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かつてのUHFが、洋楽ファンを増やした(4)

(マガジン『ギャグ説のロック史』)
 
 ベストヒットUSAがDJとして有名な小林克也さんだったのに対して、『Billboard Top40』は中村真理という女性で、知らない人だった。
 
 知らなかったが、テンポがよくて聞きやすい。また、弱小テレビ局はしばりが薄いようで、チャート紹介時にけっこうきわどいチャチャや冗談を入れたりする。そんな軽口は小林さんの低音よりも中村さんの声の方が合っている。これもまた、番組のウリになっているなぁと感じた。
 
 この自由な雰囲気は、DJだけでなく、全体を通してだった。
 チャート紹介で流す音はサビの部分が普通だが、ある週では、その流す音をイントロやソロの部分だけにしていた。ようは、40位から1位まで、そろって声のない週だったのだ。ハービー・ハンコックやハロルド・フォルタ―マイヤーかのよう。
   
 編集までもが自由で、遊び心でやったのだろう。その週、エンディングで中村さんがそのことに触れ、「ちょっと間が抜けてましたね」というようなことを言っていた。そんなことをチャラッと言えちゃうのも、いいところだ。こんな実験的なこと、ラジオ局でもできないだろう。
 
 当時、プロモーションビデオが流行った影響で、とても長いビデオが増えた。曲を中心に、短編映画になっているものや、レコードとは違うロングバージョンのもの。TVKは、けっこう切らないでかけていた。きらいな曲はちょっと困るが、しかし、アーティストの思いをだいじにしているように思えたものだ。当時、リスペクトという言葉は広まっていなかった。ぼくはストーンズ好きなので、その単語は知っていたが。
 
 今、ラジオ日本で全米トップ40をやっていて、DJの矢口清治さんの語りがすばらしくてとても好きな番組なのだけど、やっぱり曲を切る。これは仕方のないことだけど、でも曲を冒涜しているように感じてしまう。
 
 
(つづく)
 
 
 

書き物が好きな人間なので、リアクションはどれも捻ったお礼文ですが、本心は素直にうれしいです。具体的に頂き物がある「サポート」だけは真面目に書こうと思いましたが、すみません、やはり捻ってあります。でも本心は、心から感謝しています。