ドアに寄りかかっていた。
いつも通り座れないまま降車駅まで揺られている。
ふと車窓に差し込む陽につられて空を見上げた。
空の魚の白い鱗が秋を思わせる。
晴れて明るいのに、どこか寂しさを隠している空。
空気のせいだろうか。
イヤホンから流れてくる少し大きめのラブソングは涙を足した。
あの人が笑っていればつられて笑っている自分がいた。
あの人の悲しそうな顔は私の心臓を潰した。
あの人と映るあまりにも幸せそうな写真の中の私が、
もう君に何を言っても未来を変えられないことが嫌で
写真を二度と復元できないようにするのと同時に
あの宝物の道を通るのもやめた。