぎの場合>
 
子ども達の眼の使い方で今一番の問題にあがっているのが、一日10時間以上続けてしまうスマホの使用です。毎日10時間以上使用する子ども達も結構いるようです。画面を見続けるスマホのしすぎで瞼が痙攣したり、ものが二重に見えたり、外に出た時に遠近感が取りにくかったり、横断歩道が歩きにくくなったり等の事例が既に多く報告されています。ブルーライトは睡眠ホルモンにも影響するといわれています。

 同様に音楽をイヤホンを使用し長時間聞くのが当たり前になってきている若者達ですが、音量によっては難聴になるケースもあげられています。不衛生なイヤホンの使用で、温度が上昇する耳の内部に炎症が起きるケースも報告されています。どちらも子ども達には、使用する際のマナーとルール、過度に使用した際のデメリットな部分などは、しっかり伝えておきたいものです。
… 
 
 続きは次回に掲載したいと思っています。

【参考文献等】

・香川 邦生 編著
『五訂版 視覚障害教育に携わる方のために』  
 (2016年)  慶應義塾大学出版会
・簗島 謙次・他編著『ロ〜ビジョンケアマニュアル』 
 (2000年)南江堂
・宮永 嘉隆 監著『知っておきたい子どもの目のケア』
 (2007年)少年写真新聞社
・第15回 視覚発達支援講習会(2023年1月29日) 配布資料
 かわばた眼科 川端 秀仁氏 『視機能の発達と視覚支援』
・公益社団法人 日本眼科医会
『デジタルデバイスの小児および若年層に与える影響』
 (2019年2月21日)日本眼科医会H Pより 
 https://www.gankaikai.or.jp/press/20190226_2.pdf
・公益社団法人 日本眼科医会
『デジタル機器により生じる視機能の弊害』
 (2019年2月21日)日本眼科医会H Pより
 https://www.gankaikai.or.jp/press/20190226_1.pdf

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