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企業理念があったからこそ生まれた木のブランド

最近、木の温もりに触れたのはいつだったのかを思い出そうとしても、なかなか出てこない人も多いかもしれません。身の回りのものの多くはプラスチックなどの石油燃料でできており、気づけば、私たちの生活から木というものが縁遠いものになってしまっています。

木の温もり、肌触り、その安らぎを思い出してほしい、木に触れる機会を増やして欲しい、そんな思いをもったブランドに、ブランドの担当者である竹田さんと稲垣さんにお話を聞くことができました。

愛知県名古屋市を拠点にする名古屋木材株式会社の「iLignos(アイリグノス)」というブランドです。


始まりは統制会社

名古屋木材株式会社は、1945年の12月、戦後すぐに創業された会社で、来年には創業から80周年を迎える老舗の木材会社です。木材が社名に入るだけあって、木材の卸業からスタートしました。

この名古屋木材の前身は、戦時中の統制会社にあります。統制会社とは、今では聞き慣れない言葉ですが、戦時中に物資は国や都道府県の管理下に置かれていました。いわゆる統制物資というものです。そして、木材もまたその統制物資とされていました。

この統制物資を地域ごとに管理・流通を統制する会社が、統制会社で、愛知県の統制物資を任されていたのが、名古屋木材の前身の会社でした。

このように木材とは切っても切り離せないほど深い関係を80年近く続けてきたのですが、今では、木材だけに限りません。

営業先は材木屋から工務店やハウスビルダーまで幅広く展開し、さらには、建材と呼ばれる建築に必要な材料である、フローリングや壁材など、取り扱う種類は年々増え続けています。

今では、家一軒全てを賄えるほど、名古屋木材とは言いながら、建材や木材の種類が豊富な会社となっています。


成長のきっかけは企業理念

このように順調に成長を続けていた名古屋木材が、新しい挑戦に取り組み始めたのは、今からおよそ20年ほど前、現在の社長である丹羽氏が就任した直後でした。

当時の名古屋木材にはまだ企業理念と呼べるものが無かったため、企業の方針をはっきりとさせるために、企業理念の策定に取り掛かりました。このときにできた理念が、名古屋木材の新しい挑戦の後押しとなりました。

私たちは《自然からの最高の贈り物》である木材を『極め、見分け、生かし』循環型社会形成に貢献します

名古屋木材株式会社 企業理念

まだSDGsという言葉もなかった頃から、循環型社会、環境への配慮をいち早く意識して、取り組みを始めました。

そして、この理念を具現化するために、岐阜大学の棚橋教授との共同研究をスタートさせ、社内では「研究開発室(現在の炭素固定事業開発部)」を発足させました。

棚橋教授が進めていたのは、木材を圧縮させる技術でした。それは、木材に水と熱のみを加えてプレスすることで半分以下にまで圧縮するというものです。その結果、普通の木材よりも硬くて丈夫なものになります。この木材を圧縮させる技術が、共同研究を経て、事業化に至ったのです。

左が圧縮前・右が圧縮後


そして、圧縮過程に工夫を加えることで、木材に柔軟性を加えることにも成功しました。この硬質化したものを「LIGNOTEX(リグノテクス)」、柔軟性を加えたものを「LIGNOFLEX(リグノフレックス)」と呼んでいます。

LIGNOFLEXのイメージ


次々と生まれる新商品

この圧縮木材を使って生まれた最初の商品は、2011年にリリースされた携帯電話のボディでした。これは、大手電子機器メーカーの依頼から始まったプロジェクトでした。このプロジェクトを受けて、圧縮木材の製品を量産する体制が構築されました。

しかし、さまざまな事情からこのプロジェクト以降は継続されませんでした。

その結果、この圧縮木材のプロジェクトは、OEMではなく自社製品を作ることへと舵を切ることになったのでした。そこからは社内やパートナーとの議論を重ねながら、およそ1年に1つほどのペースで新商品を発表し続けてきました。

ビジネスパーソンにとって、身近なものである、持ち歩きできる靴べら、システム手帳のカバー、名刺入れ、マスクケース、ケーブルバンドなどから、少し変わったものでは、五角形の形をしたパターや木材の反響を利用したスピーカーなど。さまざまなものが発売され続けています。

iLignos名刺入れ

研究開発室が設立されてから、最初の商品が誕生するまでにおよそ6年。さらに、そのOEMの道が絶たれてから、オリジナル商品を発表するまでに1年。そこから、地道に歩み続けてきて、今では20年近くが経過しています。

なぜこのように長い時間をかけてこのプロジェクトを育てることができたのか、継続することができたのかについては、このように答えてくれました。

社長が理念をもとに、どんどんと挑戦をしていくような空気を作ってくれていたからだ、と。


もっと木の文化を広める

稲垣さんは、このiLignosをもっと広めたい、もっと多くの人に知ってもらいたいと語ります。

その思いは、研究開発室から改名した炭素固定事業開発部の名前にも込められています。炭素固定とは、樹木が光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収し、炭素を固定・貯蔵する効用のことであり、木材を長く多く使ってもらうことで、より多くの二酸化炭素を炭素として固定できるという考えです。

ちなみに、炭素固定事業開発部以外の部署も、炭素固定に関係する名称に改名し、会社の英文名称も「Nagoya Lumber Co.,Ltd.」から「Nagoya Carbon Fix Corporation」へと、炭素固定を冠するものに変更しました。

身の回りの多くのものがプラスチックなどの石油燃料でできているのが当たり前な中で、木に触れる機会を少しでも増やすことで、そこから木について、知ってほしい、もしくは、思い出してほしい。そして、木材をもっと使ってほしい。

そこから、木の温もりだけでなく、木材が地球温暖化に果たす役割も知ってもらえることで、より良い社会を作っていける、そんな思いが込められています。


中小企業が変われば、日本が変わる。その思いをもとに、今まさに変わろうとしている、新しい挑戦に取り組んでいる、チャレンジしている中小企業をご紹介しました。

名古屋木材株式会社の「iLignos(アイリグノス)」が、あなたの明日の生活を変えるかもしれません。それでは、次回のnoteもお楽しみに。


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