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東京都の、山深い無人駅

 東京都にあるのに、1日の乗降客数が100人程度の駅がある。それがこの、

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 白丸駅
 

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 これが東京都か! と思ってしまう、駅周辺の緑あふれた風景。
 
 単線ホームに、30分に1本程度の運行間隔。つまり上下線合わせて、15分に1回、ホームに電車が埋まる程度ということ。23区内のほとんどの駅では、これとは逆に15分に1回程度、どのホームにも電車が着いていない空白の時間が訪れるかどうかといった感じだろう。駅構内の様相が、都心と180度ちがうのだ。人であふれた東京都にだって、こんなに閑散とした駅がある。
 
 当然だけど、ここは無人駅。乗った電車が去った後もホームにいると、とても静かで、耳を澄ますと「ケーン」と鹿の鳴き声が聞こえてきそう。実際、青梅線の青梅ー奥多摩ラインは鹿と接触してときおり止まる。
 

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 こちらは、奥多摩方面の画像。次が終点の奥多摩駅なので、本当の意味で「奥多摩方面」だ。小さなトンネルは、岩肌むき出しのごつごつした見た目のもの。
 

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 駅案内板には、白丸獅子舞が描かれている。毎年8月に元栖神社で行われる、地元民によって長く残されている伝統行事。
 
 ちょっとした移動時間で、山奥に来た雰囲気に浸れる場所。新宿から2時間で、1100円。立川からだと、約1時間20分で649円。
 
 駅はメインの通りとなる国道411号からかなり上ったところにあり、せまい石段を下りていかなければならない。もっとも、下りたところで店は一軒もない。駅前ロータリーはなく、それを模したような側道があるだけ。自転車置き場があるが、1台しか置いていなかった。
 

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 その駅前にある、バス停。都内の交通機関に慣れた人が見れば、壊滅的に映る時刻表。土日は4本だ。もちろんこの側道に、タクシーの姿はない。
 
 でも、当然だろう。1日の乗降客数が、毎年100人前後なのだ。ここで降車客を待っていたら、干上がってしまう。
 

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 しかし人が少ない分、自然は深い。これは駅からすぐの、多摩川を堰き止めた「白丸ダム」。水の色がディープグリーンだ。こういったところは、やはり晴れた日に来る方がいい。
 

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 国道のトンネルの横に、旧道のそれも残る。半世紀前までは、奥多摩への道はしょっちゅうがけ崩れで通行止めになっていたらしい。こんな道がメインルートだったのでは、それもよく分かる。当時、大型車はどうやって通っていたのだろう。貨物列車での運搬が盛んだったので、車は重要ではなかったのだろうか。
 
 青梅線は基点から終点まで東京都を走るが、まるで東京都ではないような車窓を味わせてくれる。ぜひ乗りに来てほしい路線だ。

書き物が好きな人間なので、リアクションはどれも捻ったお礼文ですが、本心は素直にうれしいです。具体的に頂き物がある「サポート」だけは真面目に書こうと思いましたが、すみません、やはり捻ってあります。でも本心は、心から感謝しています。