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高学歴はいつの時代も高収入なのか

経済格差の是正のために教育費の補助や奨学金を充実をさせようというアイディアは、基本的に学歴が高ければ将来的により高い収入が見込めると言う前提に基づいています。しかしそれは本当なのでしょうか。学歴の経済的価値はいつの時代も同じなのでしょうか。アメリカでの学歴による賃金の差を100年分経年比較した論文をご紹介します。

【キーテーマ】
教育経済学・賃金プレミアム・学歴 

【結論】
学歴の差による賃金の差は需要(高学歴者を雇いたいというニーズ)と供給(高学歴者がどのくらいいるか)等の社会情勢によって変わる。

1910年から1950年: 大卒者と高卒者の賃金の差はほとんどない
1950年から1970年: 大卒者と高卒者の賃金の差が広がった
     (第二次世界大戦の終結)
1980年: 大卒者と高卒者の賃金の差が縮まった
     (深刻な不況、生産性の鈍化、石油価格とインフレのショック)
1990年から2010年: 大卒者と高卒者の賃金の差はより広がった
     (単純作業のIT化)

【編集後記】
よく考えれば当たり前なのですが、仮に99%の人が大学を卒業するようになったのに(大卒者の供給が増えた)労働市場に変化がなければ(需要が変わらない)大学を卒業したからといって高い賃金をもらえるようになるとは限りません。大学や大学院を卒業したけれども理想的な就職が見つからない、高学歴ほど失業率が高いということは急速に大学進学率が伸びている国で既に起こっています。また専攻によって、大卒や大学院卒よりもエンジニアスクールなどの職業訓練校の卒業生の方が賃金が高いなどの事象が起こっています。教育を専門としていると、経済困難家庭の大学進学率をいかにあげるか等、教育に関する指標のみに着目してしまいがちですが「学歴をあげれば収入が上がるはずだ」という前提に基づいていることは忘れないようにしたいですね。

文責:識名 由佳 

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過去記事のまとめはこちら

The Race between Education and Technology : The Evolution of U.S. Educational Wage Differentials, 1890 to 2005, Goldin et al. (2007)
https://scholar.harvard.edu/files/lkatz/files/the_race_between_education_and_technology_the_evolution_of_u.s._educational_wage_differentials_1890_to_2005_1.pdf


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